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“窮鼠はチーズの夢を見る”を観ながら春田と牧を思い出した話

※ ネタバレあります

何も考えずに見始めた。
恭一の憎めない感じと、今ヶ瀬のつかみどころのない雰囲気を味わいながら。

途中で恭一が“流され侍”と揶揄される。
うまいこと言うなあ。確かに流されるのみだ。

なんで流されるのか。
静かな包容力がある魅力的な人だけど、誰かを本気で好きになったことがなさそう。

今ヶ瀬は恋愛の経験値の種類が恭一とは全く違う。心の奥底ではずっと恭一が好きで、恭一を自分に振り向かせることに成功する。
なのに、素直に恭一を受け入れられず試すような態度をとる。と言うかとらずにはいられない。

ここまでストーリーが進んだ時、ふいに連想した。
春田と牧を。

押しに弱い春田と流され侍恭一。
同性に好きになられたことに戸惑いながら、初めて一人の人間を好きになったことに気づき、その気持ちにそって最後に自分から行動する。

ある泣けたシーン。
今ヶ瀬が誕生日に、サプライズでワインを贈られる。
この瞬間の今ヶ瀬の表情が忘れられない。
思いがけず貰えたプレゼントだったけど、品物は何でも良かったのだと思う。

恭一が自分のことを考えてくれていた。そのことが一瞬言葉を失う程に嬉しかったのだ。

ここで春田と牧のデートの一場面が浮かんできた。

「牧と行ってみたいラーメン屋あったんだ」

春田の何気無い一言。
この瞬間の牧の心情と今ヶ瀬がオーバーラップした。
春田も恭一も相手を凄く喜ばせようとか思ってない。ごく自然に無意識に行動してるんだけである。でも、気持ちの温度差が常に気になってる牧と今ヶ瀬にはその無意識が、何よりも嬉しいのだ。

誰かを深く好きになり、好きになったが故に抗えない不安も抱え込んでしまう。
その不安ごと包み込むほどの深い想いを自覚する。

そんな普遍的な心の動きが鮮明に描かれている名作に、また出会うことができた。


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