食レポ|とんかつ大宝
特に決めていたわけではない。しかし、視線は店内に向い、身体が吸い寄せられる。僕は「とんかつ大宝」に入店した。
ランチの「ロースかつ」を注文した。ここにしかないとんかつを求め、決して広くはない縦長の店内に人々が身を寄せ合う。目当ての品が差し出された。黒の器にきつね色のとんかつがよく映える。大きめに切られたとんかつが食欲をそそる。
口へと運ぶ前に一切れずつ、上からソースを注いだ。ゆっくりと、たっぷりと。昼から僕の身と心は満ちていく。心の揺れを鎮めるように、キャベツ、味噌汁、漬物に手を伸ばす。体内に漂う波は穏やかにたゆたう。一つ一つの動作を噛み締めるようにして、素晴らしき「ロースかつ」を楽しんだ。