デリーのお気に入りの場所
今日は朝から鬱だった。私はたまにこういう日がある。何をするにもイライラしてしまうし、何をしても落ち込んでしまう。朝ごはんも私が嫌いなメニューだったし、シャワールームに行ったら昨日からいる虫がまだ退治されていなかった。さらにホステルを出るときスリッパを履いてきてしまい、外に出た後4階にまた戻ったのだ。
極めつけはショッピングモールの店員の対応だった。
私はソーイングセット(裁縫道具)を探していた。あるお店の店員は「うちにはない、グランドフロアにある」と言う。グランドフロアの店員は「セカンドフロアにある」と言う。この繰り返しなのだ。インドでは知りもしないのにわからないと言わず適当なことを言う人がよくいるし(これもインド人の好意なのだが)、たらい回しは日常茶飯事だ。
朝から落ち込んでいた私は本当にやるせない気持ちになり、デリーのお気に入りの場所、ジャーマ・マスジドに向かうことにした。
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ジャーマ・マスジドはチャンドニー・チョークにある大きなモスクである。モスクとはイスラーム教徒の礼拝所のことだ。
オールドデリーやジャーマ・マスジドを好きな理由はたくさんある。まず、普段あまり見ることのないウルドゥー語を見ることが出来るから。私はヒンディー語も勉強して多少読めるようになったが、やはりウルドゥー文字を読むほうが落ち着く。あとは自分の興味分野、研究対象であるムスリムがたくさんいること、いかにもインドって感じがするから。挙げたらきりがないが、一番の理由は「なんか落ち着く」から。
ジャーマ・マスジドに入る際、外国人(に見える人)は入り口で止められる。「チケット、チケット!」とおじさんは言う。インドの大学の学生証を見せると、納得のいかない顔をしつつ中に入れてくれた。
外国人でも、基本的に入場料は無料である。カメラ(スマホを含む)を使用する際のみ300ルピー(日本円で450円、インド価格にしては高いと思う)。インド人は300ルピーを払わず中で写真を撮りまくっているので、このお金は払う必要ないと思う。私は勝手が分からない外国人からお金をとるインド人が大嫌いだ。皆さんも払っちゃダメ!
ちなみに入る際靴をおじさんに預けてしまうと、「靴を預かっていたから」という理由でまたお金をとられそうになる。持って入るのが無難だ。
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ジャーマ・マスジドの中にはあちこちにこんな看板がある。
ヒンディー語で「ジャーマ・マスジドでTIKTOKを撮るのは禁じられている」と書かれている。インド人はセルフィ―が大好きなので、TIKTOKを好きなのも容易に想像できる。しかし神聖なイスラーム教のモスクの中にこんな看板があるとは、ちょっと笑ってしまう。
また、礼拝の時間を知らせるためにあるモスク内の放送で「ジャーマ・マスジドの中でのTIKTOK作成は禁じられている」と流れていた。思ったより深刻な問題のようだ。
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入る前は何かとお金を巻き上げようとしてくる人もいるが、中に入ってしまうとゆったりとした空気が流れている。
お祈りに来る人もいるが、中では子供が遊んでいたり、ただ座って話している人もいる。日本でイスラーム教と言うと少し堅苦しいような気もするが、インドのムスリムにとって宗教もモスクに来るという行為も身近なものなんだな、と感じる。私はムスリムではないが、中に座っていろんなことを考えた。
モスクはオールドデリーの高い位置にあるので、オールドデリーを見渡すことが出来る。家と家がひしめき合っているし、外のクラクションは相変わらずうるさいが、ジャーマ・マスジドは誰でも受け入れてくれるような雰囲気がある。
デリーも悪くない、と思った。そしてまた何か落ち込んだ日には、ジャーマ・マスジドに来ようと思った。