テイルズオブアライズ ネタバレなし感想:最高の戦闘と唸るテーマ、勢い先行のシナリオ。90年代のRPGが現代の技術で進化した、良作
何年振りのテイルズクリアですかね...正直ちょこちょこ買ってはいたのですが序盤で辞めちゃうことが多くて、もしかしたらエターニア以来のクリアかもしれません。
結論から言うと、純粋に楽しめました。久々に王道、正統派RPGを遊んだな、という気持ちで、良作であることは間違いないと思います。
スピーディーかつ爽快感のある「戦闘」
何と言っても、戦闘の気持ちよさは最高でした。
とにかく簡単、派手、スピーディー。
何ていうか、ドラゴンボールとかのバトル系漫画の、超派手な決め技を簡単な操作で出せている感じが凄い気持ちよかったです。
普通の技はキャラクターが動作して技を放つだけなんですが、「ブーストアタック」「ブーストストライク」「秘奥義」なんかは、特殊演出が入るので「必殺技出してる!」感が凄いんですよね。特に、その演出もモタモタしてない、2-3秒くらいのものなので、戦闘のテンポを邪魔しません。
以前プレイした「幻影異聞録#FE」を思い出しました。あのゲームも、戦闘中に歌演出が入ってその度に時間が少しかかるのですが、それでも派手で豪華な演出は時間の損失以上の価値があると無意識に感じ、むしろ演出を好んで見てしまっていたんですよね。
スピーディーかつボタン一つで派手なアクション・演出が発生するのは、プレイしていて面白かったですし、何よりそれで敵に大きなダメージを与えることが出来るのでなおさら爽快でした。
スピーディーな要素はそれだけでは無く、一般的なJRPGによくある「戦闘リザルト画面」が無いのも地味に良かったです。フィールドで敵とエンカウント、戦闘を行った際は、敵のHPがゼロになった時点で画面がスローになり暗転、そしてフィールド画面へ戻るという流れなので、リザルトはフィールド画面に小さく表示されるようになっています。体験してわかるのですが、これにより戦闘とフィールド移動の切り替えが迅速になり、「待ち」の時間が無くなるんですね。戦闘が終わったらすぐにまたフィールド探索に戻れるというのは、本当に地味なようですがこれに慣れてしまうと他のゲームのリザルト画面が億劫に感じられてしまうのではないかと思うくらい、快適でした。
肝心の戦闘自体ですが、基本的にはコンボを繋いでいくことで発生させることが出来る「ブーストストライク」を出すことが目的になります。レベル差がありプレイヤー側が強ければいいのですが、拮抗しているレベルの相手はなかなか硬い防御力を持っています。なので、他のキャラも含めてコンボを繋いでいくことで、大ダメージを与えられる「ブーストストライク」を発生させれば、楽に勝つことが出来ます。そのために、敵を怯ませたりコンボを継続できるブーストアタックを用いたり、敵の動きから攻撃を避けてコンボを継続させるなど、自然とやらないといけない導線が見つかってくる仕組みはとても良かったです。特に後半から終盤の敵はかなり硬く、とにかくブーストストライクを出すことに全力をかけていました。
その分、ブーストストライクの爽快感は素晴らしく、どこか達成感も感じられるような部分がありました。
またおそらく意図的に敵モンスターのデザインが少なくされており、その形状から攻撃が予測できるのは親切なのかな、と思いました。
昔のJRPGを思い出させる「シナリオ」
シナリオに関してですが、率直に言えば良くも悪くもまさにJRPG、といった感じでしょうか。
個人的な印象としては、「スーファミのRPGのシナリオをパワーアップして最新ゲーム機で再現した」といったように感じました。
まあ、端的に言ってしまうと、正直かなりご都合主義的、勢い先行な部分は否めないなと感じます。キャラクターの物事の理解の早さに加え、「外れない推論」がちょっと引っかかったと言えば引っかかりました。
「その謎はもしかしたらこれ(初出の事項)が原因かもしれない。もしそうなら、解決するためにはAという場所に行かないといけない」「Aに行くには、あの道を通っていくしかない、とりあえず行ってみよう」というような会話の後物語が進むのですが、この前者のセリフ、いわゆる推測・推論がことごとく当たるのが気になったんですよね。いくつか伏線が張られていて、ということならわかるのですが、それぞれのキャラがもともと持っていた知識で行き先が決まり、それが正解というのが、ちょっと納得感が薄かったところです。伏線がほとんどなかったというか...。
