投資リターンの見当をつけるため、S&P500過去推移を評価する
2023/12/23データの理解に誤りがあったため関係する箇所を追記・修正しています。
※以下、2023/12/23追記
S&P500のデータを配当込みとみなして分析していましたが、実際は配当控除後のデータでした。実際のパフォーマンスは配当分だけ向上します(およそ年率2%)。対象としたデータについては「備忘録:分析対象データについて」の項にて。
※追記ここまで
「どの程度のリターンを期待して長期投資を設計すべきか?」
ファイナンシャルプランニングや非課税枠の活用プランにおいて、長期投資資産に対してどの程度のリターンを期待することが妥当であろうか?
その見当をつける目的で、インデックス投資の代表格であるS&P500の過去リターンを評価してみる。
まずは結論から
・ここ40年近くの実績としては年率リターンはおよそ8%程度
よく言われる年率4%程度のリターンは保守的な見積もりと言える
S&P500 月次推移(1984年までは年次)
よく見るグラフ すばらしい 長期で持つならいつ買っても良い
※2023/12/22追記:上記のグラフは配当控除後のS&P500(SPX)の値 配当込みならばさらにパフォーマンスが良い
年率リターン推移
1985年以降の月次データから、年率リターン、5年/10年リターンの推移をグラフ化
以下、左軸はS&P500の値($)、右軸は年率換算リターン(%)
単年リターンは-40%(リーマンショック)から+40%まで大きくブレているが、5年/10年のスパンで見れば相対的に落ち着いた推移となる。
※以下、2023/12/23追記・修正
配当込みのデータとしてSPYのデータをグラフ化しておく。SPYの値は、1993/2末時点のS&P500(SPX)のデータを基準として補正している。
次に、10年リターン(年率)にフォーカスしてみる。
※追記・修正ここまで
今回は、プラス面でもマイナス面でも単年リターンのブレの影響を抑制し、将来的なリターンに対して参考になる値として10年リターンの平均値を採り上げている。
長期投資プランにおいて年率4%という数字がよく使われているが、過去の実績としては8%程度とみても大げさな数字ではないということになる。
最後に、積立投資によるリスク低減効果を確認してみたい。
ある時点から、毎月定額を5年間(60ヵ月)継続投資し、投資開始から10年後のリターンを年率換算でプロットした。例えば、2008年から5年間投資した場合のさらに5年後のリターンは2018年に年率9%程度としてプロットされる。この5年という短期の積立によっても一括投資に比べるとマイナスリターンとなる期間が短縮されている効果を確認できる。
実践的にはさらに長い投資期間によって、よりリスクが低減されることが期待できる。
分析の主題はここまで。以下は備忘録。(情報元・分析対象データ、さらに検討してみたいこと)
備忘録:分析対象データについて
例によって yahoo.com から、今回は月次データを取得。
https://finance.yahoo.com/quote/%5EGSPC
こちらが生のインデックスデータだと思われるがhistorical dataが直にダウンロードできないため、オプション値のデータを取得するhttps://finance.yahoo.com/quote/%5ESPX
生のインデックス値では無いが乖離率は低いものと考えられ、今回の目的(長期リターンの評価)においてはインデックス値と同等とみなせると判断できる。
S&P500をターゲットとするメジャーなETFであるSPYには運用コストの影響が含まれている。が、近年ではそのコストはとても低い(~0.1%/年)ため、長期リターンの評価という目的においてはSPYのhistorical dataを用いてもかまわない。
スタンダード&プアーズ社のサイトには
S&P500の算出は1957/3/4から開始、基準日1928/1/3
とあるが、日本語Wikipediaのページには算出開始は同じく1957/3/4とされているが「1941年から1943年における平均指数を10」とあり、基準値については記載が異なる。ただし、yahoo.comのサイトからはSPXの1984年以前のhistorical dataは取得できず、それ以前のデータとしてはwikipediaからの年次データを使用することとした。
※以下、2023/12/23追記
今回使用したSPXのデータには、配当は含まれていない。直接的に配当を含むデータを取得することができなかったため、配当込みのデータとしてはSPYのデータを使用した。S&P500(SPX)に対して、配当込み・経費控除後のデータとなり、1993年以降においてSPXに対して年率でおよそ2%ほどリターンが上回っている。
※追記ここまで
今後の検討:GAFAM(+NT)の影響は大きすぎる?
リーマンショック後の米国株式市場の成長においてはGAFAMの占める割合が非常に大きい。(参考: ひふみの記事 ITmediaの記事 )
今後GAFAMの大きな成長が今までのようには継続しない可能性を考慮するならば、これから将来のリターン期待値を評価する目的ではS&P500に代えてGAFAMの影響がより低いインデックス等を参考にするほうがより適切と考えられるかもしれない。
例えば、世界株式インデックス(MSCI ACWI)。
こちらも全体の6割は米国株であり、10%程度はGAFAMの影響が及ぶが、S&P500に比べれば6割程度に軽減されている、とも言える。
この点についてはMSCI ACWIなのかそのほかの指標を用いるのか、あらためて検討・評価・試算などしてみたい。