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2022年にこそ見るべき『ダイ・ハード ラスト・デイ』(ネタバレあり)

昨晩「A Gooo Day to Die Hard」(2013)という映画を見たんだけど、日本では『ダイ・ハード ラスト・デイ』というタイトルで出ているそうだ(北米版を見ました)。これは「ダイハード」シリーズの第5作で最終作品にあたる。そして

2022年にこそ見るべき映画だ

と確信したのでこの記事を書いている。(なお、ネタバレあります。そのポイントに来たらもう一度警告します)。

なぜ今こそ見るべきなのか?

過去記事ですでに書いたので繰り返さないけど、ぼくは「ダイハード1~3」までは90年代に繰り返し見た。

劇場で平均4回ずつくらい見ており、さらにLDやDVDでも見ており、そのうえで去年マイクロソフトのセールで調子に乗って「Die Hard1-5」セットというのを買ってしまったのでしょうこりもなくまた見ているんだけど、そうはいっても「4」と「5」は見たことなかった。

2000年代に入って公開された「4」と2013年の「5」は、「いまさらダイハードでもないだろう」という感じでスルーしていた。

ならば、なぜいま見たかというと単にセット買いしたので仕方なく見ただけです。セットでなければ「4」も「5」も見ることはなかったと思うけど、儲けもので、一昨日に「4」を見たらやたらおもしろいのだ。

ブルース・ウィリスの魅力を再確認させられた。あのお下劣で小物っぽい感じはボンドには出せないし、ハリウッドでもブルースにしか出せないだろう。

それで、調子に乗って昨晩「5」を見たんだけど、今回マクレーン刑事はロシアへ飛ぶ。そして、どうやらウクライナとチェルノブイリに絡んだ話になってくるのだ。

でも、ぼくはウクライナ関連だとわかった時点で警戒意識が発動し、イヤな気分になった。

どうせプロパガンダが入ってるんだろ?

おもわず身構えてしまうのだが、それでもブルースの下品な魅力と派手なアクションだけを楽しむつもりで見続けた。そして、途中まではあいもかわらずというか、ロシアが悪の帝国のごとくに描かれる。

そして、ウクライナの抵抗組織のリーダーがニセの容疑でロシア当局にタイホされ、裁判になり、それをCIAが救出するという

へそで茶がわきそうな

展開になっていくのだが、そこから面白くなるのだ。

★さて、ここからネタバレです★

『ダイハード』シリーズを見ている人ならわかると思うんだけど、犯人像には毎回共通するパターンがある。

最初、犯人グループはいかにも軍事政権に抵抗する反政府ゲリラのように見せかけてくるんだけど、政治は見せかけにすぎないことがしだいにわかってくる。じっさいは

金目当てのドロボー

なのだ。そして「たまたま現場に居合わせた」休暇中のNY市警のブルースウィリスだけが、

単なるドロボーのにおい

をいちはやく感じ取り、政治を無視して「デカの仕事」をゴリゴリやるという展開になっていく。だから、本作もそういう風になっていく。

今作も、出だしは、ゼレンスキーのようないかにも正義ヅラしたウクライナのリーダーがロシアにタイホされ、抵抗している風に描かれているんだけど、こいつがだんだんと

カネ目当てのドロボーのにおい

を発してくるんだな。これにはCIAも一杯食わされるんだけど、休暇でロシア旅行中のマクレーン刑事だけがいちはやく「こいつにおうぞ」となるわけだ。

やがて、このウクライナ人リーダーがカネ目当てで軍事用ウラニウムを精製しようとして失敗したのがチェルノブイリ事故だった、ということが明らかになってくる。

簡単に言うと、ダイハード第5作は

ゼレンスキーは薄汚いドロボーだった

みたいな話なのである。

こういう筋書きは、2014年のクリミア併合のあとはまず無理だっただろう。ウクライナ人を犯人にしてギッタンギッタンにやっつけるという話はまずやれない。

でもこの作品は直前の2013年に公開された。1年ちがっただけで、ブルース・ウィリスとウクライナ人が戦う筋書きになっているあたりがじつに不思議で、なんだかんだ言ってアメリカは

制御不能な自由の国

なんだよなーといつもながら感心してしまう。ホントに不思議な国だよ。なんなら

2013年の怪奇現象

と呼んでいいくらいだ。

アメリカにはどうしようもないほどの因業な悪がある一方で、制御不能な自由もあって一瞬で入れ替わる。

レーガンはイラクのフセイン政権をせっせと支援したのに、そのあとブッシュ親子が「正義の戦い」と称してギッタンギッタンにやっつけるんだから。

というわけで、アメリカンヒーローがウクライナ人をギッタンギッタンにやっつける『ダイ・ハード ラスト・デイ』は「アメリカの自由と正義」というものをインチキくさく感じつつ、それでも魅力を感じてしまう自分を、インチキくさいブルースウィリスがたっぷりと楽しませてくれる。2022年の今こそ味わい深い作品だった。


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