漢字#3 漢検一級の勉強 「穹窿」
一年半近くnoteを放置していました。三日坊主は早く治したい。
扨(さて)、僕の趣味の一つである漢検の勉強についてです(よろしければ#1,2もご覧ください)。
昨年度は漢検漢字教育サポーターを修了したこともあり、一級取得を志す方が増えればいいなと思います。
勉強方法はもちろん人それぞれだと思うので、あくまで私が実践した方法だと思って参考にしてください。大学を休学した一年間を使って合格したので、かなり特殊な状況ではありますが参考になれば幸いです。
使った辞典、教材
(準1級教材も写り込んでしまいました)
漢検一級を目指すのに私が買った教材はこちらです。
「…多っっっっ」
他の方のブログとかを参考に教材を探していたのですが、ぶっちゃけ「使う教材めちゃくちゃ多いな...」と思いました。しかし実際にいくつか購入して解いてみると、やはり教材の必要性を徐々に感じてきました。
いきなり全部揃える必要も無いと思うので、ある程度区切りがついたら次の教材という形で問題ないと思います。必要だと思われる教材を順番に紹介していくのでご参照ください。
他にもネット上の問題も使用しましたので紹介します。また、漢検一級定番のテキストである漢検四字熟語辞典は自分は買いませんでしたが、後で補足します。
①漢検漢字辞典(第二版)
漢検の範囲となる約6300字の漢字が掲載されています。各漢字には熟語の見出し語が掲載されており、一級の得点源となる重要単語が多数載っています。
自分は最初の数ヶ月は持っていなかったのですが、合格者は軒並み漢検漢字辞典を持っていたので、とりあえずと思い購入しました。3600円ほどしますが、はじめから買っておいた方が良かったなと思います。
使い方としては、間違えた漢字・知らない漢字が出てくる度に辞典を引き、読みや熟語を確認しました。
インターネットで調べれば(漢字ペディアなど)同様な情報を集めることは確かにできるのですが、辞典で勉強するメリットは大いにあると思います。
その一つが、音読みに沿って漢字が順番に整理されていることだと思います。
漢検漢字辞典を開くと、全1632ページにわたって音読み順に配当漢字が掲載されています。例えば1ページ目を開くと、
「丫」
という漢字が出てきます。アルファベットや地図記号にしか見えなくてとても面白いので、個人的にお気に入りの漢字です。
ちなみにこれは音読みで「ア」、訓読みで「あげまき」と読みます。あげまきは総角とも書き、古代の子供たちがよくしていた髪型でした。
これをインターネットではなく辞典で調べることによって、「この字は辞典の最初の方に載っていたな、亜(ア)の隣だからこの字もアだ」というように、複数の漢字を関連付けて覚えやすくなります。
また、ページをペラペラとめくっている間に間違ったことのある漢字と出会って復習できますし、「辞典の後ろの方だったな」、「左側のページの上の方に書いてあったな」という情報と結びつけて覚えることもできます。
これらはネット上の検索だけではできない学習なので、辞典の有効活用はとても大事です。
②完全征服、精選演習(漢検)
問題集として最初に取り組んだのはこちらの二冊でした。漢検が独自に出しているテキストになります。低い級(2~準2程度まで)の場合、過去問一冊あれば正直十分合格に届きます。
しかし、準一級以上の過去問テキストは3回分しか載っておらず(2級までは10回分)、配当漢字も圧倒的に増える為、到底カバーできません。
また、準一級合格者であっても一級の過去問を最初に解いたら、せいぜい(200点中)10点程度しか取れないと思うので、かなり苦痛の時間になると思います...。
ですので、まずは基礎固めとしてこちらの二冊を解くことをおすすめします。基礎とはいえ、日常生活ではそうそう出てこない漢字が大量に出てきますので、じっくり時間をかけて解いていきましょう。
そしてこまめに辞典を引いておくことが大事です。私は間違った問題をノートに書いて、その横に調べたことも書き留めていきました。ただ単に漢字を覚えるだけでなく、意味まで覚えることも重要です。
まとめたノートは、隙間時間や暇な時間に眺めて、手で答えを隠しながら勉強したりしていました。
間違えた問題はテキストやノートに印をつけていき、9割以上の問題が解けるようになるまで3周以上ずつ勉強しました。ここまでできてようやく100~120点程度取れるといった感じでしょうか。
四字熟語から勉強する
漢検には読みや書きに加え、対義語・類義語や故事・成語などの問題が出題されます。テキストをすすめる上で、どの分野から勉強しても問題ないのですが、個人的には四字熟語から勉強するのがおすすめです。
漢字と言えば「読めるけど書けない」というフレーズがよく使われますが、漢検一級に関しては逆な気がしてます。最終的には読みの方が難しいです。
