パッケージの文字組 -大切な4つのものさし-
今回は趣旨を変えて、パッケージ目線の文字組についてお話していきたいと思います。一般の厳密な文字組というよりは文字レイアウトですね。
基礎的な内容ですが、デザイナーの方にはふりかえりとして
それ以外の職種の方には知識として知っていることでデザイナーへの指示出しや依頼などのコミュニケーション面、または資料作成や企画書作成からお店のPOPまで色々と活用できるかなと思います。
それでは、はじめていきましょう。
そもそも文字組とはなんのためにするのか?
文字組の目的、それは文字情報を効率よく読み手に届けるためと私は考えています。人により表現は違うかもしれませんが目的意識は概ね同じだと思います。
文字情報を届ける為に " 読み手に違和感を感じさせない、内容の邪魔にならないように文字を配列すること " と言えるでしょう。(あえて違和感を作る場合もあります)
それではパッケージにおいてはどうでしょうか。
下の缶のイラストをご覧ください。
いかがでしょうか。缶のどこを見たらいいのか分からず混乱しますよね。そして情報を拾い上げるのにとても苦労します。このように文字情報が適切に配置されていないと読み手に余計な負担が発生します。最悪読んですらもらえません…。
実際の売り場では3秒ほどで買う商品を決めると言われています。
人は多くの情報の中で生活をしています。そんな状況の中でこのように読み手の負担となるようなパッケージはなかなか手に取られません。
パッケージとの接点、シーンによっては必ずしも分かりやすければ良いというものでもありませんが、多くの場合自分にどのようなメリットを与えてくれるのかがすぐに分かる商品の方が手に取られやすいでしょう。
日用品は特に重要なポイントになると思います。
文字組ができるとなにがいいのか?
" 適切な情報 " を " 適切な強さ "で伝えることができます。
これによってレイアウト組み立ての判断基準を持つことができます。
伝えたい情報の文字を大きくしよう、もしくは色を変えよう。まだ足りないから書体のウエイトもあげてみよう。目立つようにここだけ文字を変える?といったグラフィック処理の判断もできます。
また"関係性の性質 " を知ることで、レイアウトを組む際の判断基準、ものさしを手にすることができます。それでは性質をいくつか見ていきましょう。
性質① 「 距 離 」
文字と文字を置く" 距離 "はとても重要な要素です。人は距離が近いもの同士を関連づけて一つのグループとして判断します。
性質② 「 類 似 」
同じ形のものを同じグループとして認識します。同じ書体でまとめることでグループ化、同じ属性である事を伝えることができます。
性質③ 「 大 小 」
大きさの大小でも関係性が変化します。小さいものが大きいものに従属します。文字情報の内容、優先順位に合わせて主従関係をコントロールします。
性質④ 「 余 白 」
扱うのが特に難しい性質ですが、意識するだけで制作物のクオリティが見違えます。根本的にはここまでに挙げた性質も余白をコントロールしているといえます。" 距離による文字同士の余白 "、" 類似とは文字の持つ余白を合わせること "、" 文字の大きさに抑揚をつけることで文字同士の余白をコントロールする "という根底にある要素ということが分かります。
要素が大き方がより目立つと思ってしまいがちですが、適度な余白を確保することでスムーズに認識することができます。上の画像の左側では文字が持っている余白よりも外枠との距離が接近してしまい、密度が高くなっています。人には密度がある方へと視線が引き寄せられるという習性があり、その為にレイアウトの中心よりも外側へ視線が外れていきます。またあまりに詰め込みすぎた状態は見た人に緊張感を与えます。(逆にこの緊張感が効果的に働く場合もあります。家電量販店やパチンコ店のチラシなど)
用途や表現したい空気感によって使い分けられるようにしたいですね。
実践 「 缶ビールの文字組 」
これまでに挙げた性質、ものさしを使って文字を組んでみましょう。
文字だけでも整えることでここまで差が生まれます。文字要素がデザインにおいて大きなウエイトを占めていることがよく分かります。
せっかくなので少し要素を増やして違うパターンも作成してみましょう。
情報量を増やしたので、どの情報を読ませたいのか優先順位を決めます。
今回は「製品名(BEER)」→「フレーバー名(IPA)」→「メーカー名(MAKER)」→「その他」という順序で認識できるように組みました。「何者なのか」「どういうものなのか」「どこからきたのか」という順序で伝える構成です。
自己紹介を想像すると分かりやすいですね。自分の名前から趣味や出身の話をしてという流れの主語を " 製品 " へと置き換えるイメージです。
それでは要素を見ていきましょう。今回この情報量で全てをセンターに揃え、並列に表記してしまうと距離や大きさだけでは平坦になってしまい必要な要素が見えづらくなってしまいます。
そこで今回は一部文言をアーチ状に組むことで「読ませる文字」から「装飾としての文字」にします。そして優先順位の高い情報である「BEER」の周りの密度を高くし、その逆に「IPA」の周囲に余白を作ることで目に入るように考慮します。粗密をコントロールすることで視線を誘導します。
そして最後にセンター揃えを少し崩すように「good time」というコピーを書き文字で添えて変化をつけ、単調なイメージにならないようにします。
以上いかがでしょうか。
これら4つのものさしがあることで、文字を組む際に自分の中で順序立てて組み立てていくことができるかと思います。
それでは最後に今回使用した書体をご紹介して締めくくりましょう。
使用した書体
Helveticaはとても有名なフォントですね。その使い勝手の良さから世の中のいたるところに使われています。その人気から映画にもなりました。そしてこのHelvetica NeueはそのHelveticaの改訂版です。造形にクセがなく豊富なウェイトを備えている為、今回使用しました。Mac OSに付属しています。
Copperplateもとても有名ですね。こちらもよく目にするかも知れません。その名の通り銅版印刷が由来です。品質感を感じさせながらもモダンな印象を与えられる為、使い勝手が良いですね。Adobe Fontに含まれています。
Adobe Handwriting Ernie今回手書き風書体を探していた際にちょうど良い感じだったので選びました。程よい崩し具合でウエイトで字体そのものが変化するのでなかなかユニークな書体です。Adobe Fontに含まれています。
👳♂️タイセツニツカウヨ