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スリもパチンコもなんでも同じ
この動画は、ロベール・ブレッソンの『スリ』(1958)の1シーンである。
女性がハンドバッグをわきに抱える瞬間に新聞紙とすり替えている。あざかな手口だ。
ただし、この手口はプロのマジシャンから演技指導を受けたのだそうで、現実のスリは、ここまであざやかではないだろう。
映画は「見せてナンボ」の世界なので、できるだけあざやかに見せなければならない。しかし現実のスリは見られたら終わりである。
どんなにあざやかでも気づかれれば終わりだし、どれほどぶざまでも相手に気づかれなければOKである。その意味で、本物のスリは、映画とは相いれない世界だと思える。
世界一有名なスリ
ところで、世界で一番有名なスリは、アポロ・ロビンスという人だそうだ。ただし犯罪者ではなく、ショーとしてのスリをやっている人なので、いわば「スリ風のマジシャン」である。
このロビンスが監修したのが、ウィル・スミスの『フォーカス』のスリの場面なのだそうで、見てみるとたしかにやり口が派手で、見世物っぽいところがある。
これと比較すれば、ブレッソンの『スリ』はより地味で、本当のスリっぽさが感じられて迫力がある。
犯罪者もチームを組む
ただし、どちらにも共通点があり、それはスッたらすぐに仲間に渡しているところである。
スリは現行犯が基本と言われる。盗品を長く手元に置いておくのは危険なのですぐに仲間にリレーしている。
スリに限らずだが、ある程度の経験を積んだ犯罪者はチームを組むようになるらしい。振り込め詐欺しかり窃盗グループしかりである。例外は、ゴルゴ13くらいだろう。
パチプロ集団
さて、パチプロは犯罪ではないけど、遊戯なので正業でもない。そんなパチプロの世界でも、チームを組んで稼いでいる人たちがいるそうで、中でも有名なのがパチプロ集団「エクセルジャパン」である。1000人規模の人を雇っているそうだ。
ぼくは、こういう怪しげな話が好物なので、あれこれ検索してしまうんだけど、「1000人雇っている」といっても、しょせん事業内容は
パチンコで遊ぶこと
なので、たぶん法人組織ではないと思う。検索してもどこにも法人だと書かれていない。個人事業主ですらないだろう。あくまで「組織的に遊んでいる」というだけだ。
会長の年収は12億とウワサされているけど、それでも組織的に遊んでいるだけなので税金は払っていないとおもわれる。ほんとに不思議な世界である。
稼ぎと仲間
さて、このエクセルジャパンのホームページにはこのように書かれていた。
パチプロ…個人では月収50万円が頭打ちです
そして孤独です
(中略)
組織化することにより金銭的な夢も青天井となりました
(中略)苦労も喜びも分かち合える仲間がいるというのは何物にも代え難いメリットです
つまり、チームを組めば「デカく稼げて+仲間ができる」と言っているわけだ。言っていることがビジネスと同じなので、感心してしまう。
どこでも同じ
なお、エクセルジャパンについてはいろいろ取りざたされているが、1000人単位の人たちをまとめ上げているのだから、そこそこちゃんとした組織みたいである。
まじめにやれる人でないと勤まらないみたいだし、がんばれる人なら出世するチャンスもあるらしい。
パチプロという一見怪しげな世界でも、結局のところ、ものになるのはがんばれる人らしい。このあたりはなんでも同じだなと思って感心してしまう。