折田侑駿

折田侑駿

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『嗚呼! 親愛なるヒゲのおじさん〜時空を超えた、真夜中の対話〜』

「“ヒゲのおじさん”と言えば誰?」と問われれば、そこで思い浮かべるのは人それぞれだろう。 ぼくの場合は、やっぱりこの人の姿がまず浮かぶ。 そう、誰もがご存知、みんな大好きなウイスキー・ブラックニッカのキャラクターである“ヒゲのおじさん”だ。 この「ブラックニッカ クリア」を毎晩飲むのが“ニッカ”となっている……なんて、いきなり寒いジョークを飛ばしたいわけではもちろんない。自粛生活にともない、“ヒゲのおじさん”と毎日会えるのはうれしかったけれど、日に日に本数が増えていった

    • 『春待つ幽霊』

       二〇一九年、明けて六日目にぼくはケガをした。自宅の階段で転んだのだ。年末には忘年会を、年明けすぐには新年会を開き、ふだんなかなか顔を合わすことのない友人たちの笑顔を目にし、そして彼ら一人ひとりの新年の抱負などを耳にして、自分も頑張ろうと、身体をふるわせた直後のできごとである。 「俺も負けちゃいられない。さあ頑張るぞ」の第一歩目を、ものの見事に踏み外し派手に転倒したのだ。右足首の靭帯を全面的に損傷し、くるぶしには骨挫傷を負うといった始末である。  靭帯損傷と骨挫傷というと、

      • チェルフィッチュ『スーパープレミアムソフトWバニラリッチソリッド』を、観て。

         『スーパープレミアムソフトWバニラリッチソリッド』──開演前のアナウンスでこのタイトルが読み上げられると、劇場内にはどこかユーモラスな空気が漂いはじめる。  物語の舞台は、どこにでもあるような平凡なコンビニ。といっても、具象的なセットはなく、張り巡らされた黒いパンチの中心に、大きく白いビニールが敷かれ、舞台奥には誰もが目にしたことがあるような──「野菜生活」や「レッドブル」、「明治ブルガリアのむヨーグルト」だとかが並んだ──平凡な商品棚の絵柄がプリントされた紗幕が吊るされ

      『嗚呼! 親愛なるヒゲのおじさん〜時空を超えた、真夜中の対話〜』