空に悲しくなるようなものがあってはいけない
人の体は上を向いて生きるようにできているらしい。
そう感じたのは、久しぶりにひつじ雲がつらなった青空を見上げたときだった。
クッ、と顔を上げると、頚椎が少しだけゆるんだ。リンパが流れる耳横の筋肉や後頭部は、筋肉がきゅっと伸びている感じがして気持ちいい。背筋もつられてしゃんと伸び、血流のながれが一気によくなる。気分もいい。
それまでは重くぶ厚い雲がどよんと沈んでいて、首や肩の凝りがひどい日が続いていた。気分も下がる。いつも以上に、どうしようもない自分が嫌になるし、悲しくなるし、腹が立つしで、どんどん落ちていく。あぁこのままどこまで落ちてゆこう、いやだ、奈落の底は、それでは地底か。とか考えていたら、なるほどお天気だけのせいではなく、こういう事情もありました。
つまり、総じて下を向いている時間が長すぎるのだ。仕事でも1日中パソコンを使って背中を丸めているし、書類と常ににらめっこ。帰ってきたらスマートフォンを片手に下を向き、本を読んだり、日記を書いたり。それはきっと体にとって、とても不自然な姿勢だったんだと思う。体からのSOS。
人の体は、ずっと下を向いては生きられないようになっている。
きっと悲しいことや辛いことがあっても、いつかは上を向けるように、神さまがそういう風に設計したのだと思う。
だから仰いだ時、あってはならないものが、そこに存在してはいけないのだ。
燦々と輝く太陽や、妖艶な月や、不揃いな星を嘲笑うかのように、完璧で、暴力的で、攻撃的な翼が空を舞うことは、いつの時代も決して許されない。
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