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906回目:【紹介】インド・アーメダバード~インドで唯一の禁酒州~

2024年03月02日の備忘録

2019年9月にインドに着任し早4.5年が過ぎた。現在私はインドのムンバイとアーメダバードを行き来しつつ、2つの街に各々拠点を持ち生活をしている。そんな私が住んでいる「アーメダバード」という街を今回紹介したいと思う。ちなみに、ここアーメダバードは、泣く子も黙る弊社の海外駐在先としては、最僻地と恐れられる伝説の駐在先となっている。

【1】アーメダバードの概要

インド西部のグジャラート州で最大の都市であり、インドで7番目に大きな都市圏であるアーメダバード。人口は約740万人で、サバルマチ川のほとりに位置している。行政の中心はアーメダバード地区ですが、1960年から1970年まではグジャラート州の州都だった。その後、州都はガーンディーナガルに移された。20世紀前半のインド独立運動の中心的都市であり、労働者の権利、市民権、政治的独立を促進するための多くの市民不服従運動の震源地でであった。マハトマ・ガンジーはサバルマチ川沿岸にガンジー・アシュラムを設立し、アーメダバードを彼の「カルマブーミ(活動の地)」とした。

【1-1】現代のアーメダバード

「インドのマンチェスター」の異名を取るほど、活況を呈する繊維産業の中心地として発展した。1960年のグジャラート州設立に伴い、政治・商業の中心地としての地位を確立。かつては埃っぽい道路と混雑した地区が特徴的だったが、近年は建設ラッシュと人口増加が見られる。教育、情報技術、科学産業の中心として成長しつつあるアーメダバードは、グジャラート州はもちろん、西インドの文化・商業の中心地としての地位を維持している。

【1-2】アーメダバードの気候

グジャラート州はインドの北西端、アラビア海に面したサウラシュートラ半島に位置し、面積約19万6千㎡、人口は約6千万を有するインドで9番目の州になる。ステップ気候地域に属し、年間を通して雨が少なく、1月以外は日中平均気温30-40度ほど。デリーの冬は日本なみに寒くなるが、こちらの冬は1月のみのわずかひと月、しかも日中20度前後と日本でいえば春・秋ぐらいの体感であり、セーター等で十分にしのげるほど。反対に最も暑い時期は5月。50度近くまで温度が上がることもあるが、乾燥しているので日本ほど暑く感じないため、外を歩いていると知らない間に熱中症になる場合もある。そして、更に注意が必要なのは、屋外と屋内の寒暖差。インドの暑い地域では、異常なほど屋内の室温が低い。それ故、会議室の中は20℃、外に出たら45℃と、寒暖の差が20℃以上になることも珍しくない。その中を行ったり来たりすることで、逆に体調を崩したこともあった。

【2】アーメダバードでの生活:日本人をはじめとする外国人が苦労する点

【2-1】食事

グジャラートの生活で一番苦労する面は、食事である。ベジタリアンが多い当地では、スーパーマーケットでも肉類や卵を見つけるのは難しい。ムスリムが経営する肉屋でしか手に入らないのだ。イタリアンや中華などの外国料理レストランであれば肉料理も堪能できるが、コストが高くつくため、ファストフードを利用する人も多い。さらに、この州は禁酒法が適用されているため、酒類はリカー・パーミットという許可を取れば制限付きで購入できるものの、レストランなど公共の場所での飲酒は禁じられている。ただ、なぜかグジャラート州のお酒の消費量が多いと言う「禁酒州」に矛盾するデータもあり、意味がわからないことになっている。

【2-2】交通

アーメダバードは、大都市と比べて住みやすいのがなんといっても渋滞が比較的少ないことである。インドの交通渋滞はひどく、デリーやムンバイなどの大都市では、通勤だけでも体力を要するが、アーメダバードでの移動は快適である。ムンバイの渋滞はもはや無法地帯と言っても過言ではない。

【3】インド・グジャラート州:自動車産業から広がる投資の波

【3-1】日系企業の動向

スズキやホンダ二輪の生産・拡張計画を皮切りに、自動車関連メーカーの進出が相次ぐグジャラート州。 近年ではユニ・チャームの進出など日用品メーカーの進出もみられ、投資の裾野が広がりつつある。更に、現在日本政府の支援を受け、ムンバイ‐アーメダバード間の高速鉄道事業も行われている。新幹線が開通されれば、更に経済の発展が見込まれている。しかし、現在インドに1万人邦人が言われている中で、アーメダバードにはたった200人しかいない。日本人からすれば、まだまだ過酷な駐在先候補の筆頭となっている。

