謝らない大人
にゃりぺよの高校最後の大会は高文連でした。
にゃりぺよたちは全国へ行くつもりで稽古をしていました。
当然母親は大会を見に来ませんでした。
しかしにゃりぺよにとってはもはやどうでもいいことです。
にゃりぺよたちはその日、すべてを出し切るつもりで舞台に立ちました。
そして観客や審査員からの得票数は1位だったのですが…。
実際に全国へ行くことになったのは、にゃりぺよたちよりも得票数の低い市立の高校でした。
高文連ではこういったことがままあるようですね。
にゃりぺよたちは当然子どもなので、大人の事情を理解できません。
後日講評をもらうとき、審査員だったおじさんは悔しそうな顔で「君たちの舞台はとてもよかったです」と言ってくれました。
あんなに頑張って、結果は数字で出たのに。
にゃりぺよたちは大きなショックを受け、解散しました。
その日の夜、家に帰ったにゃりぺよは母親に「ダメだった」と言いました。
母親は「何が?高文連?ふーん」と言いました。
「納得できない、にゃりぺよたちは得票数一番高かったんだよ、内容もよかったはずなのに」と泣きながら話すにゃりぺよ。
母親はメイクを落としながら「いや、そういうもんでしょ」と面倒臭そうにあしらいました。
にゃりぺよはやっと、バカみたいだなと気づきました。
にゃりぺよは、慰めの言葉が欲しかったのです。
これまで高文連にすべてを注ごうと、仲間で頑張ってきました。
勉強は疎かにせず、でも稽古の時間を増やして頑張ってきました。
それが、一番大きい拍手をもらっても全国は叶わなかった。
にゃりぺよはわかっているつもりでした。
審査員の表情からも、にゃりぺよたちは正しく評価されていた。
でも全国へ行く高校は、大会の前から決まっていたのです。
仕方のないことを、一番近くで見てくれていた母親には「頑張ったのにね」と言ってほしかった。
でもにゃりぺよは、そもそも母親は見ていなかったじゃないかと気づいたのです。
気づけばにゃりぺよは「何もわからないくせに、もう二度とこの件に口出すな」と言っていました。
これまで母親に気持ちを伝えたことはなかったので、初めての反抗です。
その夜はとても母親と顔を合わせる気になりませんでした。
母親が寝た後、こっそり風呂に入って自室に戻りました。
翌日、母親は「にゃりぺよちゃん」と諭すような顔で声をかけてきました。
そして「お母さんはね、にゃりぺよちゃんのために言ったの。大人の事情でうまくいかないなんて、仕方ないことなの。にゃりぺよちゃんは子どもだからお母さんの優しさがわからなかったかもしれないけど、そのせいでお母さんは傷ついたのよ。にゃりぺよちゃんのためを思って言ったのに、恩を仇で返すなんて…」と。
思えば母親は、これまで一度もにゃりぺよに謝罪をしませんでした。
親子の喧嘩といえばにゃりぺよが悪いことがほとんどだったように思えますが、母親は自分が悪い場合でも謝りません。
必ず「お母さんはにゃりぺよちゃんのためを思ってやったの」と言うのです。
バカらし~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!
にゃりぺよは母親に大事にされていない。
母親はにゃりぺよのことなんてどうでもいいけど、謝罪だけは絶対したくないんだ。
その日、にゃりぺよは母親の言葉に何も返さず家を出ました。
そしてこれからのことを考え、演劇も続けることにしました。
そのころ、にゃりぺよは遠く離れた地への大学進学を考えていました。
学費を出してくれる父は賛成してくれましたが、母親は猛反対していました。
寂しがる母親を置いていくのは…と、悩んでいたにゃりぺよ。
この日、希望通りに進学しようと心に決めたのでした。