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ドイツにもようやく春がやって来ました。
太陽がなく4月になってもずっと最低気温が0度〜1度の日もあり雨だけでなく雪が降る日も・・・。
南国が長い私にとっては本当にドイツの長く暗く寒い冬は辛く、当たり前に思っていた太陽の温かさや明るさの尊さをドイツに来てから冬が来るたびに感じています。

大好きな仕事を辞めた。

正確に言うと大好きな仕事を一旦お休みして他の人生の大切なことに集中することにしました。

日本での約一ヶ月の滞在からドイツに戻り、年明け早々に今年の目標やフォーカスについて夫と話し合うことに。

初めて日本へ行ったドイツ人夫は日本で見たもの、経験したこと、出会った人々にとても魅力を感じたようで、日本に数年住んでみたいという気持ちが生まれたようでした。元々日本の文化や歴史が大好きだったことに加えて、日本で実際に肌で感じた日本はドイツだけでなく今まで彼が行ったことのあるヨーロッパの国々やアメリカの都市などとは全く違う世界。観光客としてだけでなくて住んでみて本当の日本を感じ経験したいと思ってくれたようです。

私自身は海外に住んですでに15年になるので、日本は母国であり家族や多くの友人がいる「帰る」場所でありながら、日本国内で仕事をしたのは1年ほどで、実際に本帰国し日本で仕事をすると考えると正直海外の他の国へ引っ越し仕事をすることよりも勇気が必要だったりします。今まで2度ほど本帰国をして日本で就職をして長期的に住むと言うことを考えたタイミングがありますが、

「日本での仕事は下川さんにとってはつまらないと思うよ」
「海外でダイナミックな仕事を経験して来てるのに勿体無い」
「海外展開している会社や外資系企業でも日本にある企業だと日本のビジネスカルチャーがあるから息苦しいと思う」

などアドバイスを頂く機会が多く、再び海外の仕事に縁があって結局タイからスペイン留学を経てドイツに辿り着きました。

海外で仕事をして来たと言ってもお客様の多くは日系企業で日本人駐在員の方々とお仕事をさせて頂いて来たので、常に日本人としてのプロフェッショナリズムや日本独特のビジネスカルチャーやマナーを大切に仕事をして来ました。

何よりも人材紹介、ヘッドハンティングの仕事を愛して誇りを持って仕事をして来たのでこの仕事ではどこにいても誰にも負けない最高の仕事をすると仕事をして来ました。

日本に住み仕事をするこということにはどこか恐怖感があるけれど、同じ仕事をするなら絶対に楽しんで結果を残すことができるという自信もどこかにあり、夫が日本に住みたいのであればその選択肢もありかもしれないと真剣に考えていたところでした。

ドイツで2年3ヶ月勤めた会社は2022年の10月末で退職しました。ドイツで結婚をしたので配偶者ビザの申請をし、ゆくゆくは個人事業主として仕事ができたらいいなという考えがあり、ドイツだけでなくEUの他の国や今だにつながりや想いの強いタイをはじめとした東南アジアでの経験を活かして仕事をしたいという想いも持っていました。

残念ながら、配偶者ビザの申請をしてから現在まで約9ヶ月待ちの状態が続いています。就業ビザの期限が来年夏まであるので、ドイツに滞在することは問題ないので緊急性がないと思われているのか、難民の方々が多く住むエリアであるので優先順位が低いのか理由はわからないのですが弁護士さんに申請のお手伝いをお願いしたにも関わらず今はとにかく待つしかないようです。

そのような背景もあり、日本へ引っ越して夫と新たなチャレンジをするというのもいい選択肢だと考えるようになっていました。

求めるのを止めたとき、与えられる。

加島祥造さんの「求めない」という本を読んだことがありますか?

