"地すべり地形"で頭の体操~その1~:埼玉県中西部平坦~中山間地域【災害から身を守るvol.34-1】
2回に分けて「地すべり地形判読の意義や面白さ」「地すべり地形について」と下地となる記事を投稿しての、満を持しての会になります!
自分に自分でプレッシャーかけてしまってどうする・・(;^_^A
下地記事はコチラ↓
今回の舞台は埼玉県中西部平坦~中山間地域(秩父市とその周辺地域)です。
場所を確認
久しぶりですので、再確認しましょう♬
埼玉県は東京の北隣にあります。
中西部平坦~中山間地域は上図の⑩です。
上図のように秩父市、小鹿野町、皆野町、横瀬町それぞれの一部地域です。
地すべり地形はどこだ?
ではさっそく見に行ってみましょう。
まずは中西部平坦~中山間地域の全域を見てみましょう。
地すべり地形は、この中のいたるところにあるわけではなく、ある特定の地域に集中していました。
もちろん他の場所にもいくつかありましたし、小規模なためにスーパー地形の解像度では見つけられないものもあるとは思います。
しかし私が見る限りでは、その地域には地すべり地形がかなりあります!
赤線で囲った地域です!
ここは尾根が平坦になっていますよね。それもそのハズ!ここは段丘堆積物の分布地域だからです。そしてこの段丘は秩父盆地内の段丘の中で一番古く、約50万年前のものです。
つまり長い年月の間に侵食が進み、わずかな平坦地が残っている状態です。そしてその侵食の1つの形態として、地すべりが関与してるのでしょう。
拡大しました。
実はこの地域の中でも、さらに特定の場所に集中しています。
地形を見て、何か気づきませんか?
そう!
平坦な尾根の南東側に地すべり地形が集中しています。
尾根の北西と南東を見比べると一目瞭然ですよね。南東の方が地形が細かく入り組んでいて凹凸が激しい。
一方、北西は綺麗に谷が発達しています。
国土地理院理系図をかぶせるとさらに驚きなのが、尾根の南東側の方が建物が多く、たくさんの人が住んでいるんです。
北端部をさらに拡大しました。
この画像の真ん中あたりに2つの地すべり地形がありますが、見えるでしょうか?
このうちの北東の小さい方の地すべり地形で判読の練習をしてみましょう。
下に私の判読結果を載せておりますので、しばらくはこの図とにらめっこしてみてください。
判読結果は?
北東の地すべり地形はシンプルですので、外周にグルッと線を引いて見ました。
頭部や側壁がハッキリしていますよね。
下部の側壁方向から、移動方向を矢印のように推定しています。
ただし黒点線で示すように地すべり地形内部に深い谷が発達していますので、この地すべりは既に侵食が進んだ晩年の地すべりと考えられます。
またこの地すべり地形内には建物がないため、もしかしたら以前に大きく動いた可能性があります。
地すべりは動ききったり、侵食が進むと動きにくくなるため、この地すべり地形は今後は活発に動く可能性は低いかもしれません。
上図の方向で断面を切ってみます。
地すべり特有の地形がいくつか見られます。
左に描いた赤矢印の部分は斜面の途中にピークがあり、このような地形を「分離小丘」と言います。
分離小丘は普通の地形ではまず見られず、活断層や地すべり、土砂崩れ等で形成されます。
また右の段差は地すべり末端部に見られる特徴です。
中腹部は凹凸が多く乱れており、地すべり内部に生じた亀裂の名残と考えられます。
以上のような特徴から、地すべり断面をこのように想定しました。
詳細は次回にお話しします。
お読みいただき、ありがとうございました。
参考文献
牧本 博・竹内圭史(1992) 寄居地域の地質.地域地質研究報告( 5 万分の 1 地質図幅),地質調査所,136p.