私は独身時代、自分のことを「子ども好き」と言っていた。それは男性からモテるためでもいい女を演じていたわけでもなく(もしかしたらそんな邪な考えも少しはあったかもしれないけど)、本当に子どもを可愛いと思っていたし、可愛いと思うということはつまり「子ども好き」なんだと思っていた。 しかし私の細胞の一部だったものが私の腹の中で私とは別の形となり、あれよあれよと私から切り離されて出てくる。そうして私は母親になった。母親となったその日から嫌でも子どもと毎日を過ごす。するとどうだ、可愛い
た〜けや〜さおだけ〜 何度もこの歌を耳にしたことはあったものの、物干し竿は間に合っているし、こんな鉄の棒が壊れることもそうそうないもので。レトロな声質に故郷の田舎を思い描きつつ、ただ心地のよいバックミュージックとして聞き流すだけだった。まぁ私はそこそこの都会生まれなのでそれはハリボテの故郷だ。 我が家はここ最近引っ越しをした。自宅はよくある賃貸のマンションから和室だらけの古い二階建ての一軒家になった。古い一軒家にどうしても住みたいと私がずっと熱望していたからである。欲を言
普段から写真を撮るときは構図や光の向きに対してそこまで難しく考える方ではない。写真を撮っている人間であれば誰でも綺麗な光のもとで撮るだろうし、有料記事にしといて申し訳ないが、私がなにか特別な技術をもっているかと言われるとなにもない。ほぼ感覚で撮っている。デジタルなので撮ったものをその場で確認しながら微調整を繰り返す。シャッター数はデジタルにしても多い方なのではないか、この日は700回以上は押していると思う。数打ちゃ当たるスタイルである。ピントはオート。それ以外はマニュアルで撮
どうしてこんなにも眠たいのだろう。 生理前か、もしくは早めにきた更年期なのか、とにかく一日中眠い。もしかしたら熊やアザラシと同じように私の身体は冬を目の前に冬眠をしたがっているのかもしれない。相変わらず入眠には苦労しているが、寝ていないかと言われれば割としっかりめに寝ているというのに。 日々「働きたくない」と漏らしながらソファでノビている情けない私を横目に「働きたくないと思うのって日本人の女性特有なんだって」と夫は言う。出た出た、夫の日本人女性差別発言だ。私のやる気のなさを
忘れないように 2024.410(記) 2024.3. 悪い予感は当たるもので。その日は仕事明けだったのでいつものように朝9時頃眠りについた。電話の音がしたので携帯を見ると15時30分。子どもたちが学校から帰り一度目を覚ましたがもう少しだけ…と二度寝をした直後だった。着信は母からのテレビ電話だったのでいつもであれば無視してもう一眠りするところだが、その日はなんとなく胸騒ぎがして通話ボタンを押す。電話から聞こえる母の声は少し興奮していて、私ではない誰かに訴えている
「ぼく、調理クラブに入る。」 長男のその言葉に私は喉の奥の方で小さく「えっ」と発した。 小学四年生の長男は運動が得意だ。飛び抜けて足が早いわけでもないし縄跳びの達人というほどでもないが、クラスの中で言えば「できる方」に入るのだと思う。 そんな長男は5歳の時からダンスを習っている。生まれ持ったリズム感と真面目な性格で家でも練習は欠かさないので、習ったことはスルスルと吸収していく。もともとダンスをはじめたのも本人が習ってみたいと希望したからであり、私も夫もダンスのダの字も踊れな
神経質でコミュ障の私の周りには意外にも大らかでコミュニケーション能力の高い人間が多い。類は友を呼ぶというが、私の場合どちらかといえば異類が友となっている。私に似て神経質なタイプは我が長男くらいだろうか(しかし長男は夫に似てコミュニケーション能力はとても高い)。 私がこんなにもこの世の終わりというほど職場に馴染めないことに苦しんでいるというのに、私の夫は「まぁなんとかなるでしょ」という他人事スタンスを貫いている。別に心配をしてほしくてこうしている訳ではないが、愛する妻がこんな
私はできるだけ素直でいたい、と思う。 素直でいたいと思っていても、いざなにかを文章にしようとすると、知らず知らず自分の気持ちではない方向に微妙にズレていくことがある。 カッターでまっすぐ線を切っているつもりがほんの少しでも斜めになっていると結果スタートラインとは大きく外れた位置にゴールしてしまうのと同じように、その小さなズレは私を大きく違う方向へ動かしてしまう。そこには私のちっぽけな見栄があるのかもしれない。結果わたしはとんでもなくつまらない人間になってしまうのだ。写真作品
Amazonから届いた置き配の荷物。注文していた本が届いたんだと仕事から帰りウキウキしつつ開封するとカメムシの虫よけスプレーでものすごくガッカリした。そういえば夫がカメムシに怯え慌てて注文したと言っていたな… 最近我が家にはカメムシがよく迷い込む。 カメムシというとあの緑色のコロっとしたフォルムのものを想像すると思うのだが、我が家に何度も現われるのはキマダラカメムシという2センチ程ある大きさのまるで草間彌生がデザインしたかのような黄色と黒の水玉模様のカメムシだ。 私は虫が
豊かさの基準って人それぞれなんだなぁと最近しみじみと感じている。 この世には命をかけて山に登る人もいれば、「いいね!」をたくさん得るために孤軍奮闘する人もいる。他人に感謝されることで満たされる人もいれば、なにをしても満たされないという人もいるだろう。 夫は仕事が生き甲斐の人間だ。仕事においての自分の知識を広げて、どんどんスキルアップしたいらしい。お金持ちになりたいという願望もあるし、昇格して認められたいという欲求もある。 対して私は仕事にやり甲斐いなんてこれっぽっちも求
「私は最近英語を勉強しています。」 I study English recently. 海外に住んでみたいという漠然とした夢はずっとみているけれど、やっぱり私は畳の部屋が好きだしお醤油味が好きだし、日本のジメっとしたアートが好きだし。そもそもカナダってどこの国?って言っちゃうくらい常識がないので、移住はどうかなぁ…でも自然がいっぱいであまり便利すぎない場所だったら死ぬまでに一度は住んでもいいなぁなんて。別に誰に頼まれてもいないけど。 移住はともかく、日本以外で展示はやり
突然だが今日はここで私の「嫌われエピソード」を書いていこうと思う。 なぜそんなことをするのかというと、まず私と私の家族の近況を報告するところから話さなくてはならない。 今年の十月に私たち家族は群馬県からある街に引っ越しをしてきた。そもそも群馬県に住む前には愛知県に十年以上住んでおり、夫の転職の関係で移り住み、そこから八ヶ月群馬県で過ごしたが、夫がさらに転職、東京で働くということで一年足らずしてこの街へ引っ越しをしてきたというわけだ。 群馬県は私にとても合っていた。山に囲