
なめらかまったり地形に癒されて:福岡県北東部山間地域【ふるさと探訪vol.9】
福岡県北東部の山間地域はもとは大陸の一部で古い地層で出来ています。
南の方には石灰岩のカルスト台地がありました。
今回は北の方を見に行ってみましょう。
場所の再確認
ちょっとだけ、おさらいです。
スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト)
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。
上図の③が北東部山間地域です。
今回は「北九州市」のとある地域を紹介します。
地形を見る
まずは地形図を見てみましょう。
図の中央よりやや北西を詳しく見ていきます。
北の方に水溜まりのようなものが見えますよね。
どうやらダム湖のようです。
沿岸西の地域は平坦地もあり、水田か畑のような雰囲気です。
また北にある山はゴツゴツしていて雄大さを感じますね。
ダム湖は河内貯水池、西の沿岸は河内という集落なのですね。
そして北の山は皿倉山と権現山です。
皿倉山には「ビジターセンター」なる施設もありますし、北九州市民の憩いの場なのでしょう。
さらにアップにしてみました。
このあたりの地形を見て、何か思い当たることはありませんか?
この図は先日紹介した新潟県佐渡市の南東沿岸部の地すべり地形です。
不規則な起伏が多く「乱れた地形」と言った印象を受けます。
一方、こちら河内地区周辺地域の地形は、ノッペリしていて穏やかな雰囲気を感じませんか?
さらに拡大です。上が地形だけ、下は国土地理院地図をかぶせてます。
山は丸っぽくなめらか。
谷は同じような方向に綺麗に並んでいますよね。
この地域はおそらく、土砂災害が少ない地域なのではないか?と思います。
もちろん長い年月の間に災害がゼロと言う訳はないと思います。
またこの地形図では目立たないような小さいスケールの山崩れはあるかも知れません。
でも「土砂災害の多い地域」と比べると、少なそうな雰囲気です。
なぜノッペリしてるのか?
地質図を見てみましょう。
何と、周辺部一帯が緑色一色ですね。
これは中生代白亜紀(約1億4千万~1億年前)の砂岩や泥岩で、湖に溜まってできた地層です。
本来、泥岩は地すべりになりやすい地層ですが、ここの場合は時代が古いため少し硬めだと考えられます。
また周辺には火山系の地質があるので、焼かれてさらに硬めになってると思われます。だから崩れにくい。
河内集落を挟んで南北に火山系地質があるので、そちらに近い方が硬めだと考えられます。
だから南北は山になっていて、河内集落のあたりは柔らかめで谷地形になっているのでしょう。
その上、地層の向きも関係ありそうです。
20万分の1地質図幅「福岡」:地質調査所より
ちょうど河内貯水池を貫くように赤い線が見えますよね。しかも赤線から離れる方向の矢印があります。
これは地層が圧力で曲げられた褶曲(しゅうきょく)という現象のうちの、背斜(はいしゃ)構造を示す記号です。
地層が曲げられて上が凸になっているという意味です。
図示してみましょう。
この方向で断面を切ります。
スーパー地形アプリの機能を用いて作成したものに筆者一部加筆
これは地質図を見ながら「こんな感じかな?」と描いてみたものなので、正確ではありません。あくまでイメージ図だと考えてください。
真ん中のやや平坦な場所が河内集落です。
地層の傾きは、このあたりを中心に、外側に向かって傾いています。
地形的に高い方向に傾いているので、これじゃ滑りにくいですよね。
以上のように色々な条件が重なり、大きな地すべりは発生しにくい地域だと考えられます。
そうなると地形は乱れにくく安定している。
安定してると、全体的に均等に雨水で削られます。
想像してみましょう。
硬い板チョコを、濡らしたハケで撫で続けたら、少しずつ融けて、なめらかで角がとれて丸っぽいカタチになりそうですよね?
そんな感じなのかも知れません。
なめらかまったり地形で癒される
ちなみに河内貯水池は太平洋戦争前に、工業用水確保のために官営八幡製鉄所が建設したダム湖だそうです。
現在は観光地として親しまれています。
では最後に、空中写真&3D画像をお見せします。
なめらか地形で癒されちゃってください(笑)
お読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
久保和也・松浦浩久・尾崎正紀・牧本 博・星住英夫・鎌田耕太郎・広島俊男(1993)20万分の1地質図幅「福岡」、地質調査所.