四字熟語から学び始めるメリット・理由は、
・四字熟語の構成の多くは二字+二字のようになっており、対義語・類義語のような他の問題にも活かせる知識が増えていく。
・四字熟語のストーリー性で覚えることができる。
といったことが挙げられます。
また、四字熟語の配当は200点中30点を占めます。一級の合格点は160点(8割)ですが、この分野で8割を切るわけにはいきません。なぜなら、圧倒的に覚えなければいけないことが少ないからです。「四字熟語を制する者は漢検を制する」。
漢検一級の配当漢字は約3000字(下の級を含めて約6000字)ととても膨大です。漢字そのものを書けるようにするだけでなく、そこに関連した熟語なども覚えるとなると気が遠くなるような暗記が必要になります。
しかし、四字熟語はまずはたった868語を覚えれば大きな得点につなげることが出来ます。たった868語。(参考:めぐみ式漢検1級の勉強法)
めちゃくちゃ多いようにも感じますが、他の分野の問題はもはやここまで絞り切ることもできないので、実際勉強してみれば狭い範囲だという事がわかります。
漢検四字熟語辞典には約4000語の熟語が掲載されていますので、こちら868語はどういう基準で絞られたものかというと、
・一級配当漢字を含むもの
・「之」を含まないもの
・上下逆なだけの熟語は片方だけ(例:人口膾炙・膾炙人口)
というようになっています。準一級以下の漢字のみを使った四字熟語も数問出されるのですが、最初にこれも覚えようとするのはとても非効率なので後にしましょう。
また、一丘之貉(いっきゅうのかく)のように、「之」を含む漢字は今のところ出題されていないようなので、こちらも優先順位としては後回しで大丈夫です。ただし、他の分野の問題として出題されることはあります。
※一丘之貉・・・同じ仲間、似たようなもののたとえ。同じ丘に住む貉(むじな)ということから。
また、人口膾炙・膾炙人口のように、片方を覚えていればもう片方も答えられるという四字熟語がいくつかあるので、こちらは片方に絞って覚えれば問題ありません。
めぐみ式漢検1級の勉強法でまとめていた四字熟語868語のExcelデータを更に改良したものを作りましたので、ぜひ参考にしてください。意味的なつながりで整理されていますので、まとめて覚えるのにとても向いています。
自分はこの868語をまとめたExcelを活用していたので、四字熟語辞典は買いませんでした。実際に開いてみるとこんな感じになっています。
私は上から順に毎日50、あるいは100個ずつ覚えるといった感じで、ノートに一つ一つ書いて覚えていきました。関連して、わからない漢字は辞典で引いて意味や読みも調べました。実際のノートはこんな感じでした。
翌日になったら前日に覚えた四字熟語を軽く復習しながら、また新たに50~100個の熟語を覚えるということを繰り返しました。思い出すときは、読みだけを見て書き取りするという勉強でした。
私がノートを使いながらも、Excelも活用していた大きな理由がフィルター機能です。
詳しいやり方はググって欲しいのですが(簡単です)、フィルター機能を使えば、一度間違えた問題だけに絞って整理するといった使い方ができます。
例えば、完璧に覚えたと思った熟語に◎、まだ覚えているか不安な熟語に△、間違えた熟語に×といった風に記録しておくと、×を付けた問題だけ表示させるといったようなことができます。
私は四字熟語に限らず、他の分野の勉強もExcelにまとめて復習に使っていたので、良ければ参考にしてみてください。
国字の勉強
出題範囲の中で、国字(こくじ)という分野があります。国字は中国でなく、日本で独自に創られた漢字のことで、鯑(かずのこ)、轌(そり)、瓩(キログラム)など、約200字程度が出題範囲になっています。
国字は書き取り形式で2問(4点)出題され、大きな得点源ではないですが、出題範囲が完全に限られているので、一点も落としてはならない分野になります。試験前日や当日の勉強は国字の復習だけに絞ってもいいかもしれません。
とはいえ、あまり他の分野の知識に活かせない問題になっていますので、初っ端から気合入れて取り組まずに、試験の一か月程度前から徐々に200字を覚えていくといいと思います。
また、精選演習の巻末に国字の一覧表が載っています。試験前にはこちらを確認して、全ての漢字を必ず書き取りできるようにしておきましょう。
③頻出度順(新星出版社)
こちらはその名の通り、問題が漢検の試験に出やすい順に整理されています。完全征服、精選演習ではカバーできなかった問題も多く収録されています。また、赤シートで答えを隠しながら勉強できるので、隙間時間に解く教材としてもおすすめです。
④本試験型漢字検定1級試験問題集(成美堂出版)