ただ、RPGではこういう話の進み方はよくあることで、何も本作が特別というわけではありません。
私、「聖剣伝説2」というスーファミのゲームが子供の頃から非常に好きで、今もずっと好きでときどき何らかのハードで移植やリメイクをプレイするのですが、大人になってから思うのはそのシナリオが唐突かつご都合主義なところです。小さいころは疑問を持たなかったのですが、大人になってからだと「どうしてそうなったのかがわからない」「ちょうどいいところでちょうどいい人物やアイテムが出現しすぎている」というような引っかかりを感じたんですよね。
アライズも、「都合いいな~」と思うところが、最近のゲームにしてはかなり多く感じました。むしろ、昨今のゲームはこういった都合のいい物語ではなく、もっと緻密に伏線を張ったり、またはいわゆるプレイヤーに選択をさせることで物語が分岐するなど、物語構築がナラティブというような印象でした。
「これはこうだからこういう物語!だからついてこい!」というようなこのアライズのシナリオはご都合主義だな~と思うところもありつつ、昔のJRPGはこうだったよな...と、懐かしさを覚えてプレイしていました。
もちろん、丁寧なミスリードというか事実もあり驚いたところもしっかりあり、面白かったのですが、願わくばあと少し物語の根幹にかかわるようなテキストは多かったらよかったな、と思うところです。
そう、なんというか壮大な物語に対して少しテキスト量が少ないように感じました。これはもしかすると、いわゆるフルボイスゲームの弊害なのかもしれませんが、数十行に及ぶような細かい説明も欲しかったかも...というのが正直な気持ちです。
と、少し批判的な内容になってしまいましたが、逆に先述のように「ついてこい!」というようなシナリオだからこそ感じられたのが、このアライズの「テーマ」です。
考えさせられる「テーマ」
ひとつは、「とにかく自分で考える」というところ。よくRPGでは、悪の支配者を倒したり、世界を虐げている国を倒したり色々逆境を打開するケースが多いと思いますが、このゲームから受けたのは「では、その倒したい相手を倒した後、自分は何がしたいのか」でした。序盤からそう言った問いかけがあることはハッとさせられたところであり、他のゲームにも通じるところがあると感じました。ゲームの目的を果たした後、どうするか。面白く、新鮮な問いかけであったと思いました。
そして、主要キャラクター個人個人にもそれぞれ違った葛藤があるのも魅力でした。悩みがあり、過去があり、そしてそれをどう乗り越えていくかというのは、王道でありつつも強力なテーマであるなと実感しました。
また、特に現代社会にも通ずるところがあると思うのですが、「全体の問題を個人の問題としてしまうところ、また個人の問題を全体の問題としてしまう」というようなセリフには唸りました。
●●の集団に属している人間が犯罪を犯したから●●の集団はすべて悪だ、または××の集団が悪いことをしたから××に属している人間は全員が悪人だ、など、レッテルで判断するというか、前述した内容と被りますが「自分で判断しない」というところが刺さりました。
こういう、「伝えたいテーマ」があるゲームは、やはり強引にでもストーリーを引っ張っていく必要があるのかな、と思います。「あなたの選択で物語が変化する」ゲームと、「主人公をロールプレイする」ゲームでは、物事の伝わり方、伝わる内容が異なります。後者のほうがある意味で、画一的かつ強烈なテーマをプレイヤーに伝えることが出来るのかな、と思いました。
落ち着いていて、見ていて安心できるキャラクター達
キャラクターは全員魅力的です。よくありがちな、主人公だけがいいとか、ヒロインだけがいいとかではなく、全員がそれぞれの生活と考え方、目的を持っているところが凄い好きでした。キャンプなどでの団欒シーンはあれど、メインストーリーではあまりべたべたするわけではないところがなおさら良く、馴れ合いでないからこその律された協調という印象がとても良かったです。例えばここに「主人公と幼馴染」なんかのキャラクターがいたとしたら大分雰囲気も異なっていたと思いますが、そうではなかったので、仲の良さと目的に対するストイックさが両立されていて良かったです。
