リハビリを妨げる神経学的問題:関節原性筋抑制
関節のケガや手術後、患者の筋肉が思うように動かないケースを目にしたことはありませんか?これは単なる筋力低下や痛みだけでは説明できない現象で、関節原性筋抑制(Arthrogenic Muscle Inhibition:AMI)と呼ばれる神経学的な問題が関与している可能性があります。AMIは、関節に生じる炎症や痛みをきっかけに、筋肉の正常な収縮を妨げるメカニズムで、リハビリテーションにおいて重要な課題の一つです。本記事では、このAMIのメカニズムを詳しく解説し、効果的な対処法を探っていきます。
AMIとは何か
AMIの定義
Arthrogenic Muscle Inhibition (AMI)は、関節損傷後に筋肉を随意的に活性化できない状態を指します。この現象は、リハビリテーションにおいて主要な障害となり、筋力回復を妨げます。AMIは、損傷した関節から送られる変化した求心性情報(疼痛や腫脹など)に起因し、筋肉周囲の運動ニューロンの活性化能力を低下させます。
基本的なメカニズムの概要定義
求心性入力の変化:損傷した関節からの疼痛や腫脹に伴う信号が変化し、脊髄レベルでの反射的抑制が引き起こされます。特に、関節内のメカノレセプターの喪失や、炎症による神経信号の遮断が原因となります。
脊髄レベルでの反射的抑制:アルファ運動ニューロンの抑制(プレシナプスとポストシナプスレベル)が発生し、筋肉を収縮させる能力が低下します。
中枢神経系への影響:求心性信号の変化が脳の体性感覚野や運動野に影響を与え、皮質の可塑性変化を引き起こします。
筋肉および心理的反応への影響:筋肉の萎縮や機能的な弱体化が生じ、動作パターンの変化や運動調整が不良になる。心理的には、再損傷への恐怖や運動回避行動が強化される可能性があります。
以上の要因が積み重なり、AMIは慢性的な筋力低下やリハビリテーション効果の低下につながる複雑な神経現象とされています 。
AMIのメカニズム
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