
とんでもない火砕流!!:北東部山間地域【都道府県シリーズvol.15熊本県part1】
熊本県は地形的な特徴から14の地域に区分されます(※私の個人的な見解です)。今回は北東部の山間地域の地質についてお話しします。
場所の再確認
下図の通り、熊本県北東部の①地域です。

スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト)
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。

この地域には上図に示した13の市町村が含まれます。
地形を見る
まずは地形を見ていきましょう。

阿蘇カルデラ、やっぱり目立ちますよね!

カルデラの内側も外側も割とノッペリしています。
外側は放射状に谷が出来ていますが、内部はツルツルな雰囲気です(笑)

でもアップにしてみると外側はけっこうザラザラしています。
周囲へ向かって緩やかに一様に傾斜しているのでノッペリに見えるだけで、実際には浸食による凹凸は沢山ありそうです。

一方、カルデラ内部は本当にノッペリしていますよね。特に北部はツルッツルです。


いやあ~雄大ですね。
そしてカルデラ内は街になっていますね。水田も沢山あります。
ちなみにカルデラということは、地下のマグマが噴出してできた空洞で陥没したものですよね。
ということは逆に言えば、これだけの量のマグマが噴出したということです。恐ろしいですよね。
地質は?
と言っても、見なくても予想できますよね(笑)
ほぼほぼ、阿蘇火山関係の地質でしょう。まぁでもせっかくなので見てみましょう。

まずはシームレス地質図V2です。
カルデラ内の紫や赤は火山岩類(溶岩など)です。そして内側や外側にある茶色も溶岩類です。
そして広い範囲で薄いピンク色があり、これは大規模火砕流堆積物です。もう名前に大規模がついてしまっています。恐ろしいです。
阿蘇山は4回も大規模火砕流を噴出しており、それぞれ阿蘇1、2、3、4と名付けられています。薄いピンクは阿蘇4で一番新しい(上にある)ので広い分布が見られるんですね。
またカルデラ内のクリーム色は約1万年前から現在にかけての河川やがけ崩れの堆積物。水色は同時代の湿地の堆積物などです。
またこれでは小さくて見えないんですが湖成堆積物もありますので、カルデラ内は湖だった時期があるのですね。
それが少しづつ干上がって湿地が出来たりしたのでしょうか?だからカルデラ内は起伏の少ないノッペリした地形なのでしょう。
とんでもない火砕流
ここからが本題です。
上でチラッと話した大規模火砕流、本当にとんでもないです。

20万分の1地質図幅「大分」(産業総合研究所より)に筆者一部加筆
ピンク色が阿蘇4火砕流です。小さくて見えないので赤丸つけましたが、火砕流はここまで達しているんです。
浸食されてしまってるので途切れ途切れですが、当時は東の海の方まで火砕流がやってきたということ。恐ろしいですよね。

20万分の1地質図幅「延岡」(地質調査所より)に筆者一部加筆
これは先ほどの南隣の地質図です。
宮崎県側にも赤丸の場所にまで火砕流が達しています。

20万分の1地質図幅「八代及び野母崎の一部」(産業総合研究所より)に筆者一部加筆
これは南西隣の八代市方面です。こちらでも海の近くにまで達しています。

20万分の1地質図幅「熊本」(産業総合研究所より)に筆者一部加筆
西隣の地質図では、有明海を挟んだ佐賀県にまで。

20万分の1地質図幅「中津」(産業総合研究所より)に筆者一部加筆
そして北はなんと、山口県まで!!!

地質図からの情報を総合すると、上図の赤丸まで火砕流が到達しています。
九州北部のほぼ全域です。
この火砕流は約9万年前の噴火によるもので、この時は幸いにも人類は住んでいなかったようです。
同規模の噴火が今起こってしまったら?と考えるとゾッとしますね。
今回は以上となります。
お読みいただき、ありがとうございました。
この地域の記事はコチラ👇
参考文献
星住英夫・斎藤 虞・水野清秀・宮崎一博・利光誠一・松本哲一・大野哲二・宮川歩夢(2015)20万分の1地質図幅「大分」、産業総合研究所.
星住英夫・尾崎正紀・宮崎一博・松浦浩久・利光誠一・宇都浩三・内海 茂・駒沢正夫・広島俊男(2004)20万分の1地質図幅「熊本」、産業総合研究所.
石塚吉浩・尾崎正紀・星住英夫・松浦浩久・宮崎一博・名和一成・実松健造・駒揮正夫(2009)20万分の1地質図幅「中津」、産業総合研究所.
寺岡易司・今井 功・奥村公男・須田芳朗・渡辺史郎(1981)20万分の1地質図幅「延岡」、地質調査所.
斎藤 員・宝田晋治・利光誠一・水野清秀・宮崎一博・星住英夫・演崎聡志・阪口圭一・大野哲二・村田泰章(2010)20万分の1地質図幅「八代及び野母崎の一部」、産業総合研究所.