見出し画像

「行かなくて良い所に行かない」という選択②

移動しない時代の出会いを考える

現代では、テクノロジーの進化によって「行かなくても良い場所」に行く必要が減り、時間を効率的に使う選択肢が広がっています。しかし、この効率化が生むリスクも見過ごせません。それは、「偶発的な出会い」を失うことです。

偶発性がもたらす価値とは?

人が移動することで生まれる偶発性には、計画では得られない価値があります。

  • 新しい視点: 予想外の人や情報との出会いが、思考の幅を広げる。

  • 人間的なつながり: 予定外の会話や出来事が信頼や共感を生むきっかけになる。

  • 創造的なひらめき: 不意の出会いや出来事が、アイデアやプロジェクトの起点となる。

偶発性は、特にビジネスや個人の成長において、意図的に得られない「プラスアルファ」の価値を提供します。

テクノロジーで偶発性を補完できるのか?

移動を減らし効率化を追求することで、偶発性を失うのは避けられないのか?この問いに対して、テクノロジーは偶発性を完全に再現することはできないものの、ある程度補完することが可能だと思っています!
余談ですが、わたしの会社ではじめに開発したプロダクトもテクノロジーで非予定調和的な出会いを演出するプロダクトでした。

1. ランダム性を意図的に設計する
プラットフォームやアプリが、アルゴリズムを活用して「予想外の提案」や「ランダムな接続」を促進する仕組みを提供しています。

  • 例: オンラインイベントでのランダムなブレイクアウトルームや、新しい人とのマッチング機能。

2. コンテンツを通じた間接的な偶発性
SNSやニュースフィードを通じて、自分が通常接触しない情報やアイデアに触れる機会が広がっています。

3. バーチャル空間での偶発的接触
バーチャルオフィスやメタバースのような環境では、あえて偶発的な出会いや交流を促進するデザインが採用されています。これにより、物理的な移動を伴わずとも「想定外のつながり」を生む可能性があります。

偶発性が必然性に変わる危険性

ただし、テクノロジーを通じた偶発性には、「必然性」に変わるリスクも伴います。
アルゴリズムに依存することで、以下の問題が生じる可能性があります。

  • 選択肢の限定: 提供されるのはプラットフォームが想定した範囲内の偶発性であり、純粋な予測不能性が薄れる。

  • 依存の強化: 自ら新しい体験を求める意識が低下し、テクノロジーに頼りすぎる。

  • 偏りの強化: 過去の行動データに基づく提案が、視野を狭める結果を招く。

偶発性をデザインするという矛盾を受け入れながら、テクノロジーに依存しすぎない工夫が必要です。

偶発性を取り戻すためのアクション

偶発性を失わないためには、以下のアプローチが有効だと考えています。

  1. 意識的な行動選択:
    あえて新しい環境や場に足を運ぶなど、自ら偶発性を生む行動を起こす。

  2. テクノロジーと直感のバランス:
    テクノロジーの提案を活用しつつ、自分の好奇心や直感に従って行動範囲を広げる。

  3. 偶発性の場を創る:
    オンラインでもオフラインでも、予測不能な要素を含む環境やコミュニティを積極的に設計する。

結論:偶発性と効率化の新しいバランスが重要

効率化を追求する一方で、偶発性を完全に失ってしまうのは避けたいものです。偶発性は、予測不能な価値を生むだけでなく、私たちの人生やビジネスを豊かにする力を持っています。

移動を減らしながらも、偶発性を意識的に取り入れる。そのためには、テクノロジーと自分自身の行動をバランスよく活用する視点が求められるのではないでしょうか。偶然と必然、その両方を選び取る力が、これからの時代を生きるカギになるはずです。

おまけ:視点を変えてみると、偶発性も一種のリコメンド?

視点を変えてみると、私たちが「偶然」と思う出来事も、実は何らかの仕組みの上に成り立っているかもしれません。たとえば、SNSのタイムラインやニュースフィードは、目の前に現れる情報が“自然”に見えても、すべては何層ものリコメンドの結果です。誰かの「いいね」や「シェア」、さらにはアルゴリズムが働いているからこそ、そこにたどり着けるのです。

自然界も同じような仕組みです。進化や自然淘汰も、目立ったものが選ばれる「セルフリコメンド」の連続。現代のテクノロジーは、この構造を少し複雑にしただけで、実際には昔から変わらない本質が隠れています。

偶然に思えることも、実は必然の積み重ね。その視点を持つことで、日常の中に隠れた「仕掛け」を楽しむ余裕が生まれるかもしれません。


いいなと思ったら応援しよう!