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コワモテのサンタさん

クリスマスが一日すぎた日、私にもサンタがきた。


そのサンタは夫ではなく友人でもない。知らない名前、知らない顔。さらにサンタの柔らかい白髭とは違い、どちらかといえばミスターサタンの髭タイプ。なんならちょっとコワモテだ。コワモテはタイプではないけれど、プロフィールを覗いてみると大変魅力的な肩書きが。

もしここがマッチングアプリであれば私はそのプロフィールを見ただけで間違いなく♡を押してアピールする。しかし自分からメッセージを送ってハシタナイ女と思われてしまっては悪手なので、♡だけ送って「別に待ってませんけど」スタイルでメッセージがくる日をいまかいまかと待つんだろう。

ちなみに私にとっての"魅力的な肩書き"とはIT企業の社長でもなければインフルエンサーやイケメン俳優なんかでもない。私は街中で芸能人に会ってもそんなに感動しないけれど、好きな作家に会えるとなると大変高揚する人間だ。サインもほしいし一緒に写真も撮ってほしい。ミーハーはミーハーでもちょっとコアなミーハー野郎である。

そこに並ぶ肩書きは「アートディレクター」で「文章を書く人」でさらに「写真家」だった。俄然興味しかない。しかも私がその人自身のことを知らなかっただけで、その人が書いた本は本屋で見かけたことがあったしどうやら著名な人らしい。


そんなサンタから届いたもの。それは「チップが届きました」というnoteからのお知らせだった。その金額10,000円。

イチマンエン!!ウッヒョー!

コメントには「セブンイレブンのカフェラテ飲んでください」とある。同情するなら金をくれと言ったつもりはなかったが、どうやら先日書いた「破綻警告」を読んでくれたその人がnoteのチップという機能で10,000円を送ってくれたのだ。チップというボタンがあるなぁとは思ってはいたが、まさか私に送る人がいるとは思ってもいなかった。棚からぼたもち、思わず小躍り。

とはいえ「お金に頓着はない」と散々言ってきたくせに目の前の餅に心踊る自分自身になんだかがっかりもした。心躍ったりがっかりしたり感情が忙しい。これが1,000円であれば嬉しいは嬉しいが、小躍りまではしないだろう。認めたくないけれどこれが私という人間のリアルなんだ。

しかし自分の書いた文章を「文章を書く人」に読んでもらえたことが嬉しかった。同情だろうが下心だろうが10,000円という金額を送るに値する、と思ってもらえたかどうかも知らないけれど、なんだか褒めてもらえた気持ちになる。


早速その人のnoteを見にいく。

くっそぅ、ものすごく面白い。髭はミスターサタンでも強さはフリーザのパターンか。どうやら魅力は肩書きだけじゃなかったようだ。思わず月額500円のマガジンを買ってしまう。マガジンはいくつも種類があるようでそれぞれ500円だった。他のも読みたい。まぁ今ある分を読みきったら次の月に別のマガジンに切り替えればいいか。それを何回か繰り返しして気に入ったものだけを登録し直せばいい。10,000円ももらったし、月額500円なんて余裕、余裕。

読んでいたら俄然本もほしくなる。ここでマガジンを読むのもいいけれど本は買っとくべきではないか?月額で払うよりお得だし、10,000円ももらってるんだから。すかさず二冊注文。

と、ここであることに気がつく。これってもしかしてそのための10,000円?鴨がネギ背負って来たと思いきやいつのまにかネギを背負っているのは私ではないか。

そうなってくると疑心暗鬼にもなってくる。宣伝のための投げ銭であれば私の文章がどうであろうが関係ない。そう思いはじめたら「このラッキーハプニングを誰に自慢してやろう」などと考えながらグングン伸びていた鼻もあっという間に萎んでいく。そもそも私の作る写真作品も文章もなにか言ってる風で結局なにも言っていないし、私の作るものはただの無駄の積み重ねで私自身も器用貧乏なだけなのだ。お前に価値なんてない。ばーかばーか。

待て待て。悲観的になるのはまだ早い。現実的に考えて宣伝のためにしては金額が大きすぎるではないか。そんな行為を不特定多数にできるのは前澤社長くらいだし、私がたまたま勝手に沼にハマり、マガジンやら本やら買いまくってしまっているが、その人の送ってくれた10,000円という金額の大きさは私の書いたものが面白いかどうかは別にして、とりあえず善意ではあろう。

もし私が見知らぬ人間(それが著名か無名かに関わらず)に対し、いわゆる「投げ銭」をするとしたら上限はせいぜい1,000円だ。それは私のしみったれたケチ臭さあっての金額ではなく(それもある)、「お金とはなにかに値する働きや価値に対して支払うものだ」という私の概念あっての金額であり、仮に私がお金持ちになったって、なにも叶えてくれやしない神さまには100円だって投げたくない。

私にとっての10,000円もその人にとっては1,000円だったのかもしれない。それでも私にとっては10,000円。セブンイレブンのカフェラテだって52杯飲める。

人の善意をよくない方向に考えてしまうのは私の悪い癖だ。こんなときはシンプル脳に変換。

読んでもらえて嬉しい。
お金もらえて嬉しい。

ありがとうミスターサタン!
ハッピークリスマス!

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