そういえば、キャラクターがみんな(年齢的な意味ではなく、精神的に)大人な印象を受けました。ときどき大変な事件が起こったときに我を忘れるようなこともありますが、ほとんどは精神的に安定している状態で、プレイしていてストレスを感じるような非常識なキャラクターがいなかったのは安心してプレイできるポイントでした。
そして魅力的だからこそ、先ほどの話にも繋がってきますが、もっと過去を深堀したエピソードが知りたかったかな、というところ。ぜひ、テイルズオブアライズ2を出してほしいですね。
「DLC」の推し具合
あとは、まあ、SNS等でも言われていますがDLCの推し具合ですかね。
さすがにキャンプ中にDLC選択肢が表示されているのを見たときは、ゲームと言う現実逃避をしている中に急に現実を突きつけてこられたような印象で、戸惑わなかったと言えば嘘になります。没入感は、やや削がれました。
あくまで私の場合はその後慣れてきたことで特に気にすることなくプレイできたので影響は軽微でした。まあ、これはどう考えてもパブリッシャーとデベロッパーの様々な関係があると思いますし、開発側でこの表示に違和感を覚えた人はいたかと思うので、そこはなんというか、ビジネス的に仕方ないのかなと思いました。
その他細かいところ
サブクエストなんかは8割、9割くらいクリアしました。戦闘が面白い分、サブクエストのだるさ、みたいなものがほとんどなかったですね。時には自分のレベルより少し上のボス敵を倒すこともあり、手に汗握る戦いは心から楽しめました。
一方で、そんなサブクエストをどんどん進めようと思った理由の一つは「金欠」でした。
おそらくどのプレイヤーも悩むポイントだと思うのですが、あのオレンジグミの高さ。グミやライフボトル、装備を万全な体制にすることが非常に難しく、結局取捨選択をすると同時にゴリ押しが出来なくなる、ある意味で絶妙な価格設定・難易度設定であったと思います。サブクエストでお金を稼いで、なんとか先に進む、というのがルーティンでした。
あとは...ネタバレになるので詳しくは言いませんが、我々30代は反応してしまう挿入歌。その使い方はうますぎるなと...。驚きながらも「冒険をしている」感が昂り、ぐっと引き込まれた瞬間でした。
BGMや背景については申し分なく、違和感は一切ありませんでした。
昨今の豪華なBGM、背景に引けを取らず、高い水準で物語を盛り上げていたと思います。「この画面でアクションRPGをやりたい!」と思えるほど、クオリティの高いものでした。
終わりに
久々のテイルズ、キラキラした最新のRPG!というよりは、90年代を思い起こさせ、そのまま丁寧に進化させてきたようなゲームだったなあ、と思います。
どうしてもRPGは物語が評価の対象になりやすいかと思うので、このなかなかご都合主義な展開は評価が分かれるところだと思いますが、一方で近年稀に見るレベルの戦闘の面白さは間違いありません。
世界的に評価が高いことも十分頷けますし、間違いなく良作です。
こちらのインタビューでは海外層の獲得と若年層の獲得ということが話されていますが、おそらくは「過去にテイルズを遊んでいたけど、もう十数年経ってすっかりテイルズから離れてしまった」人を呼び戻すという戦略もあったんじゃないでしょうか。そうでなければ、90年代のJ-POPのカバー曲を挿入歌にはしないような...気がします。
そして、私もまさに、「十数年テイルズから離れていたものの、挿入歌でつい買ってしまった」一人でした。
あのCMで見事に釣られたものの、しかし遊んでみればまさに懐かしさと進化を感じさせられた、「さすが歴史あるビッグタイトル」と思わせられるような作品でした。
途中でも書きましたが、魅力的なキャラクターと戦闘をもっと楽しみたいので、是非テイルズオブアライズ2を出してほしいですね。
そしてそれが発売されるかどうかは別として、次回作のテイルズシリーズも買おうと決心し、時間があれば過去のプレイしていないテイルズシリーズも遊んでみようと思わされた、心に残る作品でした。