まぶしかった人~バンビちゃん~
ちょうど5年前の1月、10年間の専業主婦を経て私は働き始めました。
ありったけの勇気で。
身体も心も贅肉で重い。。。
そんな私に、その勇気を振り絞らせてくれた人がバンビちゃんでした。
子供がまだ未就園児だったころ、夕方、近所のママ友と日が暮れるまでおしゃべりしながら、子供が遊ぶのを見ていました。
その頃の私の行くところと言えば近所の公民館か、公園かスーパー。
ママ友とのおしゃべりが気分転換になっていましたが、子供が汚しても大丈夫な体型カバーな服を着て、毎日同じような話題。
でも、無いより全然いい。そんな感じでした。
そんな夕方に、全然知らない若い女の人がニコニコしながらしゃべりかけてきたんです。
マックの制服を着て、マックのサンバイザーをつけて。
え?だれ?
近くに居たママ友が小声で近所に住むママだと教えてくれました。
私と同い年くらいの旦那さんと一回り若いという彼女は、ちっちゃくて目がクリクリ動いてスカートから出てる足も細く、すごく焼けてて小鹿のバンビのようでした。
バンビちゃんのお子さんは女の子。保育園に小さな頃から通っているからか、すごくしっかりしてておしゃまでした。
自分の自転車を乗り捨てて、他の子達を公園に引き連れて行ったようでした。
バンビちゃんは、自分の子供の自転車にまたがって制服だからと着替えてくることもなく、全く無頓着にニコニコ話しています。
私は彼女から吹いてくる自由な風がすごく衝撃的でした。
子供が危ないからと屈み気味で子供の後ろをトコトコついて行くこともなく、ママではなく、自分自身で居られる仕事を持ち、アルバイトの制服だから恥ずかしいとか全く思うこともない、彼女の朗らかさ。
それに比べ、私はアルバイトの制服に対する偏見があったのだと自分自身に気がつく恥ずかしさ。
夕陽が、自転車に座っているバンビちゃんの背中にあたって、ホントに後光が差すってこういう感じなんだぁ~と、めちゃめちゃ彼女がまぶしかったのを昨日のように思いだします。
そして、その気持ちの中に、高校時代、好きな先輩を見ると込み上げてくるような感じが。
私、この人に焦がれてるなぁ。
あまり人の事をうらやましいと思った事はなかったけど、この時ははっきりとバンビちゃんがうらやましい!私も自由な風の中に入りたい!と心の底から思いました。
今、働き始めて5年。彼女のおうちの前を通ると彼女はどうしてるのかな?と思います。
マックの大型店の店長だった旦那さんと別れ、旦那さんも離婚後家を売って今は全然違う人が住む元バンビちゃんのおうち。
私はあの時のバンビちゃんみたいにパンパンの自由な風にはなれてないけど。
仕事でミスって怒られたり、疲れて晩御飯上手く作れなかったり自由な風にいろんな雑味が入ってるけど。
でも、あの時のほがらかなバンビちゃんに一歩でも近づこうとした5年前の自分のお陰で、今ならバンビちゃんと仲良く話せる気がするんです。