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やさしい世界

Amazonから届いた置き配の荷物。注文していた本が届いたんだと仕事から帰りウキウキしつつ開封するとカメムシの虫よけスプレーでものすごくガッカリした。そういえば夫がカメムシに怯え慌てて注文したと言っていたな…

最近我が家にはカメムシがよく迷い込む。
カメムシというとあの緑色のコロっとしたフォルムのものを想像すると思うのだが、我が家に何度も現われるのはキマダラカメムシという2センチ程ある大きさのまるで草間彌生がデザインしたかのような黄色と黒の水玉模様のカメムシだ。

私は虫が苦手ではないし、カメムシは無害だと知っているので見つけたらポイっと外に逃してやるのだが、我が家を気に入っているのか何度も何度も入ってきては外へ追い出されてを繰り返していた。
あるとき夫が洗濯物を畳んでいると、例の如くポロッと現れた草間彌生デザイン。夫は「うわあああぁぁああ!!!」とお化けでも出たんかと思うほどの悲鳴をあげ、なぜか半ギレ状態でチャットGTPで「この虫何」と写真検索し、流れるような速さでAmazonでスプレーを注文していたのだ。なにもしないのに、虫除けスプレーで忌み嫌われる虫が不憫で仕方がない。私からすると人間の方がよっぽどスプレーしたいくらいだ。

虫嫌いな夫とは違い人間嫌いな私だが、びっくりするくらい優しくない人もいれど、反対にびっくりするくらい優しい人もいるんだよなぁと思う。むしろ優しい人の方がきっと多い。私はとても優しい人に恵まれているんだとも思う。

私自身は優しいか優しくないかで言えば6対4くらいの割合でまぁまぁ優しい寄りだと思う。どちらかと言えば優しいに分類されるが、じゃあそんなに優しいかと言えばそこまでだよなってくらい。私の場合、優しいというか気が弱いだけな気もする。

noteをはじめてから私の数少ない友人たちがメッセージをくれた。「読んだよー面白かった」などという何気ない言葉の裏にはきっと心配してくれているんだろうなぁと心が温まった。
また顔見知りの知人だったり、会ったことのない人も「わかります」「共感しました」「無理しないで」とメッセージをくれた。
はたして私はそんなことをしたことがあっただろうか。知らない人がもがき苦しんでいようがそんなふうに温かいメッセージを送ったことなど一度もないし、相談こそされなければ友人が苦しんでいるのを知ることもない。なんだ、やっぱり私って全然優しくなんかないのか。

以前から仲良くしてもらっている写真家のコハラタケルさんと、展示のDMのデザインをしてくれたデザイナーのAsakoさんと製本会をしていた時に、自分の写真で誰かに勇気を与えたいかどうかの話となり、私はできるだけ写真界からライバルを減らしたいと思っているという理由で、「勇気なんて与えたくない、木っ端微塵にしてやりたい」と言ったら大笑いされたことがある。

そんなコハラさんも本当に優しくさらにとても謙虚な人だ。彼はいわゆる売れてる作家の一人なのだが、全くの無名の私にもとんでもなく腰が低く時々展示巡りに付き合ってくれる。そんなコハラさんの奥さんであるジュリさんはそれはそれは可愛らしく品があるのに、一人ユニバーサルを楽しめてしまうギャップまでも持ち合わせている素敵な女性だ(私もジュリさんのような女性に生まれたかったといつも思う)。きっとコハラさんのような人が世界をやさしく導いているんだろう。

どうしてこうも人に優しくできる人がいるのだろう。

自分本位な私は誰かを傷つけなければいいとは思うが、誰かを救いたいなんて思えないし、何者でもない私が誰かを救えるなんてもっと思っていない。私はただ無害なだけのキマダラカメムシなのだ。

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