【3-2】半導体セクターが脚光を浴びる:グジャラート州の成長著しいサミットでタタ・サンズとミクロンが投資を発表

2024年1月に開催された「Vibrant Gujarat Global Summit」では、半導体セクターが注目を集め、業界大手企業が相次いで投資表明を行った。TATA会長の N チャンドラセカラン氏は、グジャラート州のサナンドからドレラ特別投資地域への事業拡大を示唆し、ドレラに「巨大な」半導体製造工場を設立することを発表。また、チャンドラセカラン氏は、C295航空機製造をヴァドーダラからドレラに拡大することを再確認し、「作業は全力で進められている」と語った。ミクロンテクノロジーの CEOであるサンジェイ・メフロア氏は、サナンドに建設中の半導体組立・テスト施設の第1フェーズ(計画床面積50万平方フィートのクリーンルームを含む)が「2025年初までに稼働開始する」と発表。インドのモディ政権は製造業振興策「メーク・イン・インディア」を掲げ、半導体企業のインド国内への誘致を進めている。21年には半導体などの国内生産の支援に7600億ルピーを投じる政策を打ち出した。米中対立が深刻化する中、中国などに代わる製造業の受け皿となることを目指す。しかし、海外の半導体企業にとってインドは優秀な技術者が豊富にいる一方、質の高い電力や水資源を安定して確保できるかが進出の課題となっている。

【4】インドの新興財閥アダニ・グループ

アダニ・グループは、インド北西部グジャラート州アフマダバードに拠点を置くインドの大手コングロマリットである。1988年にゴータム・アダニ氏によって貿易会社として設立され、現在はアダニ・エンタープライズを旗艦会社とする。アダニ・グループは、港湾管理、鉱業、発電・送電、再生可能エネルギー、空港運営、天然ガス、食品加工、インフラなど、多岐にわたる事業を展開している。近年は、再生可能エネルギーやデータセンターなどの分野に積極的に投資しており、インド経済の成長とともに急成長を遂げている。

【4-1】アダニ・グループの主な事業

  • 港湾管理: インド最大の港湾運営会社であり、ムンドラ港やダヘジ港など、インド国内の主要港湾を運営。

  • 鉱業: 石炭や鉄鉱石などの資源開発事業を展開。

  • 発電・送電: インド最大の独立系発電事業者であり、火力発電や太陽光発電など、様々な発電事業を展開。

  • 再生可能エネルギー: インド最大の再生可能エネルギー事業者であり、太陽光発電や風力発電などの事業を展開。

  • 空港運営: インド国内の主要空港を運営。

  • 天然ガス: 天然ガスの輸入・販売事業を展開。

  • 食品加工: 食用油や小麦粉などの食品加工事業を展開。

  • インフラ: 道路や鉄道などのインフラ事業を展開。

【4-2】アダニ・グループの近況

  • 2023年1月、米空売り投資会社ヒンデンブルグ・リサーチから、不正会計や関連会社取引などに関する疑惑を指摘された。アダニ・グループ側はこれらの疑惑を否定しているが、株価は一時的に大きく下落した。

  • 2023年5月、アダニ・グループは25億7000万ドルの資金調達計画を発表した。これは、ヒンデンブルグ・リサーチによる疑惑を受けて投資家からの信頼を回復するための措置と見られる。

【4-3】アダニ・グループの将来

  • インドの新興財閥アダニ・グループの中核企業であるアダニ・エンタープライゼズは2024年度(24年4月〜25年3月)の設備投資を前年比3倍近くに増やす。8割を成長分野の空港運営や再生可能エネルギーの関連機器の事業に充てる。不正疑惑による株価下落から1年を経て、積極投資に転じる。

  • 同期は石炭を調達して発電所などに売る主力事業が苦戦したが、空港運営と再生エネ関連機器の伸びで補った。純利益は前年同期比59%増の279億ルピー(約500億円)だった。堅調な業績を踏まえ、24年度の設備投資を中心とする資本的支出(CAPEX)は9200億ルピーを計画する。

  • 同社は19年から空港運営へ参入し、ムンバイやアーメダバードなどで7空港を運営している。25年に開港が見込まれるムンバイ近郊の新空港の運営も担う予定だ。

  • 再生エネの分野では、太陽光パネルなどを生産する子会社、アダニ・ニュー・インダストリーズを21年に設立した。将来的にグリーン水素の大量生産も目指す見通し。

1988年創業のアダニ・グループはゴータム・アダニ会長が一代で築いた新興財閥で、アダニ・エンタープライゼズを筆頭に10社がインドの証券取引所に上場している。モディ首相の地元であるグジャラート州が地盤で密接な関係を指摘する声も根強い。グループの経営を巡り23年1月、「空売り」の手法で知られる米投資会社ヒンデンブルグ・リサーチが「数十年にわたり大胆な株価操作と不正会計を実施してきた」と指摘する報告書を公表した。影響は大きく、グループ各社の株価は軒並み下落した。一連の疑惑をインド証券取引委員会(SEBI)が調査する中、最高裁判所は24年に入りSEBIに調査の早期終了を促すと同時に、これ以上の調査は不要とする判断を示した。アダニ・エンタープライゼズの株価は回復傾向だが、疑惑前の水準には届いていない。



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