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すてきな気づかいってなんだろう
人生生涯小僧のこころ
昨晩、ふとテレビを付けたらソフトバンク・ホークスの小久保監督の特集をやっていた。かれの書斎にカメラが入っていくシーンがあったんだけど、ドアを開けると大きな書棚があって、本がずらっと並んでいる。
しかし、なぜかど真ん中だけスペースが空いており、そこに1枚の色紙がこれみよがしに飾られていたのだった。色紙には
人生生涯小僧のこころ
と毛筆で書かれていた。これは塩沼亮潤大阿闍梨の座右の銘であり、ベストセラーとなった本のタイトルでもある。
色紙の横には、塩沼さんの本が数冊ならんでいたので、どうやら小久保監督は、塩沼さんの大ファンらしい。
塩沢くん!
また、これは塩沼大阿闍梨自身が、ある動画の中でおっしゃっていたのだが、ずいぶん前に菅原文太さんがパーソナリティを務めるラジオ番組に出演したことがあるのだそうだ。
文太さんが塩沼さんの大ファンということで呼ばれたらしいけど、緊張してスタジオに入ったところ、文太さんからは開口一番
君の大ファンなんだよ~!塩沢くん!
と言われたのだそうである。収録後、システム手帳の裏側に一筆、文太さんからサインをいただいたのだそうで、その手長は何十年も愛用しているのだという。
仁義
と書かれているのを番組で見せていた。そんなこんなで、スポーツ界の大物にも、芸能界の大物にも熱心な塩沼ファンがいるわけだ。
気づかいのできる人
さて、話は変わって、あるシンポジウムに塩沼さんが出ているのを動画で見た。シンポジウムなので後半に質疑応答があるんだけど、質問者の中には
空海の思想がどうたらこうたら・・
など気負ったことを聞く人もいる。塩沼さんはそういう質問に対してはおおむね
あんまり難しく考えなくてもいいんじゃないでしょうか
といった気さくな答え方をすることが多いが、中には
大阿闍梨が「この人ステキだな」って思うのはどういう人ですか
というド直球の質問をする人もおり、それに対して大阿闍梨は
気づかいのできる人ですね
と即答していた。「場面場面によっていろんな気づかいがあるけれども、すばらしい芸術的な気づかいというものを自分の肌で感じると、自分もマネをしてもっと素敵な気遣いができる人になりたいと思います」と答えていた。
これを聞いて以来、「塩沼さんが感じ入るような気づかいってどんなだろう?」ということをずーっと考えている。小久保監督やら文太さんやら、いろんな人に会ってきた塩沼大阿闍梨が感じ入る気づかってどんなのだろう、と。
どんな人にでも弱みがある
さて、そんなこんなで、今年の5月から塩沼さんが、家庭画報.comというところで、「くらしの塩かげん」という週1の連載をしている。
その第5回に「母ちゃんから教わったこと。」というのがあって、こう書かれていた。
どんな人にでも弱みがあるし、心の痛みや苦しみがある。そんな弱みや痛みを察しなさい。これは私が私の母から言われた、今にして思えば「教え」のようなことです。
「どんな人にでも」というところに、ハッとさせられる。どんな人にでも、ということは、弱い人はもちろん強い人にも、ということだ。
さて、ぼく自身は、人並みの気づかいはしているつもりだが、もともとがアンダードッグのような立場で生きているので、とくに気づかいが求められる立場にない。
アンダードッグとは、負け犬、噛ませ犬くらいの意味だが、自己卑下しているつもりはなくて、こないだ久しぶりに映画『ロッキー』を見たところ、ロッキーがアポロと戦う前に
おれはアンダードッグだから・・
と言っていたのが、やけにカッコ良かったので、マネをしてみただけである。
弱者の強さ
それはともかく、ぼくがアンダードッグ的に生きているのは事実で、つまりたえず挑戦者的な人生を生きているので、そうするとあまり相手に気を使わないで済むわけですね。
ロッキーがアポロに気づかいをするなんてことはいらないでしょう。弱い側は負けても失うものがないのだから、何も考えないでぶつかっていけばいいだけだ。
好きな時に倒れることができるし、好きな時に泣ける。好きな時に腹が減ったと言い、すきなときに文句を言える。こういう生き方をしていると、さまざまなものを背負っている人の辛さについての想像力が足りてないかもしれない。
強者の弱さ
一方、王者の側はいくら努力しても「勝って当たり前」と言われるし、負けたらサプライズなどと言われてしまうので、本当に大変なのはアポロの側かもしれない。
塩沼さんは若い頃から大阿闍梨と呼ばれ、いわば王者の扱いをされてきた人だ。超人的な修行をやってきたのだからそれが当然だとしても、じっさいは超人ではない。
弱みも苦しみもあるのだろうが、好きな時に倒れていい立場にいない。泣きたいときでも、泣きながら寄ってくる信者を受け止めなければいけない。
彼にかぎらずだが、強さを求められる立場の人ならではの、人に言えない苦しい部分はきっとあるだろう。
そういう強者の持つ弱さを、さりげなくサポートをしてくれる気づかいが、もしかしたら塩沼さんの感じる「ステキな気づかい」のひとつなのかもしれないと思う。
気分はロッキー
まあ実際、ぼくはこうしてSNSに何かを書いている時も、気分はロッキーなわけですよ。
どうせ倒されるだけの存在なので、何も考えずにぶつかっていけばいい、と思うだけである。
でも、そうやって弱者を装いつつ、強い人を傷つけてしまったことも、これまであったんだろうなあ。そもそもSNSの誹謗中傷って、そういうもんだし・・。
誹謗中傷をやっている人も、たぶん一人ひとりはロッキーのつもりなのだろう。巨大な権力にぶつかっているつもりなのだろう。でも、ロッキーが束になると「強い者いじめ」になってしまうのである。
ぼくもいい年なので、そろそろ「アポロのツラさを想像できるロッキー」になりたいものだ。