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九段会館復元。九段下を巡るレトロ建築(近代レトロ建築-19)
九段下は江戸城北の丸に通じる田安門があり、向かい側には靖国神社が広がっています。さらに九段下交差点には九段会館があり、ランドマークにもなっています。
九段会館は東京の近代の歴史をくぐり抜けてきた建築でした。2011年の東日本大震災で天井が崩落する事故があり閉鎖され、再開発により解体されましたが、「九段会館テラス」として2022年に復元されました。
今回は九段会館を中心に、近くにある近代のレトロ建築を探訪する街歩きをしました。この記事が、読んでいただいた皆さんの街歩きの「ガイド&マップ」となったら嬉しいです。健康のためにも歩きましょう。
マップが見えない方(iPhoneのsafariでは警告が出る)はこちらのリンクから。
旧軍人会館 (九段会館)
竣工年:1934年(昭和9年) 設計:川元良一
九段会館はホールやレストラン、宿泊施設などを備え、結婚式やイベントなどに使用されていましたが、2011年の東日本大震災で天井が崩落する事故があり閉鎖されていました。建築は、コンクリート造の建物に瓦屋根を乗せた帝冠様式を採用。大正末期から昭和初期にかけて、公共機関の庁舎などによく用いられていました。
九段会館は遡ると、昭和天皇の即位の礼を記念して「軍人会館」の名称で1934年(昭和9年)に完成しました。在郷軍人会の本部があったほか、戦前・戦中期を通じて軍の予備役の訓練、宿泊に使用されていました。特筆されるのは、1936年(昭和11年)の二・二六事件の勃発をうけ、この軍人会館に戒厳司令部が設置されたことです。
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この軍人会館の戒厳司令部を写した写真は二・二六事件の当時の状況を伝える代表的な写真の一枚になりました。さらに戦後は 連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ) により接収され、「アーミーホール」の名称で連合軍の宿舎として使用されたという歴史も持っています。
一旦は解体されましたが、会館の城郭風の建築様式を保存しつつ「九段会館テラス」として2022年10月に現在の姿に復元されました。
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九段会館から靖国神社の入り口方向へ歩いていくと、洋館の九段ハウスが見えてきます。
九段ハウス
竣工年:1927年(昭和2年) 設計:内藤多仲(構造)/木子七郎(意匠)
小間物商で財を成した山口家5代目山口萬吉の私邸として建てられた鉄筋コンクリート造3階建地下1階のスパニッシュ様式の洋館です。構造を東京タワーや通天閣などで知られる「耐震構造の父・塔博士」内藤多仲、意匠を木子七郎などという錚々たるメンバーが手掛けました。現在は、設備がリノベーションされ会員制ビジネスイノベーション拠点「九段 kudan house」として保存・活用されています。
残念ながら塀の外からしか見えません。
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さらに九段ハウスと暁星学園間を少し歩くとフィリピン大使館公邸があります。
フィリピン大使館公邸
竣工年:1935年(昭和10年)
鉄筋コンクリート造2階建てで、白い外壁、アーチ型の開口部が特徴のモダンな建物です。
安田財閥一族のひとり、安田岩次郎の邸宅として昭和10年に建てられ、昭和19年、当時フィリピン大統領であったホセ・ラウレルが安田家から購入。岩次郎の姪にあたるオノ・ヨーコが幼少期を過ごしたことでも知られます。
大使館公邸なので立入りは不可で、外部からのみ。守衛所もあって、覗き込むこともちょっと難しい…。
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二合半坂を飯田橋方向へ歩くと東京ルーテルセンターがあります。
旧日本神学校 (東京ルーテルセンター)
竣工年:1937年(昭和12年) 設計:長谷部鋭吉
日本神学校は1930年に明治学院神学部と東京神学社が合併、1937年東北学院神学部が合流して設立された建築です。キリスト教の牧師を養成する学校として建てられたものです。戦後、学校は三鷹市に移転しました。その後の1950年ごろからアメリカのルーテル教会宣教師団の本部として使用しています。外観はとてもシンプルなもので、外壁も修復されて古さは感じられません。
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ここからは余談になります。
九段下駅から田安門、靖国神社方向に歩くと、まず目につくもの2題。
高燈篭 (常燈明台)
靖国神社正面の常夜灯として1871年(明治4年)に建設されました。当時、品川沖の船にとっては灯台の役目も果たしていたといいます。
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靖國神社は戊辰戦争など明治維新で国家のために一命を捧げられた方々を祀るため、明治天皇の勅令によって明治2年(1869)に「招魂社」として創建されました。国家ために殉難した人の霊(英霊)246万6千余柱を祀る国家神道の代表的施設です。
大村益次郎像
巨大な鳥居をくぐるとまず目に飛び込んでくるのは大村益次郎像です。
大村益次郎像の顔は上野戦争があった上野公園の方を向いており、西郷隆盛像と視線を合わせているともいわれています。
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この一帯は北の丸、千鳥ヶ淵といろいろ見応えがあって、歩き出すとキリがありませんね。(靖国神社は後日、別記事にしたいと思っています。)
この記事が、読んでいただいた皆さんの街歩きの「ガイド&マップ」となったら嬉しいです。健康のためにも歩きましょう。
この記事は、私の「東京レトロ街歩きガイド&マップ」サイトのテーマ別「Th-07今に残る近代レトロ建築」を基に街歩きをしています。記事の内容以外にもAll in Oneのガイド&マップになっています。こちらもぜひ参照ください。
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