鬼様のブランチ 「おじいちゃん、初めての手作りクッキー」
今回の鬼ブラ！
・理系の男がクッキーを初見攻略。お菓子作り性格診断。
・バレンタインの成果バレあり。
前回の鬼ブラ！
・フラッと帰ってきた男が屋敷をフラフラ。みんなにフェロモンを振りまくぜ。
「つくれぽ」ねえ……
ふーむ、ふむ………。
あら、珍しい。
クックパッドなんかをご覧になるのですね。
バレンタインに女がチョコを作るのは可愛いが、男がホワイトデーにクッキー焼いてきたらキモいよなあ？
ヒエ……昭和……。
いや、謙遜的に言ってるのだ。
俺がクッキー焼いてもキモがられちゃうだろ。
手作りのお菓子がキモいかどうかは、性別ではなく「日頃の清潔感と距離感」によるのではありません？
清潔メンズがはにかみながら星形のクッキーをくれたら、キュンとすると思いますわ。
私でいいのか？
なぜ私のところに？
菓子なら、上手く作る者がいるだろう。
身分の低い者に気ぃ使わせたらハラスメンティブだろ。
材料ってウチにあるのか？ 買い物に行くべき？
何を作るかによる。
そりゃそうだ。頭の悪いことを言ってしまった。
逆に、何なら作れるんだ？
私もそう詳しいわけではないのだ。クッキーしか作れない。
クッキーの材料はある……と思う。どのくらいの量を予定しているんだ？
7個。
いや、1人に1個では少ないか。適当な7の倍数。
小さいクッキーをたくさん焼いても可愛いが、大きいものを1枚か2枚というのも、気持ちが伝わっていいかもしれない。
私もちょうど、アイシングクッキーを作ってみたいと思っていたのだ。
アイシング？ 冷やすのか？
たぶん冷やさないと思う。冷やすのかな？
こう、砂糖のペーストでクッキーに絵を描くのだ。細かく縁取りをしたりして、メッセージなどを書いても可愛いと思う。
ふーん、そんなことできるのか。
え？
できない………。
ん？
私も自分で言っていて、こんがらがってしまった。
白威はいつも、私が作りたいと言ったものを作ってくれるから、理想を具体的に言う癖だけついてしまった。恥ずかしい……。
最初に付き合った男がやり手だったから、男の理想が高くなってしまうヤツか。
それはまた違う話だろう。
うーん……
今ある材料で、私に教えられるものは、シンプルな型抜きのクッキーだな。
もらいもののブルーベリージャムがあるから、これを入れてもおいしいかもしれない。
そんな糖度の高いもんを焼き菓子に入れたら焦げるだろ。
え？ 確かにそうかもしれない……。
でも、ジャムの入っているパウンドケーキというのはある。おいしかった。
火の通りが違うだろ。クッキーは焼肉、ケーキはローストビーフなのだろうから。
ケーキだって、外側にジャムを配置したら焦げるだろう。売ってるジャムなんか「それ以上は水分を飛ばせない」という状態まで煮詰めてあるのだろうから、次のステップで即焦げる。
詳しい……。
菓子のことは知らないが、理系だから。
材料って何使うんだ？ 小麦粉？
そう、小麦粉とバターと卵だ。
甘くねーじゃん。
ハッ………そうだ、砂糖も入れなければ。
うーむ、これはレシピをちゃんと見たほうがいいな。私の記憶は頼りにならない。
「クッキー レシピ」と。
やっぱりクックパッドのやつが上位に出てくる。つくれぽ1万件ついてるし、これでいいだろう。
えーと、バターを室温に戻すと。
私は不要ではないか？
いてくれよ。俺、オーブンの使い方とか何もわからんもん。
小麦粉240グラムってどれで量るんだ？
あれ？ いつもの秤はどこにしまってあるのだろう。
この下かな……？ …………。
5分後
秤がない。
詰むのが早すぎる。
この小麦粉は500グラム入りで未開封だから、「半分ちょい少ない」くらいでいいのでは？
バターも必要量が100グラムで、箱200グラム入りだから半分だろ。
砂糖は80グラムだから、「バターよりちょっと軽いくらい」でいいんじゃないか。
か………賢い。
言うほどの賢さではないだろ。
そんで、それでいいのか？ おおよその量でも問題なし？ それとも、厳密に計量しないと失敗するか？
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