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端っこで逞しく生きる:広島県中央南部平坦~中山間地域【災害から身をまもるvol.26】
広島県の中央南部平坦~中山間地域の地質は中生代白亜紀(約1億年~8400万年前)の花崗岩や火砕流堆積物(溶結凝灰岩など)がメインです。
瀬戸内海の倉橋島(呉市)は特に花崗岩だらけの山がちな島です。
場所の再確認
もう1度、見てみましょう。
スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト)
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。
中央南部平坦~中山間地域は上図の⑧です。
ご覧のように、熊野町・呉市・竹原市・大崎上島町・江田島市の全域と、周囲の6市町それぞれの一部地域です。
今回主役の倉橋島(くらはしじま)は呉市の南西、江田島市の南東隣りの島です。
地形を見る
では行ってみましょう!
「島全体が山」と言う雰囲気ですよね。
海沿いの所々に平坦地があり、これらは完新世(約1万年前~現在)の海岸堆積物です。波に運ばれた砂や泥、山から川を流れ下ってきた土砂などが溜まってできたものです。
では沿岸部を見てみましょう。
島の南部です。
平坦地の周囲に扇状地が見えますね。
大小様々な扇状地がいくつも見え、それらはことごとく、段々畑(あるいは棚田)になっています!
ちなみに北の方に見えるグラウンドみたいな平坦地がありますよね。
これは北に延びる道路がトンネルになってるので、掘削で出たズリ(岩や土砂)を盛土にしたものだと考えられます。
扇状地、なぞってみると、こんな感じです。
南西の扇状地は特に大きいですね。
島を見渡してみると、このような平坦地や扇状地がポツポツと点在。
そして平坦地には住宅、扇状地には田畑と、ことごとく利用されています。
花崗岩は基本的には硬い岩石なのですが、様々な条件が揃って風化し始めると、ものすごくボロボロになります。いわゆるマサ化という現象です。
軟らかいものだと手で握りつぶせ、サラサラと砂状になるほどです。
倉橋島の地形を見る限り、花崗岩は基本的には硬く、ところどころ風化して土砂を流出しているようです。
岩盤は硬くて耕作には向いていませんが、崩れて流れた土砂(扇状地)なら耕せるということで、ことごとく田畑になってるのでしょう。
本当に、日本のご先祖様は逞しいです。
この土砂、日々の沢の流れで少しずつ溜まった土砂だけで出来たのなら平和で良いのですが、自然はそうそう都合よくはありません。
と言うのも・・何か気になるものが見えませんか?
これは砂防ダムあるいは治山堰堤(えんてい)でしょう。(※管轄の違いで設計思想が違うため名前も違う)
国土地理院地形図では記号が図示されてませんでしたが、空中写真では構造物が見えますね。
こういうものが建設されているということは、土石流が発生する渓流ということです。やはり扇状地があるということは、長い歴史の間に何回も災害が起こっているということ。
ご先祖様たちは災害の危険を知りつつも、そこに田畑を築いてきたのです。
扇状地の田畑たち
ということで、私たち日本人のご先祖様たちの逞しさを実感すべく、倉橋島各地の扇状地を見てまわりましょう。
先ほどの少し西。ここも扇状地や河川沿いはことごとく耕されてます。
ほぼ水田ですね。
さらに西です。
これなんて、いかにも流出した土砂のかたちに見える扇状地ですが、ことごとく田畑になっています。
もう「ちょっとでも土砂があれば全部耕してやるぜ!!」くらいの気概を感じるほどです。すごい。
3Dで見るとさらに驚愕です。
島の端っこのわずかな土地にへばりつくように逞しく生きている。
背後には急なV字渓流があり、しかも長い。
大雨が降ったら・・・と思うとゾッとします。
さらに西。
ここなんて、上の斜面は昔崩れた跡だと思われるような地形です。
ざっと見ただけでも、こんなにたくさん・・・
やはり昔の日本人は、災害と背中合わせで生きてきたんだなぁと実感します。
謎のまあるい穴
さらに北西の方を見てみましょう。
ここも海沿いのわずかな平坦地や扇状地に人が住んでいて、さらに奇妙な地形が見えるんです。
これです。
まるい穴がポコポコとあちこちに見えませんか?
こんな感じ。1つの赤丸内にいくつも見えますよね。
国土地理院地形図ではケバケバの記号があります。
これは「崩壊跡」です。
花崗岩はだいたい、地表に近い場所から均等に風化します(そうじゃないパターンもありますが)。
均等に弱い地層が分布している場合は、このように丸い形状(馬蹄形)に崩れます。そういう場合は土砂崩れ1つ1つは小規模ですが、突発的でドサッと落ちるので怖いんです。
やはり・・全面が花崗岩でした(;^_^A
ここは比較的最近に崩れたのでしょう。だからカタチが残ってるんですね。
さきほどまで見てきた他の扇状地も、昔は上流にこのような「跡」がたくさん見えたのかもしれません。
今回はここまで。
お読みいただき、ありがとうございました。