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鍼治療による鎮痛効果のメカニズムについて

鍼治療による疼痛効果のメカニズムを解説します。疼痛抑制には6つのメカニズムがあります。鍼による刺激が神経系に与える影響は非常に複雑であり、脳や脊髄、末梢神経のさまざまな部位で働きます。例えば、鍼が刺激されることで、痛みを感じる神経の興奮が抑制されるメカニズムや、鍼が刺激されることで、脳内の痛みを制御する物質が放出されるメカニズムなどがあります。鍼治療の効果を高めるためには、これらのメカニズムを十分に理解し、適切な施術方法を選択することが重要です。本記事では、鍼治療のメカニズムとその効果について論文をもとに詳しく説明します。


下行性疼痛抑制

鍼灸学校にいたときに必ず聞いた言葉だと思います。簡単なメカニズムは鍼を刺した部位からその刺激が脊髄へ送られそこから脳へ行き様々な部位を通って下行性に脊髄後角をブロックし、痛み刺激の信号を抑制します。それではより具体的にメカニズムを見ていきましょう。

まずは鍼を刺すと侵害刺激に関与するイオンチャネルのTRPV1,2が活性化し、痛みの信号を伝達、そのシグナルが脊髄後角に入ります。そこでシナプスを介して対側へ渡り上行していきます。そのシグナルは視床に到達します。そこから弓状核→中脳水道周囲灰白質→正中縫線核そして青斑核→中脳水道周囲灰白質を通り、セロトニン、ノルエピネフリン、オピオイドペプチドが分泌されそれらが脊髄後角を下行性にブロックすることで鎮痛が起こります。

HPA軸による疼痛抑制

あまり聞き慣れないかもしれませんが、HPA軸による疼痛抑制も示唆されており、数々の論文で挙げられています。視床までは下行性疼痛抑制と同じなのですが、視床に到達した後は、視床下部の方へ行きそこからHPA軸で視床下部、下垂体、副腎と順に進み最後に抗炎症効果を生みます。以下に詳しく述べます。

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