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0019 NewJeansの一貫したファッションスタイルとクリエイティブな決定権が個人に委ねられることの重要性

アジア圏においてファッションのトレンドを牽引していると言っても過言ではないK-POPカルチャー。ストリート(≒SNS)の流行り廃りと相互に影響を及ぼし合いながら変化していくトレンドスタイルは、まるで各勢力のマーケティングとクリエイティビティのせめぎあいを見ているようだ。

2024年現在の最新のファッショントレンドは、ここ1-2年で周回してきたY2K(2000年代)スタイルをベースにより細かく分類した◯◯コア(バレエコアやゴープコア等)という括りが主流となっている。20年周期でファッショントレンドが回帰するという法則は健在で、それに従うと今年は2004年の流行がリバイバルしているはずであるが、BAPEをはじめとするヒップホップスタイルのストリートブランドの人気が再熱していることはその現れと言えるだろう。

そしてBAPEの再熱やY2Kブームに一役買っているのが、今回取り上げるNewJeansである。2022年7月のデビュー以来、他のK-POPアイドルとは一線を画したスタイルを提示し続けている彼女たちの大きな特徴は、オリジナルで衣装を制作するのではなく既成ブランドのアイテムやブランドとのコラボで制作したアイテムを”スタイリング”していることにある。

ストリートラグジュアリーの勃興以降、K-POPアイドルが衣装にブランドアイテムやそれらをカスタムした衣装を着用することは一般的になった。しかしその多くはMVやパフォーマンス、アルバムコンセプトごとの衣装といった感じで、アーティスト活動全体を通してのファッションスタイルの提示というものはあまり見られなかった。

その一方でNewJeansは主に裏原系ストリートファッションブランドと最新鋭の若手デザイナーズブランドを組み合わせてY2Kらしくスタイリングするという一貫性が活動全体を通して見られる。スタイルディレクションはChoi Yumiが一貫して手掛けており、この「一人にクリエイティブが一任されている」という点がNewJeansというアーティストのファッションスタイル(あるいは人物像)の確立に繋がっていると考えられる。

藤原ヒロシとのコラボアイテムを着用するNewJeans

NewJeansと裏原ファッションの関連性は太いパンツにダボダボのTシャツ、NIKEやBAPEのバッシュといういかにも2000年代なシルエットをグループの定番スタイリングとしていることや、藤原ヒロシとコラボレーションしてグッズを制作する等、裏原直撃世代であるプロデューサーのミン・ヒジンのバックグラウンドが垣間見える。これもまた個人の感性に基づいたディレクションによる一貫性の一面と言えるだろう。

そしてデザイナーズファッション好きとして注目したい点が若手デザイナーズブランドの多用である。特に使用頻度が多いブランドのうち着目したいのがHYEIN SEO、Paolina Russo、Kiko Kostadinovである。HYEIN SEOはテックモード寄りなスタイリングをする際に多用され、Paolina Russoは今年よく見かけたオリジナルのカラフルなジャージセットアップ、Kiko Kostadinovはスタイリストのお気に入りブランドであるため事あるごとにスタイリングに組み込まれている。

この三者の共通点は特注で衣装を制作しているところであり、どれも設立10年未満のそれぞれアントワープやCMSを首席で卒業している有望ブランドだ。小規模なデザイナーズブランドがファッション好きだけでなくより多くの大衆の目に触れる機会としてもWin-Winな関係性が築かれているのではないだろうか。

Paolina Russoによる特注衣装とHYEIN SEOのコラボグラフィックのスローガンを掲げるNewJeans。Kiko Kostadinovによる特注衣装の写真は本記事ヘッダーに掲載。

NewJeansのスタイリングはその他にも韓国内の若手やお手頃なブランド、ERLといったストリートウェア、海外のメンズウェア界隈での人気が著しいKAPITALなどを多用しており、全体的にパンツルックが多いため男女ともに真似しやすいこともトレンドを牽引するきっかけの一つとい言えるだろう。

このようにして一貫したセンスによるファッションスタイルの確立は、ファッションアイコンや上流のトレンドを生み出す上で必要不可欠な要素であり、それに方程式を見出して誰にでも応用・運用可能にすることは至難の業であろう。だからこそクリエイティブな決定権がある程度個人に委ねられることの重要性を今あらためて提起したいと思う。

余談だが、NewJeansは2022年のデビューソングのMVよりティンバーランドのブーツを使用しており、流行りが過ぎてダサさの象徴となっていたあのブーツが今年再び着用されだしていることも注目に値する事象だろう。

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Yuri Ridwan
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