袈裟懸けに切る真っすぐ地形【都道府県シリーズ第2周:岐阜県 山県市編no.6】
都道府県ごとに地形・地質を見ていく「都道府県シリーズ」の2周目。
岐阜県山県市南部の谷中分水界はチャートの山地や濃尾平野の沈下など様々な要因で形成されたと想定されました。
※前回記事はコチラ👇
山県市の真ん中に注目
しばらく山県市南部に着目していたので、別の地域に目を移してみましょう。
山県市の中央部を見ると、まず段丘らしき平坦面が目につきます。
またその近くを通る谷地形がやけに真っすぐで目立ちますよね。
この谷地形、概ね西北西ー東南東方向に真っすぐ伸びていて、山県市の外にも続いています。
こんな感じです。
ただ真ん中の平坦地よりも西は真っすぐですが、東はウネウネと曲がっているのが気になりますね。
拡大して見ると、さらに気になる場所が見つかりました。
気になる場所 その1
1つは、山県市の西の地域です。
この真っすぐ谷が、西を流れる北北西ー南南東方向の河川と繋がっているように見えます。
しかもこの河川は比較的谷幅が広く、真っすぐ谷の支流には見えません。
つまり真っすぐ谷から西の河川へ流れているようにも見えます。
これっておかしいですよね。
真っすぐ谷は東の方が谷幅が広く、東が下流だと思われます。
にも関わらず、上流でほかの河川に合流するのはあり得ません。
こんな感じです。
河川が2方向に流れるなんて現実的にはまず考えにくいので、この真っすぐ谷は繋がっているようで繋がっていないのでしょう。
気になる場所 その2
もう1つは、山県市中央部の段丘平坦面の北東地域です。
上図赤点線の範囲です。
赤点線で囲った範囲の南西部に着目してください。
一見すると北東方向から武儀川に支流が合流しているように見えます。
しかし支流の上流域に目を向けると、谷幅は広くなり、他の河川と合流しています。
これも西と同様に、川が繋がっていないのでしょうか?
武儀川上流部を探る
まずは「気になる場所 その1」を検証します。
武儀川の上流域が別の川に合流しているように見えますが、おそらく上流で川が途切れているのではないか?と思われます。
拡大して詳しく見てみましょう。
赤枠で囲った範囲の拡大図から見ていきましょう。
ここから徐々に上流へ視点を移していきます。
武儀川流域の地形図です。
このあたりの谷幅は200~300m程度であり、段丘平坦面もあちこちに見られます。
やや上流です。この図の右下と先の「武儀川流域の地形図①」の左上が少し重なるので、見比べてみてください。位置関係が分かると思います。
この範囲でも武儀川の谷幅は200~300m程度ですが、やや狭い場所も一部に見られます。
さらに上流。
このあたりで谷幅はだいぶ狭くなり、100m未満になりました。
谷の方向もやや変わり、北西ー南東方向です。
あ!ここで途切れています。
谷の方向は同じですが、最上流部がすれ違うように屈曲しています。
拡大図です。
真ん中あたりに「尾並坂峠」があり、これが分水嶺になっていました。
上図のように、武儀川は北から流れ、東南東へ方向を変えて流れます。
一方、峠の向こうの板屋谷川は南から流下し、分水嶺付近で西北西へ向きを変えて流れ下っています。
これが広域で見た場合、西北西ー東南東方向の一本の谷に見えたのですね。
なお黒点線は市町村境です。
分水嶺だから、ここを境界にしたのでしょう。
ここまで武儀川の上流域を見てきましたが、真っすぐ谷の原因は、おそらく断層です。
実はこれまで見て来た地形図の中で、断層によると思われる地形が見えていました。
次回はそのあたりを詳しく見てみましょう。
お読みいただき、ありがとうございました。