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タランティーノの「好きな映画20」
映画好きの人から、その人の好きな映画のリストを聴くのは楽しい。読書好きの本棚を見せてもらうのと似ていて、その人のことがいろいろわかるのがおもしろい。
同じように、ゲーム好きの人から好きなゲームを挙げてもらうのも楽しいし、海原雄山みたいな人(「美味しんぼ」のキャラクター)からベスト料理を挙げてもらうのもきっと楽しいだろう。
鉄道ファンから好きな駅名を聞くのもいいし、あるいはパチンコマニアから、好きな台を上げてもらうのも楽しい。ぼくはパチは一切やらないので、聞いてもよくわからないにもかかわらず、おもしろいのである。
その人の狂気が現れる
「フェイバリット○○」をあげてもらうのは、その人の情熱の入れ具合や生き方の「狂気」みたいなものが反映されているところが楽しいのであり、作品の評価に関わるようなことではない。
なので、その人がほんとうに熱を入れているジャンルについて聞くのが楽しいと思う。
たとえば、ぼくはゲームはやるけど、ライトゲーマーであり、それほど情熱を傾けているわけではないので、好きなゲームを聞かれてもそれほど気ちがいじみたことは答えられないし、おもしろみのないものになりそうだ。
だからといって、ライトゲーマーが悪いとは思わず、自分がライトゲーマーであることになんの引け目も感じていない。映画も同じで、ライトな映画ファンよりマニアのほうがエラいなどということはないのはもちろんだ。
ただしリストを挙げる際には、ニアの方が「気ちがい度」が高いので見ていておもしろいのである。
タランティーノのベスト20
ゲームはともかく、映画に関しては入れあげてきたので、好きな映画リストを聞かれたら、かなりクセの強い、キチガイらしいことを言えるだろう。そして、他の映画マニアのリストも、その人の狂気が出ているものがおもしろく感じられる。
さて、タランティーノが、「1992~2009年のベスト映画20」を挙げている動画を見たんだけど、
こいつ確実に狂ってるな・・
というのが伝わってきておもしろかった。自分でいうのもなんだが、ぼくから「きちがい認定」されるというのはそうとうなものだと思う。
たとえば、ジャッキーチェンの『ポリスストーリー3』が挙げられているが、ぼくも1作目のポリスストーリーは結構好きだけど、2作目も3作目も見ていない。
1作目も好きではあるけど、ベスト20にいれようと思うほどのものではなくて、高校時代の記憶とセットでいい思い出になっているのにすぎない。
しかし、タランティーノによれば「ポリスストーリー3」は、バスター・キートンからはじまるあらゆるスタントの歴史の中でベストの出来なのだそうだ。
そこまで言われたらなるべく早い機会に見ようとは思うけど、とはいえ、彼のほめ方は、ぼくが「13日の金曜日」シリーズの中で4作目の「完結編」だけをやたら推すのと似ている感じもあり、自分を棚に上げてアレなのだが、「こいつちょっとイカれているな」とおもわざるを得ない。
まあ、ブレない物差しみたいなものがあるのはわかるし、その物差しが、他の誰とも共感できないいびつな物差しになっているのだろう。
かといって、タランティーノがやたらマニアックな作品ばかり挙げているかというととそうでもないのだ。たとえば『マトリックス』1作目がリストに入っているが、2と3は酷評している。
こういう常識的なことを言う一方で、ポリスストーリーの「3」だけを激賞しているあたりが、やはり「イカれている」とおもわざるを得ないところだ。
キアヌ・リーヴスが「10代の子どもに勧めたい18作品」を挙げた際にも『死霊のはらわた』が入っていたので、「こいつもかなりイカれている」と思ったけど、タランティーノのベスト20を見ていても、つくづく人間は大なり小なりとイカれた存在だと感じる。