母親に似た女性に惹かれてしまう
にゃりぺよにとって、母親がゆる~くであるものの毒親であることは人生の傷でした。
どれだけ勉強やバイトや演劇を頑張って褒められても、母親に認められなかったにゃりぺよは根っこが腐っているのです。
いつからか、にゃりぺよは母親に似ている女性が好きになりました。
母親に顔が似ていても、優しい女性ならにゃりぺよを癒してくれると思ったのです。
にゃりぺよは男が大嫌いですが、女性が好きなわけではありません。
それでも母親に似た女性を見かけると、恋に落ちたような感覚になりました。
色白で、肩より上で切り揃えた黒髪がツヤツヤで、猫のような目の華奢な女性です。
そういう女性を守ってあげたくなると感じるのは、母親を見ている男どもと同じ思考だったのでしょう。
初めてこの性癖に気づいたのは、高校にあがったばかりのころでした。
入学式を終えたあと、にゃりぺよは校内で1人の先輩とすれ違います。
先輩はまさしく上記の条件に当てはまる女性でした。
そのときは自分の気持ちが理解できず、声すらかけられませんでした。
後日、にゃりぺよは図書室で先輩を見つけました。
そして声をかけますが、先輩は戸惑った様子で、にゃりぺよと話してくれるまでには時間がかかりました。
にゃりぺよは確かに、恋愛の相手として先輩を見ていました。
しかし先輩には彼氏がいて、にゃりぺよのことを好きになるはずがありません。
ある日、にゃりぺよは先輩のハサミを盗みました。
先輩が手に入らなくて、先輩がいつも使っているハサミだけでもと思ってしまったのです。
翌日、にゃりぺよはバス停で先輩が来るのを待ちました。
ハサミを返して謝罪しようと思ったのですが…。
先輩はハサミを見て「なくしたと思ってた、ありがとう!」と言いました。
にゃりぺよはそれ以上何も言えず、先輩とかかわることもやめました。
時を経て、にゃりぺよは新卒として会社に勤めました。
そのとき、同期に母親に似た女性がいることに気づいたのです。
優秀で笑顔がすてきで、よく先輩社員たちに褒められていた彼女。
誰にでも優しい彼女は、中身は母親とまるで違いました。
その後、にゃりぺよは彼女とは違う支店に配属されてしまい…。
2年後、彼女が凄惨ないじめの末に精神病になり、部屋から一歩も出られず会社を辞めたと聞きました。
にゃりぺよは密かに思いを寄せていた相手の不幸な結末を知り、頭がおかしくなるようでした。
それ以来、新人いじめをするパートのおばさんにはきつく当たり散らしました。
そしてすぐに、行く当てもないのに会社を辞めました。
にゃりぺよは24歳ころまで母親の幻影を追って泣くことを繰り返していたのです。