1.おやすみ

目の前にパグがいた。そう、犬のパグ。
何かを食べている。なんだろう、と思いながら食い散らかされた欠片を拾い上げるとそれは私のチーズだった!

「これは僕のおやつなんだが!??」

パグ相手に銃撃戦が始まった。そびえ立つ高い高い本棚に身を隠しながら揚げパンをかじる。再び銃を構えながらパグを1匹ずつ撃っていく。撃たれたパグはフワフワとキラキラの綿菓子になった。それでもパグはまだうじゃうじゃ湧き出てくる。どこかにパグの発生地があるはずだ!そこを占領できれば勝機はあるはず。

そうこうしているうちに、敵陣の右側の歩道から新しい足音たちがやってきた。
ああ!!
あいつら、援軍にクレヨンネコを呼びやがった!
やつらは強い。どこでそんなツテを!?

クレヨンネコは宣言した。
「この戦いに意味は無いのだ。だからお前たちはみんなトマトになれ!」

トマトはいやだ!
トマトになったら魚になれない!
そう、僕達は魚になるために生まれたのに!

魚は自由だ。大きな海を好きに生きて好きなものを食べて好きな押し入れで鱗を綺麗に磨く。押し入れは海への入口なのだ。
大いなる海に入るためには身体を清めねばならない。鱗が輝いているのはお清めが終わった証拠なのである。

戦況は芳しくない。クレヨンネコとトマトと魚は入り乱れてひとつになっていく。助けてくれ。私は一体何になろうというのだ。
私はもう純粋な魚になれないのか。大いなる海に還れないのか。
ああ、せめて1枚でも綺麗な鱗がほしかった。

何かを察し動きを止めたパグは言う。
「お前たちが今日の人間だったんだね。等しく愛しい人間。海にお帰り。クレヨンネコは僕が食べてしまおう」
そうしてクレヨンネコたちに1列になるよう指示を出すと、彼らはヒョッコヒョッコと飛び跳ねながらパグの口に消えていった。

これで海に帰ることができるんだ!
僕達は喜んでその場で抱き合った。
ありがとう…ありがとう…ありがとう……

あれ。まってくれ。
どうして僕がもう一人いるんだ。
いやいや、まてまて。
1人どころじゃない。ここにいる兵士は全員が僕じゃあないか。

どれが本物の魚になれる僕なんだ?


目が覚めた

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