ある程度実力がついてきたら、本試験型の問題集を使って本番の形式にもなれていきましょう。こちらは漢検協会から出されているテキストではないのですが、実際の試験の流れに沿って出題されています。
実際の試験は60分間あるので、実際に計りながら解いてみてください。
最初の内は知識が無いのでいくら考えても書けなくて数十分余ることもあると思います。その場合はその時点で切り上げた方が効率よく勉強できる気がしますが、徐々に見直しや考え直す時間に充てることができるようになってくるので、まずは計りながら解きましょう。
⑤過去問題集(漢検)
どんな試験・検定にも言えることですが、過去問を解くことは大事です。少なくとも直近の過去問4,5年分、できれば7,8年分解いておくと役立つと思います。
しかしこの過去問題集、1冊で3回分の問題しか収録されていない上、税抜1300円と少し割高なものになっております。
更に、直近の過去問以外は基本的に本屋さんに行っても売っていないので、Amazonで一冊3000円という法外な値段で販売されていました。恐ろしい、絶対買うな。
国立国会図書館に申請すればコピーを送付してもらうことも可能ですが、常に貸し出し状態の上、そこそこ面倒な手順が必要なので私は諦めてしまいました(この方法で入手している方もいるので、詳しくはそちらを調べてみてください)。
自分は毎日メルカリをチェックし、一級の過去問が安く出品されていないかを確認していました。結果的に3冊ほど1000円で購入でき、残りは定価で売ってる年度分のものだけAmazonで購入しました。
最初の内は60分間の試験を何回も解きなおすことをしましたが、徐々に実力が付いてきたら、過去問の間違えた問題だけをノートに抜粋して覚えるという作業を行っていました。
ここまでのテキストをこなして、ようやく140点程度なら取れるというところでしょうか。ひと昔の難易度であれば合格圏内かもしれません。
⑥漢検1級模擬試験倉庫
spaceplusさんが運営しており、漢検一級の問題を独自に作成している漢検1級模擬試験倉庫というサイトがあります。無料とは思えないクオリティの資料集になっているので是非活用していただきたいです。
こちらのサイトでは、分野ごとの問題も作成されているのですが、私がとりわけ利用したのは模擬試験の方でした。
本試験の形式に沿った模擬試験が現在その47まで公開されており、私は当時公開されていたその46までの試験全てを解きました。
過去問で解いた問題よりもやや難しく感じると思いますが、その分今までのテキストでは勉強できなかったような語彙を補うことができるのでおすすめです。
成美堂の本試験型では合格(160点)出来ていた自分も、いざこちらを解いてみたら100点しか取れないということもありました。それだけ出題範囲が膨大であるということなので気長に解いていきましょう。
毎回の試験の点数を記録しておくと、自分の点数が徐々に伸びて行っていることを感じられてモチベーションにつながると思います。
ここまでの教材をこなせば、合格もすぐそこです(合格確実!とまではいけないのが漢検の難しいところ…)。
終わりに
漢検一級の勉強で大事だと思うことは、
・四字熟語を優先して勉強する
・必要なテキストから順番に攻略していく
・一つのテキストを何周もかけてマスターしていく(9あるいは10割)
・辞典を引きながら、意味も確認しながら、関連した情報を覚えながら勉強する
・国字は初っ端じゃなく後で、試験前は完璧に
・一級の難しさを知り、心の折れないように自分のペースで
といったことになると思います。また、はじめは漢字一字一字の構成をよく辞典で確かめながら、丁寧に書いて覚えることが大切です。一つだけ例を取り上げたいと思います。
・「漢字の罠」 字体によく目を凝らす
一級配当の熟語に「穹窿」という熟語があります。
穴かんむりに弓の字と、穴かんむりに隆の字ですね。
…本当に?窿の字を拡大して見てみましょう。
よー--く見てみると、攵(のぶん)と生の間に一本横棒が入っていて、「隆」の字とは違います。僕はこの字のことを半年くらいずっと間違って覚えていました…。
実は「隆」の旧字体は横棒が一本追加された「隆」になっています。漢検一級のような常用外漢字になると、隆⇒隆のような漢字の新字体化が起きていないため、このように違いがあらわれてきます。
この間違いに気づいた時、薔薇の「薇」の字も間違って覚えている人が結構多いんじゃないかなと思いました(草かんむりの下は微とは微妙に違います)。
辞典を引いたときは、その漢字の字体をよく確認しながら書き取りしましょう。
グダグダとした長文でしたが、これから一級を目指す人にとって必要な情報をまとめたつもりですので、参考にしていただければ幸いです。m(__)m