Kato

数学の小説『数学と証明と物語と。』を書いています。

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数学と証明と物語と。【第1話】ガウスの関数

紙とペンを用意する。数学の始まりだ。 数学研究部のメンバーは三人だけ。私と明人と紗香さんの三人。紗香さんはたまにしか来ないけど、優しく教えてくれるから好きだ。そして言わずもがな美人。明人は放課後必ず部室にやってきて、静かに数学の問題と遊んでいる。私のことなんて眼中にないようで少し寂しい。話しかけたら返事はしてくれるけども。意外と優しいのかもしれないね。 現在、部室には私と明人の二人がいる。人数はいつも素数。いいね。部室には机が合計で7つ。これも素数。いいね。私は窓側の机を

    • 数学と証明と物語と。【第8話】素数判定

      古い数学の本を読んだ。人類は数学の世界に確固たる強力な地盤を築き上げることに注力して、そして、失敗したらしい。何よりも正確な数学の世界でさえ、混沌の中にいることが証明されてしまったのだ。私たちは何を信じればいいんだろう。絶望を感じる。 これまで何千年と、人類は数学の世界を渡り歩いてきた。しかし、その地面が揺ぎ無いものだと信じていた人々を嘲笑うかのように、カオスは幻影で世界を覆いつくす。 次のことを証明してみよう。 【証明開始】 $${\sqrt{N}}$$ をこえない

      • 数学と証明と物語と。【第7話】4次方程式の解法、オイラーの公式

        数学研究部の朝は早い。私だけね。 午前7時に部室へとやってきた私はさっそくノートを広げる。まっさらな白紙。日付を書く。全開にした窓から涼しい風が吹いてきて、私の切り揃えた前髪を揺らす。心地よい。 朝が最も脳の働きが良い、そんな話を耳にした私は「数学朝活」なるものを始めることにした。数学と戯れながら世界がゆっくりと目を覚ます様子を観察する算段だ。いつもの賑やかな学校が嘘みたいにひっそりとしている。 ペンを握る。リラックス。私と数学だけが世界にある。いや、数学という広大な宇

        • 数学と証明と物語と。【第6話】3次方程式の解法、カルダノの公式

          数学研究部の部室はいつものように静かだった。机が7つ。人数は2人。窓が1つ。本棚が2つ。中学生レベルから大学生レベルまでの数学の書籍が並んでいる。あとは古いデスクトップパソコンが1台。Windows の古い OS がインストールされている。インターネットには繋がっているようだけど、現在は誰も使っていない。 先生の話によると、昔はインターネット上で開催されている数学の競技や、競技プログラミングに参加していた生徒がいたらしい。意外だよね。競技としての数学やプログラミングってどん

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          数学と証明と物語と。【第5話】2次方程式の根と係数の関係、判別式

          家に帰り着く頃には雨があがっていた。さっきまでの嵐が嘘だったかのように晴れ間さえ見え始めている。帰り道の水溜まりが夕日の光を反射してキラキラと輝く。木々は雨の後の清々しさを纏っており、空気もひんやりとして涼しげだ。鳥たちも歌い始めた。まるで自然が一息ついているかのように感じられた。 近くの公園では子供たちが水溜まりで遊ぶ姿や、散歩を楽しむ家族の姿が見えた。雨上がり後特有の土の匂いが鼻を抜けて、一日の終わりを静かに迎える街の風景が広がっていた。 「雨上がりってテンション上が

          数学と証明と物語と。【第5話】2次方程式の根と係数の関係、判別式

          数学と証明と物語と。【第4話】2次方程式

          雨。部室が湿っている。空気が湿っている。深く呼吸をしてみる。雨の匂いだ。雨の匂いがする。小さな雨粒たちが窓にぶつかってくる。遠くで雷が鳴っている。嵐の予感。というか嵐そのもの。帰るの大変だなぁ。傘はあるけど濡れることは必至。 数学研究部の部室にはいつも通り、私と明人の二人がいる。素数。紗香さんは今日も来ないだろう。バイトが大変なのかな。紗香さんはいつも忙しそうにしている。本当はもっと数学を教えてもらいたいけど、忙しいなら仕方がない。私と明人だけで数学研究部を盛り上げていかな

          数学と証明と物語と。【第4話】2次方程式

          数学と証明と物語と。【第3話】倍数早見表

          「ある数が $${2}$$ の倍数かどうかはどうやって判断できる?」 ここは数学研究部の部室。そこにいるのは私と明人、そして紗香さんの三人。人数は素数。数学研究部メンバー勢揃いだ。先生を除けば。先生が来ると素数ではなくなってややこしくなってしまう。 「一の位が $${2}$$ の倍数か $${0}$$ だったらですか?」 紗香さんの質問に明人が小さな声で答える。明人はどうやら紗香さんにビビっているらしい。こんなに優しい人のどこを怖がる必要があるのか皆目見当がつかない。だ

          数学と証明と物語と。【第3話】倍数早見表

          数学と証明と物語と。【第2話】フェルマー数

          放課後、数学研究部の部室にやってくると明人がいた。机に向かって一心不乱に数式を書いている。そんなに必死になってどんな問題を解いているのかと思ってノートを覗いてみた。いくつかの数式が見える。フェルマー数と格闘しているらしい。 次の形の数をフェルマー数と呼ぶ。 $$ F_{n}=2^{2^{n}}+1 \;\;(n=0,1,2,3,\cdots) $$ フェルマー数はとても魅力的な数だ。なぜならピエール・ド・フェルマーを感じることができるから。私たちが数学に触れる時、数学の

          数学と証明と物語と。【第2話】フェルマー数