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炎上商法にはつきあわない

かつて映画の全盛期、銀幕のスターと呼ばれるような人たちはめったなことで私生活をオモテに出さなかった。それをほじくるのが芸能記者とよばれるひとたちの仕事だった。

それはテレビの時代が来ても基本的には変わらなかった。

タレントさんの正業は映画やドラマやバラエティー番組でいい仕事をすることであり、スキャンダルで取りざたされるのは迷惑で恥ずかしいことだとされていた。

しかし、ブログが普及したころから、この風潮に変化が現れたと思う。わざと不適切な発言をしてさわぎをおこし、その勢いを利用して宣伝するというやり方が生まれた。炎上商法とか、炎上マーケティングと呼ばれる。

「悪い噂は良い噂よりも広まりやすい」という人間の負の感情を利用したやりかただ。火事場に人が集まるように、もめごとの周囲にも人は集まりやすいので、それを逆手に取ると、セルフ・ワイドショーみたいなことをやれてしまう。

たとえば、AKBの総選挙も、ある意味セルフワイドショーである。グループ内のポジション争いは本来なら楽屋でやればいいことだけど、それをエンターテイメントにかえた。

ただし、AKBは「負の感情」ではなくて、前向きな感情を売っている。だから、セルフワイドショーというよりも「セルフ情熱大陸」と呼んだほうがいいかもしれない。

要するに「セルフ」がポイントだ。

セルフ的なものは昔からあった。たとえばプロレスである。覆面レスラーは、べつに事情があって顔を隠しているのではない。勝手にかぶっているだけなので脱ぎたければ勝手に脱げばいいんだけど、「負けたらマスクを脱ぐ」などともったいをつけて試合の注目度を上げる。

これは、銀幕のスターが私生活を隠していたやり方を逆手に取ったものだといえる。もしも高倉健さんが、「新作映画の興行成績が〇億円に到達しなければ、ぼくの自宅の住所と家族の顔写真をネットにさらします!」といって映画の宣伝をしたら、それは覆面レスラーのデスマッチとおなじである。

そしてYouTubeの時代には有名人だけでなく、「失うものは何もない」という一般人までが、このやり方で知名度を上げることができるようになった。

極端に言えば、以下のようなやり方が考えられる。

①ネットで自殺予告をする。
②自撮りカメラを装着してスカイツリーのてっぺんによじのぼる
③警察の説得を受けて24時間後に降りてくる
④撮影した映像をYouTubeチャンネルで流す

いわば「セルフ警察24時」である。削除されてしまうだろうけど知名度は上がる。まともな社会人なら会社をクビになるだろうが、「失うものは何もない」という人はこれでひとかせぎできる。

しかも、いまはそうやって汚名を上げておいてからロンダリング(洗浄)できるようになった。てっとりばやいのは、選挙に出ることだ。上の自殺未遂の人は、

⑤官僚を腐敗を叫びつつ、N国党から参院選に立候補する。

これで汚名をクリーンにできる。

最近の選挙を見ていると、この手の「汚名ロンダリング」がさかんに行われているように見える。みなさん気づいているのだろうけど、ぼくは最近まで気づかなかったので、アタマを整理するために書いてみました。

スキャンダルが好きな人はそういうのを楽しめばいいが、ぼくは、善意を利用されるようでなんだかイヤである。

そういう人がもめごとをおこすたびに反応してしまうと、それは炎上商法を助けることになるので、それに気づいてからは、ヤフーニュースもYouTubeも、炎上狙いの人の記事をクリックをすることは一切やめました。

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