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ロシアW杯 観戦記|日本 vs ポーランド|3

 場内にスターティングメンバーが発表される。まずは日本から。スクリーンをじっと見つめる。川島、長友、柴崎、この三選手は今までと変わらない。続いて岡崎、宇佐美、武藤、山口、酒井宏、槙野、酒井高、吉田とアナウンスされる。やはり、予想通りのメンバーが発表された。このメンバーで準備をしてきたことだろう。事前に報道されたとしても、それだけを理由に変更を加えることも難しい。西野監督が確固たる信念を持って選んだ選手たちだ。昌子は攻守、特にセネガル戦ではビルドアップでもチームに貢献していただけに、その役割を槙野がどこまで補えるのか。個人的には、山口は対人の守備に特徴を持った選手だと思う。その山口に長谷部が務めていた、ディフェンスラインに下りてのビルドアップのサポートや、柴崎が空けたスペースを的確に埋められるのか。宇佐美と酒井高は乾と原口が見せていた、攻守におけるフリーランニングをどこまで見せられるのだろうか。大迫は相手陣内でタメを作り、攻撃のスイッチを入れていた。岡崎が前線から見せるプレスは守備では有効になるが、岡崎と武藤はスイッチを入れることができるのか。または、異なる戦法を意図しているのか。

 ポーランドもメンバーを入れ替えてきた。ゴールキーパーはシュチェスニーではなく、ファビアンスキが入る。プレミアリーグで実績のある選手だ。ドルトムントでプレーする右サイドのピシュチェクは控えに回った。モナコのセンターバック、グリクは初めての出場となる。チャンピオンズリーグでも堅実な守備を見せていた、安定感のある選手だ。そして、前線にはレヴァンドフスキが入る。槙野と吉田は、彼のアタックを止めることができるのだろうか。時間とともに埋まっていく客席を見つめながら、そんなことが脳裏をかすめる。

 選手たちがピッチを去り、戦いの舞台は整いつつあった。フラッグを抱えたスタッフたちが姿を見せる。場内にはAC/DCの『Thunderstruck』が流れる。ブライアン・ジョンソンの嗄れた“Thunder!”の叫び声に合わせて、真上から振り下ろすかのように、ドラムが叩かれる。恵みの雨を持つ農耕民にでもなったように、それは僕たちが持つサッカーに対する欲求を掻き立てる。試合を盛り上げる演出の一部のように、水が回転しながらピッチへと撒かれていく。今までと同じように、ワールドカップのフラッグが中央に広がり、それに呼応するかのように、両国のフラックがそれぞれの陣地に姿を見せる。その光景は騎馬戦で両軍の騎士たちが、戦いの前に自分たちの紋章を掲げ合うかのように雄々しい。ザ・ホワイト・ストライプスの『Seven Nation Army』は今日も観客たちの心拍を上昇させる。鳴り響くギターの音に合わせて、青と白の選手たちが戦いの舞台に足を踏み入れた。セネガル戦に引き続き、今日も最初に『君が代』が演奏される。続いて、ポーランドの国家『ドンブロフスキのマズルカ』が流れる。七年前のEUROで、大観衆が嬉しそうに歌い上げていた姿を思い出す。

 日本のドラマはこの日、一つの区切りを迎える。期待と不安が入り混じった気持ちを胸に、意識を眼の前に広がるピッチへと集中させた。

続く


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