今年最大の学び
もうずいぶん前の話になるが「うつ病九段」という本が発売され興味深く読んだ。
先崎先生の文章のファンであるのは勿論だが、長く精神科領域の薬の開発に関わった自分としてはどうしても気になる話題だったからだ。
内容は素晴らしいレビューが溢れているのでそちらに譲るとして、印象に残るのは、多忙な中、少なくとも本人は「ある日突然発症した」と感じている点だろう。
多少の不調は感じたとしてもまさか自分が、とその日が来るまで体からの悲鳴に耳を貸さない。
責任感が強く、仕事をバリバリこなし、「まさかあの人が?」と周りから思われる人がある日体調を崩す。
専門書などにもよく出てくる教科書通りの事例、自分は仕事柄患者さんのカルテを見る機会もあったが、他人から見れば「体調を崩すことは時間の問題」なのに本人は気付かない。
生意気にも「なぜ周りはフォローしてあげないんだ?」などと考えていた。
こんなことを書いたのは、この年末自分も、もしかしたらその状態に陥っていたのかも知れないと思ったからだ。
今年の夏頃から退職する方がふえ、仕事量が一気に増えた。
通常1つ1つがかなり大きなプロジェクトと言うこともあり、1人1プロジェクトと言う暗黙のルールがあるが、それを2つ抱えていた。
グローバルで時差もある中での仕事になるので、朝6時頃から仕事が始まり、夜12時過ぎまで業務を続ける。
夜の寝つきは悪く、ご飯も美味しくない、通常こういったケースは食事量が減る様だが自分は逆に増えた、でも体重は増えない、というか減っていった。
妻は、「仕事を減らしてもらえば?」
と言っていた。
「この環境ブラックじゃない?」とも
でもインターネット上にはもっと過酷な労働条件の話もあるので、しんどいなと思いながらも、「言うほどひどい環境ではないよ」と取り合わなかった。
なんだかんだで「仕事を減らしてください」と言うことが、「自分に能力がない」、「期待に応えられない」に繋がるような気がして言い出せなかったのだと思う。
10月にさらにプロジェクトが追加になった。
最初は3人分以上の仕事を一人でこなしていると密かに自惚れていた。
会議の合間に業務を行い、自分のことは後回し、スケジューラーの空いている時間には気が付けば予定を入れられ、残務を休日勤務で補う。
代休がどんどん発生するも、それが消化できない、いはんや有給をや。
この段階でもまだ危機感は薄かった。
趣味のチェスもやれてるし大丈夫さ、ほらレートだって上がってるじゃないか。
11月入ると、先輩から心配される様になった。目は充血し、うまくいかないことばかりでため息が多く、なんとなく集中力がない。イライラする。
12月に入り、その先輩から、そして妻から、「今他人から見て如何に危険な状態だと思うか」真剣に話をされた。
先輩からはダイレクトに仕事を減らそうと提案された。
そうなんだ、「自分にはこの仕事量は無理なんだ、毎日楽しくないんだ」
本当はわかっていたのに、ようやく認めることができたよ‥ありがとう。
そして今、ひさしぶりに連休をとり、この記事を書いている。
会議を気にせず、朝ゆっくり寝て、体調が回復してくると、今まで如何に自分が不調だったかがわかってきた。
メールは相変わらず沢山くるけど、もういいや休みだし、無視しておこう。
誰かやるでしょう。
ネットを見ると、必ずしも周りに助けてもらえるケースばかりではない。
そして不幸にも体調を崩してしまう方もいる。
その意味では自分はラッキーだったのだと思う。
ゆっくり、マイペース。
来年は自分の心に正直に‥