明日には死ねますように
母親のことが大嫌いになり、何の未練もなく地元を出ることにしたにゃりぺよ。
「大学生になれば大人も同然、全部大丈夫になる!」と思っていました。
母親はにゃりぺよがいなくなると知って、毎日暗い顔をしていました。
そして「お母さん、にゃりぺよに隠れて毎晩泣いてるの」と隠さず言ってきました。
にゃりぺよは一刻も早く地元を離れたくて、少ない荷物で飛び出しました。
そして生活費を稼ぐため、初めてのバイトを掛け持ちして働き始めたのです。
さらにその時期、にゃりぺよは人を募って劇団を立ち上げていて…。
大学の講義の合間に勉強をし、夜はバイト、朝まで劇団での活動をして電車で眠る生活が始まりました。
母親からは、すぐLINEに反応するよう言われていました。
にゃりぺよはなんだか…束縛の激しい女みたいだなと思って、気づいたときに連絡を返すようにしていました。
そんなある日、一人暮らしをするにゃりぺよの家に手紙が届きました。
父からの手紙でした。
そこには10万円と、分厚くなった便せんが。
バイトを終えたにゃりぺよは、窓際に座って手紙を読み始めました。
そこに書き連ねられていたのは、父から母親への恨みつらみでした。
母親との話し合いの末離婚することになり、にゃりぺよと離れ離れになった父。
当時から気づいていましたが、この離婚に際して父が悪かったかと言えばそうではありません。
もちろん母親のことも責められませんが…。
父は家族が崩壊して、母親のことを大嫌いに思っていました。
にゃりぺよには、母親のように自分勝手で無責任で、自覚のない人にはなってほしくないと願っていました。
にゃりぺよは、母親とは違う父のことが大好きでした。
離婚しても経済的に支えてくれる父のことを尊敬していました。
そんな父の綴る罵倒の言葉にひどく動揺しました。
気づけば空が白んで、にゃりぺよは項垂れていました。
目から鼻から口から、臓器が全部出て死んでしまいそうな気持ちでした。
にゃりぺよはシャワーも浴びずに布団にもぐり、布団の中でずっと目を開けていました。
そして願うように両手を組み「早く死ねますように」と繰り返し呟きました。
その後、にゃりぺよは普通に大学へ行って、普通にバイトへ行きました。
あまり上手くは笑えず、劇団の活動には参加できませんでした。
それから、にゃりぺよは自宅とは関係ない千歳烏山駅にいました。
千歳烏山駅を通過する特急はかなり早く、一瞬で死ねると聞いたのです。
情けなくも、ホームに座り込んでいくつもの特急を見送りました。
その間ずっと「あの人のようにならないで」という父の言葉を反芻していました。
そのころのにゃりぺよは、母親と見た目がそっくりだったのです。