食レポ|田中商店 ダイバーシティ東京プラザ店
二女を腕に抱き、お台場を歩いた。身体を包む熱と肌に浮かぶ汗。お台場は人の気配を感じさせる街だが、今はそうではない。駅や街頭。随所に散りばめられたオリンピックの意匠が存在する余白をより際立たせる。
東京テレポート駅から歩いて十分。ダイバーシティ東京 プラザには若者たちがいて、家族連れもいる。プラモデルの袋を肩から下げた男性たちも。実に多様だ。施設の前に鎮座するドラえもんとのび太のオブジェ。その青と黄がまさに「ダイバース」な環境の象徴として色濃い印象を残す。
洗練と雑多が入り混じる空気を抜け、階をまたいでいく。「田中商店」は縦横に伸びるフードコートの一角にある。奥まった場所へと身を移し、「らーめん」と「お子様らーめん」を注文した。
二つを盆に乗せて、キッズエリアへと向かう。緑とアイボリー。淡いパステルカラーの中で食べるラーメン。麺を切りながら、レンゲに乗せて娘の口へと運ぶ。箸を動かし、今度は自分の口へ。娘は麺をせがむ視線を僕に送る。丼へと高い集中力を注ぐことはできない。
しかし、それは「らーめん」が帯びる濃厚さと同様に、眩い時間として記憶に刻まれる。「娘とお台場でラーメンを食べる」。それは驚きでもなく、奇跡でもない。しかし、身体の奥からほんのりとした温もりを感じる、そんな時間だった。