求めない ーー すると今、十分に持っていると気づく

『求めない』加島祥造


以前書いたように2022年の6月30日、ケルンでの結婚登録式の夜に自然流産の経験をしました。

2度目の流産は自然流産だったので(1度目は全身麻酔手術)、夜中に渡る出血と経験したことのない激しい痛み、痛みを乗り越えても赤ちゃんには会えないという絶望感、辛い記憶が残っています。

流産後婦人科の先生に相談をして原因を聞いても、2回続けて流産するのには何か問題があるかもしれないけど原因はわからない、37歳と言う年齢がリスクが高いのではと言う納得がいかないことを言われて分かったような分からないようなモヤモヤした気持ちになりました。年齢は努力では取り返すことができないもの。自分で調べて不育症の治療をした女性の体験談を聞いて涙したり、婦人科の先生の紹介で血液専門のドクターに行き血液の精密検査を受けたり。精密検査の結果は異常なし。ますますどうしたらいいのか分からなくなりました。

2度の妊娠共に自然妊娠でした。不妊治療は行った経験がないため、不妊治療でお金も時間もかけ、精神的にも苦しい中妊娠をされた女性の方々に比べると私の経験はまだまだ精神的にも身体的にも苦しみは少なかったのかもしれません。

漠然と仕事を始める前から結婚願望よりも女性としていつかは母になり育児をするという経験をしたいという気持ちがありました。天職だと思える仕事に出会え、海外で仕事をしたいと言う願望も早々に叶い15年間駆け抜けて来ました。30代になると女性の友人たちとの話題にも卵子凍結などの話も出てきます。女性として母になるタイムリミットは迫ってくるのでキャリアを優先してきた女性たちも結婚や妊娠出産などを考える時期がやってきます。でも、女性として自立して仕事を第一線でしながら恋愛や独身だからこそある自由を謳歌していた私は母になるという願望を叶えるために、タイムリミットを意識して無理矢理結婚したり、仕事をセーブしたり、何かを諦めることについてはどこかピンと来ておらず、仕事の成功も自由も好きな人と結婚して子供を産み育てるという願望も全てを欲張って求めていたように思います。

結婚したからと言って妊娠するわけではありません。1度目の結婚は30代に入ってすぐでしたが、子供には恵まれませんでした。運命や縁というのはあるんだと改めて感じました。求めても、自分ではどうしようもないことがあります。なので、この2年で2度の流産を経験した時に婦人科の先生から、年齢が原因かもしれないと言われても納得がいかなかったのだと思います。

2度の流産を経験し、妊娠初期の流産は染色体異常が原因で淘汰される運命だから、母の生活習慣や身体に問題がある訳ではないから自分を責めないようにと言われ、記事をたくさん読んで他の女性の体験談を読んでも、どうしても自分の身体に問題があるのか、私の年齢のせいなのか、仕事のストレスだったのか、あの一つの行動が原因だったかも、あれを食べたから?などと自分を責めていました。実母と電話をする度に、妊娠したかと聞かれなんと答えたらいいのか分からずただただ虚しい気持ちになったりもしました。

昨年7月に引っ越しをして環境を変えてから、夫の支えもあり少しずつ精神的にも元気を取り戻し、赤ちゃんが戻って来てくれることに希望は捨てないけど、もし万が一これから2人でもこの人(夫)がそばにいて一緒に人生を歩んでいけるならそれでもいいかもなと思い始めました。

「私は十分に幸せなんだ。」

必死に求めなくてももうすでに十分に幸せ。タイの前王様ラマ9世がいつもおっしゃっていたように、「足るを知る」ことが大事。

希望は捨てないけど、無理に求めることはやめてすでにあるものを大切にしていこう、そう思っていました。そして、心の奥底ではまた妊娠したとしても流産してしまうのではないかという恐怖とそれを受け入れるだけの精神的な強さが私にあるかということに対しての不安があったのです。

