永遠の初学者の歴史書ブック案内①
「永遠の初学者の歴史書ブック案内」というものをやってみようと思い立ちました。
編集者というのは専門家ではなく、かといって全くの素人でもない半可通、いわば永遠の初学者だと思うのです。そういう中途半端な人間でも、読者の皆さんの選書に少しでも参考になればと思い、「この本は読んで面白かった」という歴史書を勝手にオススメしようと始めたものです。
まず、第1回は、現在、凄惨で目をそむけたくなるような状況になっているパレスチナ・中東に関する歴史関連本です。
そもそも、私が中東に興味を持ったのは、子どもの時に映画「アラビアのロレンス」をテレビで見てから。
それ以来、妙に砂漠に郷愁を感じてしまうようになりました。高校生で、かなり「中東マニア」になりました。
それでもって、長じてから私が中東問題を勉強した本。
とりあえず5点。
大森実『ファイサル― 砂漠の帝王(人物現代史10)』 (講談社、1979年)
これが私が最初に中東問題についてきちんと読んだ本。イスラエルとアラブ・パレスチナについて何も知らなかったので、すごく新鮮だった。サウジアラビアがアラブの旗を掲げてイスラエル(そしてその背後にいるアメリカ)と戦ったのも今は昔になってしまった。なお、この「人物現代史」シリーズは初学者には最適の現代史入門でした。
アンソニー・サンプソン『セブン・シスターズ―不死身の国際石油資本』上・下(講談社文庫、1984年)
エクソン・モービルなど7つの国際石油資本がいかにして創業され、グローバルな政治・経済を動かしていったのかが描かれる。内容的にはさすがにもう古いが、とても読みやすく、しかもこういう本は今も他にないので、ずっと持っています。古本でも手に入れて読んで損はしません。
デビッド・フロムキン『平和を破滅させた和平―中東問題の始まり(1914‐1922)』上・下(紀伊國屋書店、2004年)
第一次世界大戦下の「アラブの反乱」とユダヤ人国家建設をイギリスが約束したバルフォア宣言など、現在まで続く中東における矛盾の始まりを通史的に描く。英仏など大国の帝国主義的な野心がいかにこの地域の人びとを苦しめるようになったのかがよく分かる。
イラン・パペ著『パレスチナの民族浄化―イスラエル建国の暴力』(法政大学出版局、2017年)
パレスチナの悲劇の原点はここから。現代パレスチナ史については、なんといってもこの本。というか、この本しかないと思います。決して、急にハマスが攻撃を始めたから、今回の悲劇がスタートしたわけではないことがよく分かるはず。
吉村慎太郎『改訂増補 イラン現代史―従属と抵抗の100年』(有志舎、2020年)
最後に自社本を。イランというと「テロ国家」とアメリカに名指しされ、今は日本でも評判悪いが、果たして本当にそうなのか? その歴史を知らないと簡単にレッテル貼りできない。19世紀から2019年までのイラン通史をまずはこの本で知ってから考えて欲しい。
以上です。いかがだったでしょうか。古い本もあるし、ジャーナリストが書いた本も多いですが、私にはとても勉強になった本ばかりです。
何かの参考になれば嬉しいです。