ビールで振り返る2023年。
私の2023年の初アルコールは1月3日に沖縄で飲んだオリオンビール。
元旦からパートナーと大喧嘩して、最初の2日間はずっとホテルに引きこもってNetflixを観て過ごした。両親からの遠隔フォローもあり、3日目になってようやく重い腰を上げ、沖縄の地を歩く。この日のビールはいつもより苦く感じた。
今思い返すと、とても幼稚な自分が滑稽で、呆れる。今年の元旦は何事もなく平和に過ごせますように。
2023年の初お鮨は恵比寿にある「すし さとる」を訪れた。専門学生時代の先輩と久しぶりのご飯に行った。人生で初めて茄子のネタが出たことにも驚いたが、大将が同い年ということに空いた口が塞がらなくなった。
この鮨バブルの乱世に予約が即埋まる人気のお鮨屋さんを同世代の人が営んでいる。一朝一夕ではなし得ないことだ。この日のビールはいつもよりも刺激的な味がした。
3月は義兄が戸建ての家を建てたというので、どんなもんかと岩手に足を運んだ。想像を超えるくらい素敵な家で、幸せそうな様子をみて、ほんのちょっとだけ妬ましい気持ちになった。
近所にあるおいしい焼き鳥が食べられるお店で飲んだビールはいつもより羨望の味がした。
翌日は居ても立っても居られない気持ちになって、まだ有給中だというのに無意識にPCを開いて仕事をしていた。きっと昨日訪れた家に負けないくらい、自分にとっての理想の家を建てたいという感情が休みたいという思いに優ったのだ。
やりきった夜に飲んだ一番搾りは、麦芽の香りを強く感じた。
4月。28歳の最初に飲んだビールは隅田川沿いにあるクラフトビールのブリューパブ。生まれ年の95年にできた隅田川ブリューイングで飲んだビールは、長年で培った技術や知識がかけ合わさった歴史的な味わいだった。
GWは家族で箱根温泉へ。この頃は何をしても上手くいかないことばかりで正直、旅行を楽しめるような気分ではなかった。仕事もプライベートも空回りばかりで、自暴自棄。
旅行中も仕事のことばかり考えていて、きっとたくさん困らせたと思う。飲んだビール味もあまり覚えていない。
いつまでもウジウジしてられないと吹っ切れた5月後半。フライングペンギンという八重洲のバーで生ジョッキ缶の生みの親である古原さんとサスティナブル×ビールのイベントを開催した。
当日は定員を超える反響で、大企業からベンチャー企業の方までビール好きによるビール好きのためのイベントとなった。この日のビールは何か新しいことが起きそうなワクワクの味がした。
6月は思いがけない出会いがあった。伊豆大島で初めてとなるクラフトビール工場を立ち上げようとしているという。ビール事業をしていたから、離島で醸造所を建てて、継続することがどれほど難しいか理解できた。
それでも覚悟を持って、本気で成し遂げようとする姿には心を打たれた。私も同じくらいの熱量を持って仕事に打ち込めているか、そんな問いを自身に投げかけた。
その日に飲んだビールは胸やけしてしまうほど、重たくずっしりと感じた。
7月は秋田が豪雨に襲われ、弟のアパートが床上浸水被害にあった。一人暮らしをしていたアパートの家具や家電は使い物にならなくなり、引っ越しをせざるおえなくなった。
そんな大変な状況のときに何もしてあげることができなかった自分がとても情けなくて、ちっぽけな存在であることを痛感した。
LINEで送られてきた浸水したアパートの写真を眺めながら飲んだビールは、何杯飲んでもどこか物足りなく感じた。
2023年の夏は、コロナ禍で失われていた夏の思い出を取り返すように色んなことを満喫した。花火大会、夏祭り、BBQ。振り返れば夏という言葉から連想することは全てやりきった。
夏に飲んだビールは、キンキンに冷えていて、熱を帯びた身体を冷やしてくれた。
蒸し暑く、残暑が続く9・10月。夜遅い時間までオフィスでPCと睨めっこしていた会社のメンバーとご飯に行った。どんな話をするのかと様子を伺っていたら、店に行く道中から食事のときまでずっと仕事の話をしていた。
若い世代の熱量と真剣な眼差しに感化され、ビール一杯で酔ってしまった。
11月は両親が千葉を訪れた。目的は孫に会うこと。ふと父の姿を見ると白髪が増え、歳を重ねていることに気づいた。母は相変わらず心配性で、いつまで経っても母親なんだと思った。
この日のビールは、すごく遠い昔に飲んだ懐かしい味がした。
そして12月31日の今日はこのnoteを書きながら今年最後のビールを飲んでいる。怒涛の一年を振り返ると、いつも節目にはビールがあった。
日常は留まることなく高速に過ぎるし、立ち止まって後ろを振り返っても思い返すことができないこともある。
けれど不思議なことに飲んだビールがどんな味だったか、どんな気持ちで飲んだかは鮮明に思い出せる。
ビールを飲むということは、自分に起きた出来事や感情の記憶をいつまでも忘れずに自分の心の中にしまっておくための手段なのかもしれない。
2024年はどんな味のビールと出会うのだろうか。
そんな妄想を巡らせているからか、今日のビールはドキドキの味がする。