堰き止められたのは、どの谷だ?: 謎のへっこみ地形があるよ♬part2【都道府県シリーズvol.10富山県part2 東部山間地域no.2-2】
富山県上市町のとある山間地域に見られる謎の凹地はおそらく、谷の堰き止めでできたと考えられます。ではどのように堰き止められたのか?
探っていきましょう。
前回記事は以下を参照ください👇
場所は?
では場所を再確認しましょう。
上市町は上図の着色された地域です。
東西に細長い上市町の南西端部に「へっこみ地形」があります。
流路を確認してみよう
凹地の出口であったろう谷地形がどれか?検証していきましょう。
この凹地に隣接する谷は4つあり、北東、北北西、西、南南東に位置しています。
図示してみると、こんな感じです。
緑色点線は急流で分水嶺は無く、水はそのまま凹地へ流れ込む地形になってます。そのため、この谷は凹地の原因となる堰き止めとは関係ないでしょう。
茶色は分水嶺はありますが、凹地のへりとの段差が小さいのが気にはなりますが、地形的に堰き止めた土砂の形跡は見られません。
一応、断面図を見てみましょう。
凹地から、このようなルートで切ってみます。
こうやって見ると分水嶺は明瞭です。
凹地の平坦部以外は不自然な地形は見られません(※谷の段差は少し気になりますが)。
以上より、西の谷(青点線)と南南東の谷(赤点線)に絞られます。
1つ1つ検証してみましょう。
西の谷はどんな感じ?
西の谷を詳しく見てみましょう。
西の谷の流路を水色で示しています。
これを見ると分かるように、赤点線で囲った上流部は明らかに地形が緩やかですよね。その下流と比べると谷のかたちが全く違います。
さらに見ると、赤点線のような分離小丘がいくつも見られます。
一般的に雨水による侵食は山頂から放射状に進むので、例えば凹地北西の山のように単独峰になているパターンが多いです。
そのため分離小丘は地質に大きく影響を受けている場合が多く、山体崩壊や地すべり等の、土砂崩れで形成されるものも多く見られます。
凹地と西の谷が「もともと1つの谷」だった場合、その原因となる崩壊は北西の急斜面で発生し、赤点線の分離小丘を生んだと想定されます。
でもその場合、南西(茶色点線)の分離小丘の成因は謎です。
次に西の谷の断面図を見てみましょう。
上図のルートで断面を切ってみます。
この断面図上で、凹地の一番低い標高400mから西の谷の同標高をつなぎました。最低でも、赤点線より上が崩壊で形成された山体と言うことになります。断面積で約3000m2です。しかしこれでは水平ですから、本当は赤点線は傾斜しているので、山体はもう少し大きくなりそうです。
では崩壊の方向で断面を切ってみましょう。
表示標高範囲が自動(アプリの機能)なので図の最低標高が420mになってしまっています。その都合上420mに赤点線を引きましたが、崩壊堆積物の底面は、あと20m程度は低いハズです。崩れる前の地形(茶色点線)を描いてみましたが、これは根拠なしの全くの想定です。しかし「あり得そう」な形状で目いっぱい大きく描いたつもりです。
それでも堆積物の方が断面積が大きく、不自然ですよね。
他にも不自然な面がありますが、続きは次回です!
以上、お読みいただき、ありがとうございました。