せんべい布団と祖母の笑い声
乗り物酔いをしやすい子供だった
バスに船に新幹線、どんな物でも酔える乗り物酔いエキスパートだ
そんな自分がある時、祖母と兵庫に行った
「孫に宝塚を見せたい」という、祖母の希望だった
行きの新幹線、当然ながら酔った
帰りの新幹線、疲れのせいかさらに酷く酔った
泣きながら嘔吐が止まらない孫に、祖母は大層心配したらしい
途中下車して1泊し、身体を休めて帰ることに…
煌びやかな宝塚の世界も楽しかったけれど、この旅で1番記憶に残っているのは宿での会話だ
気分の悪いまま宿に向かい布団に寝かされたが、どうにも寝心地が良くなくて
祖母にそれを訴えると「こういうのを"せんべい布団"って言うんよ」と笑いながら教えてくれた
知識と現実が結びついた瞬間だった
本好きな子供にとっては、その事に気持ち悪さを超える興奮があったらしい
宿のことはもう何も覚えていないけれど、布団の感触とその会話だけは祖母が亡くなった今でもしっかりと記憶に残っている
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