#1 漢検一級の実態、「薔薇」って本当に読める?
ここでは、漢検一級をこれから目指す方はもちろん、今後漢検を受ける気が無い方にも「漢検一級って実際難しいの?」ってことを分かってもらえるようにしたいと思います。
・漢字の読みについて
突然ですが問題です。次の漢字は何と読むでしょうか?
難読漢字の代表格的な存在ですね。もはや読める人の方が多いかもしれません。
「ばら」と答えた方、もちろん正解です。しかし、「薔薇」の音読みを知っている方はなかなかいないのではないでしょうか?
音読みでは「ショウビ」(またはソウビ)と読みます。意味は「ばら」と同じです。ではここで「ばら」と読んだ場合は「何読み」にあたるのでしょうか?
百合を「ゆり」と読むのは多くの方がご存知かと思います。しかし、もちろん「百」を「ゆ」と読んだり、「合」を「り」と読んだりするわけではありません。
同様に、「薔」を「ば」、「薇」を「ら」と読むわけではなく、「薔薇」と二文字を組み合わせることで初めて「ばら」になるのです。このように二文字以上の熟語を訓読みのように読む方法を「熟字訓」と言います。馴染みのある言葉だと他に河童(かっぱ)、浴衣(ゆかた)などがあります。
ちなみに「薔」一文字の訓読みは「ばら」、「みずたで」。「薇」は「ぜんまい」、「のえんどう」と読みます。
植物の名前は熟字訓の宝庫とも言え、山桜桃(ゆすらうめ)、黄瑞香(みつまた)など難しい難読漢字がたくさん存在します。
ここらへんの話に興味を持ってくれた方には、円満字二郎さんの著作「難読漢字の奥義書」をおすすめします。漢検一級初学者の方にもおすすめです。
・漢検一級の実態
本題に入りたいと思います。漢検一級では、「薔薇」や「檸檬」のようなクイズ番組に出てくる難読漢字を単に書けたり読めたりするだけでは受かりません。
漢検一級の試験構成は以下のようになっています。読みが1点、書きが2点となっています。(2021年4月現在)
先ほどの「薔薇」を例にあげると、「ばら」と読むことを知っているだけでは、⑤の熟字訓問題にしか答えることしかできません。本番の試験では、①の音読み問題で出されたり、②で「ショウビ」水のように書き取りとして出題される可能性があります。
漢検一級では、各設問に対応できるように、一つの漢字・熟語に対して複数の読み・意味を理解する必要があります。
更には、膨大な知識と語彙力が必要とされます。
例えば、漢検一級の基本(~中級くらい?)レベルの漢字に、軛、轅、轂、榻、輻という漢字があります。なにそれという人がほとんどだと思いますがそれぞれ訓読みで、「くびき」、「ながえ」、「こしき」、「しじ」、「や」と読みます。
言葉では説明しにくいので、goo辞書から画像をお借りしました。これらは全部牛車(昔、ウシに引かせた乗用車)に使われる漢字で、それぞれ以下の部分のことを指します。
牛の首の後ろに軛をかけ、牛が前進することで轅に繋がった車が前進します。
榻は、牛車を使用していないときの軛の置き場所になります。
輻は分かりやすくいえば自転車のスポークですね。轂は輻が集まる部分です。
「そんなの知らねえよ!」、「そんなところに名前がついてるの??」と思う方もいると思います。これはほんの一例に過ぎませんが、漢検一級ではそんな「そもそも聞いたことも見たこともない漢字や物・概念」がたくさん出てきます。
他にも四字熟語や故事・諺(ことわざ)など、様々な知識が必要になります。
・漢検一級の合格率
なんとなく漢検一級の本当の難しさが伝わってきたでしょうか。ここで、実際に一級の合格率がどの程度なのか、直近数年分のデータをまとめてみました。Hは平成、Rは令和のことです。
(情報元:https://www.kanken.or.jp/kanken/investigation/result.html)
近年は難化傾向が続いており、合格率10%程度ある回は比較的受かりやすいという印象です。
これだけでも十分狭き門だと感じると思うのですが、この合格者の中の大半は、一級を合格した上で更に受け続けている「リピーター」にあたります(筆者の感覚的な印象です)。
漢検一級に初合格した人達の割合を出したらほんの数%に過ぎないでしょう…。自分は短期集中と決めて2回目で合格できましたが、5回6回、2年3年と長い長い挑戦を重ねてようやく初めて受かるのが普通です。焦らずじっくり勉強していきましょう。