日本からドイツに戻ってすぐに妊娠発覚。

冒頭に書いたように、ドイツに戻ってすぐ夫と今年の抱負や目標について話し合うことになりました。

私は毎年、年末に一年間の振り返りと新年に1年のテーマの設定と叶えたいこと、やりたいことを箇条書きで書きます。

2023年のテーマは、

「新たな自分を発見する1年にする」

にしました。

足るを知る、求めないと思いながらも、叶えたいことリストには赤ちゃんを迎えてカップルから家族になること、焦らずに、何より楽しむことを大事に夫と二人三脚で歩むことなどへの想いが溢れています。

夫から本心で自分が今年叶えたいことについて話してほしいと言われました。気持ちと一緒に涙が溢れ言葉が出ない中もじっと忍耐強く私の言葉を待ってくれた夫。

「怖いけどやっぱり、赤ちゃんに戻って来て欲しい。」と、泣きながら本音が私の口から出ました。

夫は、本当に優しく理解のある人なので、仕事も大事でキャリアの成功も大事だけど、子供というのは一生私たちの宝となるから、仕事を辞めて自分の心身の健康にフォーカスして子供をまた迎える準備をしたらいいと言ってくれました。今まで積み重ねてきたキャリアでの実績があれば子供を迎えたあとでも、仕事を続けていけるよ、と励ましてくれました。

仕事をして結果を出し、お金を稼ぎ生活を豊かにすることに価値をずっと置いてきた私は夫の収入に頼るということに対して抵抗があり仕事は絶対に辞めたくないと思っていました。仕事を辞めることが怖かったし、自分の価値が損なわれるような漠然とした恐怖感もありました。

夫の気持ちは本当に嬉しくありがたかったのですが、すぐに仕事を辞めて個人事業主としてビジネスを始める準備を一旦置いておいて自分の健康に集中するということに罪悪感がありました。そう決断をしても赤ちゃんが戻ってくる保証はないから。

その話し合いをした前日に少量の出血があり、私は1人で生理が来たからまた妊娠したなかったとどこかがっかりしていたのです。でも次の日には出血が止まっていて生理不順かな?と思う一方もしかしたら着床出血?と頭によぎり、夫と話し合いをした後になとなく妊娠検査薬を試してみたところ、なんと陽性反応が出ました。すぐに婦人科検診を受け妊娠していることが確定しました。

前回のこともあるので今回は慎重に慎重に、夫以外の誰にも妊娠については言わず2人だけの秘密にして、個人事業主になるための準備も一旦ストップして、とにかく毎日よく寝て身体にいいものを食べるようにし、外出も控えて安全第一で過ごして来ました。そして、ようやく本日5月10日で妊娠6ヶ月、20週を迎えました。

初めの3ヶ月ほどは悪阻のような症状があり、匂いに敏感になったりとにかくだるくて気持ち悪い、吐きたいけど吐けない状態で体重も減りましたが、4ヶ月を過ぎてからは食欲も出て来ました。お腹もこの2週間ほどで急に大きくなり始めて、本当に私は妊娠しているんだと感じ始めています。

ドイツは妊娠してから4週間ごとに婦人科検診があるのですが、毎回不安でドキドキしながら検診を受けていました。安定期に入り、ようやく妊娠している自覚も出て来たので検診が楽しみになりましたが、今だに日々本当にお腹の中で育っているのか心配になります。

家族や心を許してきた友人がいる日本でもなく、慣れ親しんで勝手が分かり頼れる友人がたくさんいるタイでもない、なかなか居場所を見つけられていない言葉も分からないドイツで子育てしていけるのか不安はこれからもたくさんありますし、やっぱり仕事をしていない自分に慣れなくてスキルや知識が色褪せていくような焦りを感じたり罪悪感を感じる日々ではありますが、今は自分の健康管理を怠らず赤ちゃんが健康に育ってくれるように祈りながら、夫との2人の時間を楽しんで生活できたらと思っています。

そんな時間は今まで人生にはなかったから。
これもきっと「新たな自分を発見する」ということなのだと信じています。





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ゆうゆう【日系海外ビジネスを彩るヘッドハンター@ドイツ、デュッセルドルフ】
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