
同じ地質なのに地形が違う?のナゾ:大分県北西部平坦~中山間地域【地元再発見の小旅行vol.29】
大分県は全体的に起伏が多いイメージを受ける地形をしています。
北西部平坦~中山間地域も全体的にはなだらかな地形が多いのですが、起伏が多いイメージです。
今回は、その理由の1つについてお話ししていきます。
場所は?
再確認しましょう
スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト)
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。
大分県は九州の北東部に位置しています。
北西部平坦~中山間地域は⑤の地域です。
今回は日田市がメインになります。
地形を見る
では、まずは地形を見てみましょう♬
やはり、この地域は平坦地と山地が入り組んでいて、起伏が激しいイメージです。
北の方を見てみましょう。
南西は河川堆積物で平坦な地形になっていて、その周辺は山がちです。
中心部付近をさらに拡大しました。
河川沿いの平坦地より一段高い台地があって、さらに高い場所は谷が深く刻まれています。
図示してみるとこんな感じでしょうか?
一段高い台地が赤点線。
さらに一段高くて浸食が進んだ台地状の地形が青。
また一段高く、山頂はやや平坦だけど谷が深い地域が緑。
崖をつくる急峻な山地が黄色。
これは地質の違いが出ているような気がしますが、どうでしょう?
お!
おぅ・・。
半分当たっていて、半分ハズレでした(;^_^A
平坦地より一段高い台地(赤点線)はピンク色で阿蘇4火砕流堆積物。
急峻な山地(黄色点線)が新第三紀後期(約720万~258万年前)の安山岩溶岩類です。
青と緑は同じ地質でした。(※南東部地域は山頂部だけ)
硬かったり軟らかかったり?
あらためて図示してみます。
この範囲の地質です。
これは約180万年~77万年前に、南東の猪牟田(ししむた)カルデラから噴出して流れてきたデイサイト質の火砕流堆積物です。
赤線はそのままで、地形図に切り替えてみました。
やはり、東西では随分と地形の印象が違いますよね。
もう少し拡大して国土地理院地形図に切り替えました。
南部の阿蘇4火砕流の台地は広い平坦地なので畑になっているようです。
猪牟田(ししむた)カルデラの火砕流堆積物も、もとは台地だったのでしょう。西は浸食があまり進んでおらず、山頂部がなだらかな地形で果樹園などになっています。
浸食が進んでいないということは、硬いのでしょうか?
一方、東は浸食が進み谷が深く、山頂にはなだらかな場所が少ないので、人の手は入っていません。
浸食が進んでるということは軟らかい?
同じ地層なのに??
あ・・ちょっと分かって来たかも??
溶結と非溶結
そうなんです。
火砕流堆積物というものは、火山灰や岩塊と高温のガスが混ざったもので、ガスの作用でホバークラフトのように地面から浮くので摩擦がなくなり、高速で流れ下る現象と言われています。
そしてどこかで停止した時にまだ熱が残っていると、一旦融けてから冷えて固まり、まるで溶岩のように硬くなります。
(※雪も降りたてはサラサラですが、昼間に少し融けて夜に冷えるとガチガチの氷になりますよね。そんな感じです。)
そして逆に停止した時に冷めていると、火山灰と岩塊が混ざった土砂になります。古い地質なら長い年月の間に圧縮されて岩石になりますが、新しければ軟らかい地質です。
シームレス地質図V2では地層の詳しい解説はないので、20万分の1地質図で確認してみます。
地質図凡例:20万分の1地質図幅「大分」(産業総合研究所)より
字が少し小さめですが、見えますかね?
溶結凝灰岩及び非溶結の火山灰及び軽石
と書いてありました!やはり!!
もちろん、現地で確認していないので断定はできませんが、可能性は高そうです。
同じ地層でも、溶結した部分と非溶結部分で硬さが違うので、地形にも影響が出るのですね!
では最後に、3D画像をお楽しみください。
今回は以上です。
お読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
星住英夫・斎藤 虞・水野清秀・宮崎一博・利光誠一・松本哲一・大野哲二・宮川歩夢(2015)20万分の1地質図幅「大分」、産業総合研究所.