扇状地の上に栄えた町:岩手県北東部山間・高山地域【災害から身を守るvol.14】
日本に災害が多い理由の1つとして、住みやすい土地が少ないことがあげられます。山が多く平地が少ない。
限られた平地は沿岸部や河川沿いの地域ですので、水害等に遭いやすい。
自然の恵みを受けながらも災害と背中合わせ・・。
今回はまさに災害とたたかいながら栄えたであろうと考えられる地域についてお話しします。
場所の確認
今回も岩手県北東部岩泉町の小本川沿いの地域です。
スーパー地形(カシミール3D)より抜粋した画像をもとに筆者作成。
なおカシミール3Dは元データとして国土地理院の「電子国土」を使っているそうです(出典:国土地理院ウェブサイト)
※トップ画像や以下の地形・地図画像すべて引用もとは同じです。
図中の赤丸より下流側で急カーブの蛇行が増えてきます。
扇状地の町はどこだ?
さて、では今回の主役となる地域を見てみましょう。
左側には前回紹介した栗畑がありますね。
この東にある大きな平坦地が今日の主役の地域です!
少しアップにしました。
国土地理院地形図をかぶせてみましょう。
二升石(にしょういし)と読むようです。
かなりたくさんの家がありますね。
2つの扇状地と小本川の対岸の段丘っぽい平坦面の3か所に集落があります。
昔であれば1つの村と言っても過言ではないくらいの規模ですよね。
残念ながら地域の歴史や地名の由来は分かりませんでしたが、「升」も「石」も米の量を表す単位ですよね。(※その場合、石は「ごく」ですが)
米がたくさん収穫できる土地なので、一升枡でちまちま量るのが面倒で、ワザワザ「二升の枡」をつくったという地域だったのでは?と、勝手に妄想してしまいました(笑)
平坦地やゆるやかな土地が多く水も豊富で、自然の恵みが豊かな土地だったのだろうと思います。
扇状地を詳しく見る
でも気になるのは扇状地の上に住んでいるということ。
扇状地は河川に流された土砂がたまってできた地形ですから、当然、大雨で増水すれば洪水になったり土石流の危険があります。
では、見てみましょう。
赤点線で囲った区域が扇状地であろう地域。二か所ありますね。
ただし沢は3つありますので、真ん中の沢の堆積物が両方に混ざっていると考えられます。
また南の沢が小さいわりに扇状地が大きいので、小本川の河川堆積物も含めてしまってるかもしれません。
こうやって見ると大雨の時には注意しなければいけないと思えます。
この地域は普段は自然豊かでとても良いところだろうと思います。
沢の水も綺麗でしょうし、普段はそこまでの水量がなく、地元の人は仮に「大雨で危ないから避難しましょう」と言われてもピンと来ない可能性もあります。
事実、被災した人たちは口々に「まさかこうなるなんて」と言いますから・・
では、これを見たらどう思うでしょうか?
3つの沢の流域を赤点線で囲ってみました。
南の沢は特に小さいですが、他2本の沢も、他の流域と比較して決して大きな水系とは言えません。
しかしそれでも地域の面積より大きい流域面積ですよね。
この流域に降った雨水が全部集まって流れて来ると思えば、印象は変わるのではないでしょうか?
特に東の沢は上流までまっすぐに伸びていますので、万が一上流で土石流が発生した場合、直撃を受けるおそれがあります。
加えて小本川の氾濫の危険もありますので、大雨時には早めに地域外へ避難することが得策かも知れません。
災害と背中合わせで生きる
日本では「地すべり・がけ崩れ・土石流」のおそれがある地域を「特別警戒区域(レッドゾーン)」または「警戒区域(イエローゾーン)」に指定するという法律があります。
これを設定するための調査が公共事業で行われていますが、個人の土地の場合、仮に指定地にされてしまうと地価が下落する・・つまり個人の財産を左右してしまう。
そのため役所の担当者たちは非常にナーバスになると聞きます。
実際、以前の広島の土石流災害ではそのような「忖度」が裏目に出たのでは?というニュースを見たことがあります。
確かに地価は下がるかもしれませんが、命には代えられません。
日本に住んでいれば、いつどこで被災してもおかしくありません。
今回紹介した地域だけが特別ではありません。日本には同じような地域は無数にあります。
大切なのは「事前に知っておく」「いざと言う時に逃げられるよう準備しておく」ことです。
これからも、助かるはずの命が助かるよう、私にできる範囲で情報発信していきたいです。
お読みいただき、ありがとうございました。