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あげることが多いともらうことも多い

最近、実家の修理にいろいろとお金がかかっている。個人事業主との不定期なお金のやり取りが多く、スーパーのレジのようなさっぱりした感じにはならない。気持ちよく仕事をしてほしいから値切ったりはしないが、向こうも吹っ掛けてきたりもしない。そのあたりは信用を構築しているような面もあり、探り合っているような面もある。そういうお金のやり取りをややきゅうくつに感じることもある

佐藤勝氏の『いま生きる「資本論」』という本の中に「お金でないつながりも持っておいたほうがいい」という話が出てくるんだけど、こういうときに思い出すとなかなか味わい深い。そんなにややこしい話ではなくてちょっといい話だ。

この本は書下ろしではなく、新潮社主催の5回の講義を文字に起こしたものだ。つまり受講生とのやりとりが記されている。いま手元に本がないのでうろ覚えで書くが、ある受講生に対して

あなたの質問がいい。
自分のわからないことを率直に聞いてくる姿勢が私は好きです
この本は2冊持っているので1冊あなたにあげます

というようなことを言っていきなり受講生の一人に本をプレゼントしてしまう場面がある。アマゾンで注文できるような本ではなくて、神田の古書店を回らないと見つからないような本である。

ただし、この行動は決して発作的なものではなく、最終回講義に向けて伏線を敷いていたのだということがあとになってわかる。

最終回で佐藤氏は「資本主義を突き詰めるとお金だけでつながるようになる。そうではない関係、そうではない世界も意識的に持っておいたほうがいい。私は本はタダであげるしタダでもらうようにしている」という。そこまで読んで「ははぁ・・いきなり本をプレゼントしたのはそういうことだったのか」とわかる仕掛けだ。

佐藤優といえば本の鬼というくらいの読書家&蔵書家だ。ふつうは積読(つんどく)が増えていくものだが、佐藤氏は「蔵書にはぜんぶ目を通している」と言っていた。そういう人が本はタダで上げるしタダでもらう決まりにしているというのがなんだか味わい深い。

ぼくも本にかぎらずメルカリでチョコチョコ売るということはやっていない。どーせ大した額にはならないし手間もかかるので、あげたらよころびそうな人にあげる場合がおおい。ただし、売っている人に文句はない。

しかし、よくよく考えてみればもらうこともおおいのである。あげることが多いともらうことも多いのは不思議なことだ。なにかを買った後でそれと似たようなものをもらうパターンもしょっちゅうある。こんどオカムラチェアの「バロン」という椅子をもらったんだけど、去年思い切って「シルフィー」というのを買ったばかりである。それからZOOM用に買ったウェブカメラと同型のものをもらったのでだれかにあげる予定です。

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