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大学の街、御茶ノ水駅と駿河台のレトロ建築(近代レトロ建築-09)

御茶ノ水駅周辺は舌状に延びた本郷台地の端にあたります。聖橋から見下ろすと、台地を真っ二つに分断して神田川を通す仙台濠の掘削大工事の跡が見て取れ、お茶の水を代表する特徴的な地形が確認できます。

聖橋

御茶ノ水駅の上で神田川をまたぐ聖橋は、湯島聖堂とニコライ堂を結ぶ橋であることから名がつけられました。

聖橋から昌平橋(総武線鉄橋の向こう側)を望む

神田川と鉄道が交差するおなじみの景色です。神田山を真っ二つに分断して掘削するという大工事。仙台伊達藩による大規模な土木工事で生み出された、人工の渓谷なのです。昌平橋は1691年(元禄4年)に徳川綱吉が孔子廟である湯島聖堂を建設した際、孔子生誕地の昌平郷にちなんで命名。 神田川に架橋の中で古くから存在する中山道の橋。現在の昌平橋は1923年(大正12年)に架け替えられたものです。

ここを出発点に、今回は御茶ノ水駅の周辺、駿河台にレトロ建築を探索しました。まずは湯島聖堂とニコライ堂から。


マップが見えない方(iPhoneのsafariでは警告が出る)はこちらのリンクから。

湯島聖堂

竣工年:1935年(昭和10年)文部省、伊東忠太。
元々、湯島聖堂 孔子廟は1690年(元禄3年)、5代将軍綱吉により建てられ、後に幕府直轄学校として昌平坂学問所が開設されました。関東大震災により焼失し、1935年(昭和10年)に伊東忠太の設計により、寛政時代を模して鉄筋コンクリート造りで再建されたということです。

湯島聖堂

一見しただけでは江戸時代の建物かな?と思ってしまいます。設計者の伊東忠太は築地本願寺や大倉集古館を手掛けており、西洋建築を基礎に和風建築に反映させるという、その共通性に納得してしまう外観になっています。
因みに、湯島聖堂といえば見逃せないのが孔子像です。

孔子像

この孔子像は世界で一番高い孔子像といわれています。孔子の墓にはカイノキを植えられました。中国では科挙の試験に合格した者に、カイノキから笏(しゃく)を作り授けたことから、学問の木とされています。孔子像の近くには大正4年、白沢博士が中国から種子を持ち帰ったカイノキが植えられています。

カイノキ (奥に孔子像が見えます)

聖橋のたもと、東京医科歯科大学側に昌平坂学問所跡 (近代教育発祥の地)の説明板があります。昌平坂学問所は幕府が朱子学を奨励し林家私塾の学問所を幕府の直轄として1790年(寛政2年)にを設立しました。この学問所の存在が、のちに大学が集まる神田の発展につながりました。現在の湯島聖堂と東京医科歯科大学を合わせた敷地だったとのこと。

昌平坂学問所跡 (近代教育発祥の地)の説明板

少し離れてJR御茶ノ水駅の東京医科歯科大学入口前にも「近代教育発祥の地」の碑が最近?登場しました。

近代教育発祥の地の碑 (東京医科歯科大学)

御茶ノ水駅にもどり、お茶の水橋の交番を目指して歩くと、お茶の水の石碑があります。せっかくなので、見ておきます。

お茶の水の石碑

鷹狩りで2代将軍秀忠がこの近くの高林寺境内の名水で茶を点て、気に入ったことから地名となったとあります。もう少し盛り立てても良いとは思いますが、交番の横にちょっとがっかりな記念碑がありますので、通りすがりに横目で見て行きましょう。

さて、気を取り直してレトロ建築を巡っていきます。

東京復活大聖堂 (ニコライ堂)

竣工年:1891年(明治24年)設計:ジョサイア・コンドル。
ドーム屋根が特徴で、日本初で最大のビザンティン様式の教会建築といわれています。震災で大きな被害を受け1929年に修復されました。
(敷地内での撮影は禁止されていますが、掲載の写真はそれ以前に撮ったものが含まれます。)

東京復活大聖堂 (ニコライ堂)
東京復活大聖堂 (ニコライ堂)
東京復活大聖堂 (ニコライ堂)

旧主婦の友社 (カザルスホール)

竣工年:1924年(大正13年)設計:W・M・ヴォーリズ。
ヴォーリズは、メンソレータムで知られる近江兄弟社の創業者でもあります。1987年にヴォーリズ設計の主婦の友社ビルを磯崎新氏の設計により当時の外観デザインを活かして、復元、改築されました。現在は日本大学カザルスホールとなっています。

旧主婦の友社 (カザルスホール)
旧主婦の友社 (カザルスホール)
旧主婦の友社 (カザルスホール)

山の上ホテル (休館中)

竣工年:1936年(昭和11年)設計:W・M・ヴォーリズ 。
本館の建物はアール・デコ調のクラシカルな内外装が特徴です。作家のカンヅメに使われることが多く、文化人のホテルとして知られています。
(写真は休館発表前の2022年末に撮った営業中のものです。)

山の上ホテル
山の上ホテル
山の上ホテル

猿楽町町会詰所

竣工年:昭和初期。猿楽町駐在所として建てられ、その後町会の詰所として利用されてきました。外観の保存状態が良いため、映画やドラマで交番ロケ地として何度も使用されています。

猿楽町町会詰所
猿楽町町会詰所
猿楽町町会詰所

カトリック神田教会

竣工年:1928年(昭和3年)設計:マックス・ヒンデル。
キリシタン解禁後に早い段階から日本人のために開かれていた教会。震災により焼失しましたが、現在の聖堂が再建され、空襲も免れました。

カトリック神田教会
カトリック神田教会
カトリック神田教会
カトリック神田教会

伊東忠太、ジョサイア・コンドル、ヴォーリズといった著名な建築家の建築が近い距離で、連続して見られるところはそう多くはありません。さすが、お茶の水です。


この記事は、私の「東京レトロ街歩きガイド&マップ」サイトのエリア別「Ar-05神田からお茶の水を歩く」、更にテーマ別「Th-07今に残る近代レトロ建築」を基に街歩きをしています。記事の内容以外にもAll in Oneのガイド&マップになっています。こちらもぜひ参照ください。

またinstagramでも「近代レトロ建築」を発信していますので、訪問してみてください。

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