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朝の通学ラッシュ

電車に乗るということはどこかに運ばれるということだ。

電車は大きな鯨のように大きく口を開けて僕たちを飲み込み、何処かで吐き出す。電車の中はいろんな匂いがするから仕方ない。

僕は電車の座席に座ると辺りを見渡すことが良くある。周りを見るといろんな人がいる。携帯を熱心に見る人、パズドラをやる人、ホロヴィッツのカササギ殺人事件を読んでいる人、大きなヘッドホンを付けてきっと朝からベイビーメタルを聞いている人。それからそういう人を眺める人。

僕はそんな彼らを眺めている。皆顔の作りは違くとも、表情は変わらない。つまらなそうな顔をしている。朝からスマホを見て大爆笑している人はいない。「なんでこんなつまらなそうな顔をしているのかな?ゲームとか楽しくないの?」心の中の自分が皆に問いかける。でも誰も答えない。当たり前。

辺りを見回していると、ガラスに反射した自分と目があった。少し下に目線を下げると僕は口角を下げている。つまらなさがへばりついている。僕は目を逸らすために目を閉じた。

気付くと僕の身体は終点に運ばれていた。クジラのような電車は僕の躰を吐き出した。「まったく無味無臭の躰だった」電車にそういわれた気がする。

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