past.12 アルバイト面接1時間前
「トレイン」、なるものに揺られながら、僕は朝からまとわりつく深刻な不機嫌を何とかなだめようとしていた。
例えばそれは、空気の読めない兄と起床時間が重なり、キッチンを占領され、彼がまるで「自己満足のための実験」のように朝食を作ろうとしていたことが発端だったのかもしれない。
異国の調味料を用いながら、さも得意げに彼は「試作」をこれ見よがしに味見していたが、大したことのない調理過程と、彼の態度すべてが僕の神経を逆なでした。彼が使っているフライパンを、ドラマチックにひっくり返してやろうかと何度も思ったが、紳士たるもの、感情のコントロールを忘れてはなるまいと、あの人との約束を頑なに守った自分を、今度褒めてもらいたい。
そういう訳で、僕は本当にイライラしていた。
そしてそれは今朝に始まったことではないのだと、近代文明が作り出した無機質な箱に揺られているうち、鮮やかに整理されてきた。
あたりを見回せば、灰色の乗客たちが同じような姿勢で「目的地」への到着を静かに待っている。そう、目的…。なんの?
彼らは本当に「目的」を持って、この「トレイン」なるものに揺られているのか?それは本当に大事な「目的」なのか?
時が来ればそこに着き、ドアが開く。ぞろぞろと吐き出される自分たちの姿を、一度でも考えたことはあるのか。彼らは、そう、彼らは本当にその地点にたどり着くべきしてたどり着いているのか?自らの人生と真摯に向き合った結果として、その地点に下り立つべきなのか?
ほらね。僕の苛立ちが段々と解明されてきた!
例えばこの僕だって、僕の「目的地」に下り立った後待っているであろう、うんざりとした「役割」————別に僕じゃなくたっていいような雑務、人生の時間を無駄にしているとしか思えないような「仕事」————、に向き合わされる。本当に参ってしまう。
もっと腹立たしいのは、自分を憐れみ過ぎる人たち!
彼らには本当に我慢ならない。自らの価値を自ら落とす。必要以上に下げられたそれは、もはや謙遜を超えて、すなわち「害」である。溜息すら禍々しいので、こちらに踏み込んでなんか欲しくは無い。どろりとした瞳に映るのは、いつだって生活に対する執着だけであり、彼らに僕の壮大なロマンスのひとかけらでも舐めさせた日には、副作用として短くない間、その過剰なしびれに苦しめられるだろう。
嗚呼、本当にイライラする…。僕はそこに行きたくなんかない!
実際、行かないことだってできるし、途中の駅で降りて、例えば初めて入る喫茶店でプリンを頼むことだってできる。そういうものは「ささやかな裏切り」として、僕の心を満たしてくれる。
お金は確かに必要だけど、僕にはもっと大事なものがある。
これは、つまり…、安っぽいシンガーが歌うような、あんなチンケなものなんかじゃない。君なら分かってくれるでしょ?
世の中の多くが、僕を「変わった奴」と言うけれど、僕からしてみれば、みんなの方がおかしいのである。毎日毎日飽きもせず、一回限りの人生を真剣に向き合いもせず、ただただ「生活のためだから…」という灰色の美徳を得意げに語る奴らの心境なんて、とてもじゃないが理解に苦しむ!灰色の理由付けを、誰かのせいにするなよ。不幸で不運な理由を、他者に押し付けるなよ!
僕は僕以上でも以下でもない限り、ただそれだけの理由で、「完璧」なのである。
だからやっぱり次の駅で降りて、プリンを探す冒険に出ようと思うんだ。
憂鬱な月曜日が始まる前に、私の記事を読んで「あ、水曜日くらいまでなら、なんとか息出来る気がしてきた」と思っていただけたら満足です。サポートしていただいたら、大満足です。(笑)